オチンチンのこと
爬虫類のオスの生殖器は左右の精巣と精管、ペニス(陰茎)からなります。種類によってペニスの形状が異なります。爬虫類のペニスは哺乳類のように尿道が通っていません。尿は総排泄腔から排泄し、糞と一緒に出てきます。交尾の際に精子はペニスの外壁の精溝と呼ばれる溝を伝って、メスの総排泄腔に導かれます 〔疋田 2012〕。つまり、ペニスには哺乳類のような尿道がペニスの中を通っていないことが特徴です。
カメ・ワニ
カメとワニは哺乳類と同じ1本のペニス (陰茎) を持ち、総排泄腔の肛門道腹壁後端に一つの突起があり、これが陰茎の一部である。交尾の際には左右にある海綿体が膨張して総排泄腔の腹壁から押し出されます。ペニスには精子を導く精溝があります。平常時のペニスは、総排泄腔の頭腹側 (底面) に収納されています。
陸ガメのペニスは肉色ですが、水ガメは黒色をしています。
発情するとペニスの海綿体が充血することで勃起し、メスの背中に乗って総排泄腔にペニスを挿入します。
トカゲ・ヘビ
トカゲやヘビはペニスではなく、ヘミペニス (Hemipenis:半陰茎)と呼ばれる特有の交接器を持っています。ヘミペニスは袋状をしており、左右に1本ずつ1対存在し、通常は総排泄腔の後方左右のいわゆる尾の付け根あたりに、裏返った状態で収納され、交尾の際に盲嚢が裏返って前方に突出して出てきます。
平常時にヘミペニスが収納さている空間 (筋肉性の鞘) をクロアカサック (Cloacal sac) と呼ばれています。そのため、オスは尾の付け根が2つ膨らんでいるのです。イグアナやフトアゴヒゲトカゲよりも、ヒョウモントカゲモドキの方が明確に分かります。
トカゲ・ヘビの雌雄が尾の付け根の太さで鑑別するのはこのためです。盲嚢状のヘミペニスは海綿体の充血により外に反転して押し出され、メスに挿入します。ヘミペニスが2本ある理由は、メスは精子を体内に貯蔵することができ、その期間は5年かそれ以上に及びます 〔Booth et al. 2011〕。この現象は隠蔽的雌性選択として知られ、メスには卵がいつ受精するかを決定する能力があり、1頭のメスは複数のオスと交配が可能で、いつ受精するかも選ぶことができます。さらにメスは複数のオスと交接していた場合、1回の産卵で多数のオスからの遺伝的要素を受け継いだ子供たちを産むことができます。それに対応して、オスが1本ではなく2本のヘミペニスを持ち、ヘミペニスのそれぞれは各1つずつの精巣とつながっており、1回の交尾で片方だけが使用され、もう1本は予備として機能し、1つの精巣が精子を使い尽くしたとしても交尾を継続できるよう、子孫繁栄のための戦略的な理由と言われています。
ヘミペニスは種類によって形状が異なり、特にヘビに多数の棘状突起が見られ、種類によって様々な形状をしています。ヘミペニスの棘はオスにとってより長い、つまり受精率が高い交配の助けとなっていると言う説があります。ヘビのヘミペニスの棘を外科的に除去しても、交配は可能でしたが、持続時間と交尾の深さは対照群と比較して遙かに低かったそうです。棘はオスがメスと交尾をする能力において重要な役割を果たしていると言われています 〔Friesen et al. 2014〕。
専門家は専用のセックスプローブと呼ばれる先端が丸くなった滑らかな棒を使い、それが総排出腔から後方の反転したクロアカサックに差し込めればオス、差し込めなければ半陰茎がないのでメスとして雌雄を見分けます。
- 爬虫類のペニスは尿道が通っていない
- 排尿は総排泄腔から排出され、精子はペニスの精溝を伝ってメスの総排泄腔に導かれる
- カメやワニのペニスは1つ
- トカゲやヘビは1対のヘミペニス
- ヘビのヘミペニスは棘や鈎を持つ
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参考文献
- Friesen CR,Uhrig EJ,Squire MK,Mason RT,Brennan PL.Sexual conflict over mating in red-sided garter snakes (Thamnophis sirtalis) as indicated by experimental manipulation of genitalia.Proc Biol Sci281(1774):20132694.2013
- Booth W,Schuett G.Molecular genetic evidence for alternative reproductive strategies in North American pitvipers (Serpentes: Viperidae):long-term sperm storage and facultative parthenogenesis.Biol J Linn Soc104(4):934-942.2011
- 疋田務.爬虫類の進化.東京大学出版会.東京:p13.2002