【解剖】総排泄腔(クロアカ)

最終の空間

総排泄腔(そうはいせつくう)とは、多くの魚類、両生類や爬虫類、鳥類、一部の哺乳類に見られる内臓の一つの空間です。糞を排泄する消化管の終末開口部(直腸)、左右の腎臓で作った尿を排泄する尿管の開口部、および左右の生殖腺(精巣や卵巣)の導管である精管または卵管の開口部がそれぞれ別々に体外へ開口するのではなく、共通の総排出腔と呼ばれる空間につながっています。総排出腔をもつ動物では、糞や尿も卵や精子も、同じ穴から体外に排出されます。爬虫類では膀胱のあるものとないものがおり、ある種類だと膀胱も総排泄腔に開口しています。総排泄腔は英語でクロアカ (Cloaca) と言います。なお、鳥類では直腸からの糞洞、尿管や精管・卵管からの尿生殖洞、これらが接続する肛門洞と言う名称が使用されています。

図:トカゲの総排泄腔

総排泄孔

空間を指すのが総排泄腔であり、外観から見てお尻の穴に見える所が総排泄孔 (そうはいせつこう) と呼びます。

逆蠕動

鳥類や爬虫類では糞と尿は肛門道で混ざりあって、逆蠕動 により糞道を介して直腸へ移動して、水分や電解質の再吸収が起こってから再び排泄されます 〔Reece 2006〕。この逆蠕動は、爬虫類においても膀胱を欠くヘビで強く見られ、尿酸プラグによる便秘を引きおこします。

クロアカのある哺乳類

カモノハシ目は総排泄腔を持つが、他にも有袋類、モグラの一部の種類、ビーバーにもあるが、その構造は、カモノハシとはやや異なります。カモノハシは鳥類や爬虫類などと同様ですが、有袋類やモグラは、膀胱と子宮は総排出腔に開口していますが、直腸はこれとは分離しており、総排出口とは別にあります。

参考文献

  • Reece WO.Digestion and Absorption.Functional Anatomy and Physiology of Domestic Animals. 鈴木勝士,徳力幹彦.監訳.消化と吸収.哺乳類と鳥類の生理学:p309-364.学窓社.東京.2006

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。