【解剖】鳥の肝臓(胆嚢がある鳥とない鳥)

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肝葉

肝臓は心臓の直下に位置し、身体の大きさに比べて哺乳類よりも大きいです。基本的に右葉と左葉の2葉から構成され、右葉はより大きいことが多い。しかし、家禽と七面鳥では、左葉は背側部分と腹側部分に細分されています〔Denbow 2000,Lucas et al.1956〕。

胆嚢

肝臓でコレステロールから作られるの胆汁酸は胆管を通して分泌され、脂肪の消化吸収に重要な役割を果たします〔Argenzio 2004〕。胆管へと分泌された胆汁酸は、胆嚢のある鳥種では胆嚢に蓄えられて濃縮されてから分泌されます。ハト類、ダチョウ、オウム目のセキセイ インコ、ボタンインコ、コザクラインコ、オ カメインコは胆囊を欠くが、ブンチョウ、 ジュウシマツ、カナリアには胆囊が存在します。 ウズラには2つの主要な肝外胆管があり、1本は胆嚢のある右胆管、もう1本は胆嚢を欠く左管です。しかし、鳥類における解剖学的な相違の詳細は解明されていません〔Higashiyama et al.2021〕。

胆汁

胆管は十二指腸に連絡し〔Denbow 2015〕、消化内容物と胆汁は抗蠕動逆流を介して胃領域と十二指腸の間を往復し、消化の酵素的および機械的作用を強化します。腸に分泌された胆汁酸(一次胆汁酸)は細菌による分解を受け、小腸より再吸収されます〔Hurwitz et al.1973,Lindsay et al.1967〕。再吸収された抱合型一次胆汁酸は肝臓に吸収され(腸肝循環)、一部は二次胆汁酸となり排泄されます。幼若鳥では胆汁の分泌が制限されており、特に生後 1 週間は脂肪の消化と吸収が低下し〔Krogdahl 1985〕、腸肝循環を効率的にできず、これにより胆汁酸のプールが減少し、これも消化不良の一因となる可能性があります〔Serafin et al,1970〕。鳥はビリルビン還元酵素が乏しく〔Duke 1986〕、胆汁色素 して主にビリベルジンを排泄します。ビリベルジ ンは明緑色であるため、採食量が少なかった り、腸炎により通過速度が低下したり、肝障害が起こった場合、胆汁の影響による緑色便 が認められます。

脂肪代謝

鳥の肝臓は脂肪代謝が特異的で、哺乳動物での脂質合成の50%以上は脂肪組織で行われ、脂肪組織でも行われるのに対し、鶏では脂質合成の90%以上が肝臓で行なわれます〔Leveille et al.1975,Griffith et al.1969〕。さらに産卵時は脂質代謝が著しく亢進している状態となり〔Hermier 1997〕、脂肪肝などの脂質代謝異常が肝臓に較的起りやすいです〔Zaefarian et al.2019〕。

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もっと鳥を勉強したい時に読む本

カラーアトラス.エキゾチックアニマル鳥類編.緑書房

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参考文献

  • Argenzio RA.Secretions of stomach and accessory glands.In Dukes Physiology of Domestic Animals.12th ed.Reece WO ed.Cornell University Press.Ithaca.NY.USA,London.UK:p405‐418.2004
  • Denbow DM. Gastrointestinal anatomy and physiology. In Sturkie’s Avian Physiology.6th ed.Scanes CG ed.Academic Press.New York.NY.USA:p337–366.2000
  • Duke GE.Alimentary canal:Secretion and digestion,special digestive functions,and absorption.In Avian Physiology.Sturkie PD ed.Springer.New York. NY.USA:p289–302.1986
  • Griffith M,Olinde AJ,Schexnailder R,Davenport RF,McKnight WF.Effect of choline,methionine,and vitamin B12 on liver fat, egg production, and egg weight in hens.Poultry Sci48:2160-2172.1969
  • Hermier D.Lipoprotein metabolism and fattening in poultry.J Nutr127:805s‐808s.1997
  • Higashiyama h,Kanai Y.Comparative anatomy of the hepatobiliary systems in quail and pigeon,with a perspective for the gallbladder-loss.ournal of Veterinary Medical Science83(5):855-862.2021
  • Hurwitz S,Bar A,Katz M,Sklan D,Budowski P Absorption and secretion of fatty acids and bile acids in the intestine of the laying fowl.J Nutr103:543–547.1973
  • Krogdahl A.Digestion and absorption of lipid in poultry.J Nutr115:675–685.1985
  • Lindsay OB,March BE.Intestinal absorption of bile salts in the cockerel.Poult Sci46:164–168.1967
  • Leveille GA et al.Lipid Biosynthesis in the Chick. A Consideration of Site of Synthesis,Influence of Diet and Possible Regulatory Mechanisms Poultry Sci 54:1075-1093.1975
  • Lucas AM,Denington EM.Morphology of the chicken liver.PoultSci35:793‐806.1956
  • Serafin JA,Nesheim MC.Influence of dietary heat-labile factors in soybean meal upon bile acid pools and turnover in the chick.J Nutr100:786–796.1970
  • Zaefarian F et al.Avian Liver:The Forgotten Organ.Animals (Basel)9(2):63.2019

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。