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性染色体
鳥類は大部分の哺乳類と同様に性染色体による性決定を行いますが、雄ヘテロ型の性染色体構成をとる哺乳類とは異なり、雌へテロ型の性染色体構成で、鳥類の雄はZZの性染色体を、雌はZWの性染色体を持ちます。メスが異性配偶者であるために子の性別を決定します 。受精の際にオスとメスの両方からの Z染色体が結合するとオス(ZZ)、W染色体を持つ卵子が結合するとメス(ZW)になります〔Osinowo 2006〕。
産卵
メスの生殖器は卵巣と卵管から構成され、繁殖形式は硬い殻を持つ卵を産む卵性です。その卵は、色、形、大きさが大きく異なり、鳥の身体が大きいほど、卵も大きくなります。繁殖力も鳥種によって異なり、鶏などの家禽は年間200~350個を産む能力がありますが、タカやフクロウなどの猛禽類は年間数個しか産卵しません〔Rodler et al.2014〕。
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表:鳥の産卵数
鳥種 | 産卵数(個) |
サイチョウ | 1 |
ハト | 2‐4 |
カモメ | 4 |
ハイイロガン | 5‐6 |
マガモ | 9‐11 |
ダチョウ | 12‐15 |
ヤマウズラ | 12‐20 |
家禽類 | 350以上 |
卵巣
鳥は右側の卵巣と卵管が退化し、左側のみが発達しています。なお、猛禽類やキーウィは左右一対の卵巣・卵管が存在します〔National Geographic 2017〕。 卵巣は精巣と同様に左側の腎臓前葉の腹側に位置し、卵管は尿管の走行に沿って、総排泄腔の尿生殖道に開口します。卵巣には複数の卵胞が存在し、小型卵胞が発育し、卵黄嚢に血液と栄養物質が豊富に供給された成熟卵胞が形成されます。成熟卵胞は球状で黄褐色をしており、卵胞茎によって卵巣に緩く取り付けられています。卵胞茎を通って卵胞へ血管および神経が入り込んでいます〔本間1970〕。卵黄嚢が破裂して排卵し、一度に排卵される卵胞は基本的に1個数だけです。
卵
鳥の卵の内部構造は、中心に卵黄(胚盤)が位置し、紐状のカラザがハンモックのように卵黄を保定しています〔Brillard 1993〕。これを卵白、卵殻膜、卵殻の順で取り囲んでいます。卵白は卵黄を直接保持し、ほとんどが水分から成りますが、タンパク質も含んでいます。卵殻膜は網目格子状の不織布状繊維を形成したタンパク質からなり、卵白を囲んでいます。
卵殻膜は内外二層に分かれていおり、卵の鈍端では分離して気室を形成します。卵殼は炭酸カルシウムからなり、胚は卵殻の多数の細かい気孔を通じて、呼吸と水分調整を行います。産卵直後の卵は卵の表面が輸卵管より分泌された粘液で覆われ、これが数分で乾燥して卵殻クチクラ(薄膜)となり、新鮮な卵の殻の表面はザラザラしています〔本間1970〕。
オウムの卵は白色のものが多く、ニワトリでは白色または淡赤色です。その他の多くの鳥の卵は、緑色や褐色などの色素沈着も、その模様も鳥種によって著しく異なります。卵殻の色素はポルフィリンで、卵管子宮部の粘膜を通して卵殻 とともに沈着 されます〔Romanoff et al.1949〕。
卵管
卵管は漏斗部(Infundibulum)、膨大部(Magnum)、峡部(Isthmus)、子宮部(Uterus)/卵殻腺部(Shell gland)、膣部(Vagina)に区分けされており、それぞれの区分で卵形成において重要な役割りをしています。漏斗部は卵巣を覆った漏斗状をしており、排卵した成熟卵胞を受けとり、カラザも形成します〔Brillard 1993〕。次の膨大部は太い筒状で、 精子との受精部位にもなり、卵白を形成します。狭部では卵管腺から内および外卵殻膜が作られ、子宮部は卵殻腺から卵殻を、最後の膣部はクチクラ層を形成します〔Kingsley 2021,今井1978〕。鶏での卵管内での卵が完全に形成されるまでの所要時間は、約26 時間〔Kingsley 2021〕、24~27時間〔今井1980〕と報告されています。
精子貯蔵細管
卵管子宮部と膣部の接合部付近には、精子貯蔵細管(Sperm storage tubules:SST)と呼ばれる精子を貯蔵することができ箇所があります〔Bradym et al.2022〕(家禽は2~3日〔Brillard 1993〕、七面鳥は10~15日〔Brillard 1993〕、ウズラは1~2日〔Adeyina et al.2015〕)。有精卵ができるには、精子はこれらの管から卵管に絞り出され、漏斗部に移動して卵子と受精します。したがって、オスを群れやケージから引き離したり、人工授精を中止した後でも、メスは最長10~21日後まで有精卵を産むことができます〔Brillard et al.1990〕。つまり、時間差で精子貯蔵細管から放出された精子が卵管を上向し、卵管膨大部で精子と卵子が受精します。これまでは、精子貯蔵細管の収縮要因が見つからず、精子の放出は卵子の機械的圧力に反応して起こると考えられていました〔Tingari et al.1973,van Krey et al.1967〕。しかし、近年のいくつかの研究で、プロゲステロンによる精子貯蔵細管からの精子放出が排卵周期中に調節されることが報告されました〔Matsuzaki et al.2014,Ito et al.2011〕。
内分泌
卵胞に成熟する発情期に伴って、エストロゲン値の上昇に伴う、骨髄骨の形成や高カルシウム血症などが見られます。その後、黄体化ホルモンによって排卵が誘発され、プロゲステロンの制御下で卵殻の石灰化が起こります。卵殻生産のためのカルシウムの供給源には、餌からの腸での吸収、腎臓によるカルシウムの制御などが含まれます。産卵は、カルシウムの存在下で PGF2αとアルギニンバソトシンが強力な卵管収縮を刺激します〔Suyatma et al.2010,Pollock et al.2002,Day et al.1977,Sturkie et al.1966,Rzasa et al.1970〕。
孵化
メスの鳥は毎日または隔日でクラッチ数の卵を産むと、本能的に卵形成を中止し、卵の上に座って孵卵を始めます(抱卵)。 そのため、1日でも数回以上巣を離れません。 孵卵をしている鳥は、頻繁に転卵も行い、鶏では嘴から水をかけて適切な湿度に保たせる行動も見られます。しかし、一部の鳥では、オスとメスの両方が抱卵を行い 、ペンギンではオスのみが抱卵をします。抱卵中のために、餌と水は鶏のすぐ近くに提供する必要があります。 抱卵している卵は鳥の体温で保温されますが、湿度も 60~80%に維持できるように、巣材の下にわずかに湿った土を置かれることがあります。飼鳥ではケージ内の湿度に注意するべきです。産卵期の雌は腹部の羽毛が抜けて(抱卵班)、営巣に使用されます。状況によっては孵卵器を使っての人工孵化をさせる場合もあります。
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参考文献
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