カナリアってどんな鳥(知らないといけない生態と特徴) 

カナリア

カナリア諸島の野鳥だった!

カナリアは14~15世紀にカナリア諸島に住む野鳥をスペイン人がヨーロッパに持ち込み、飼育されたのが始まりと言われていますが、他にも色々な文献にその起源が書かれており、詳しくは不明です。その後、ヨーロッパ全土でペット用に品種改良が始まり、さまざまな品種が作出されました。カナリアという名前は、カナリア諸島から名付けられたそうです。17世紀には上流階層の人たちが、カナリアを鳴かして楽しむ贅沢なペットとして飼育・繁殖が行われてきました。18世紀になると、フランスで「新カナリア考」というバイブル的な飼育本が出版され、ヨーロッパ各国で翻訳され、カナリアは一般的な飼い鳥になりました〔島森 2010〕。日本へは江戸時代に輸入され、ペットとしてたちまち人気となり、武士や貴族の人たちにペットとして飼育されていました。その人気ぶりは葛飾北斎の日本画にも登場しています。1780年代の終わりには、薩摩藩がオスメスのペアーのカナリアを70両で購入した記録があります。現在の物価で言えば約210万円になります。しかし、1790年代には1羽は1両に下がり、1820年代にはさらに価格が下がったそうです〔島森 2010〕。ペットとしての小鳥では最も長い歴史を持っていますが、近年は飼育をする人の高齢化で若いカナリア飼育者が少ないのが現状です。現在は野生の個体数は少なくなっており、ほとんどが繁殖したCB個体が流通しています。

分類・生態

分類

スズメ目アトリ科カナリア属
学名Serinus canaria
英名:Canary

分布

カナリア諸島、マデイラ諸島、アゾレス諸島
カナリア分布図

身体

体長:10~20cm
体重:12~29g
羽色:体色は黄緑色を帯びた灰色、茶色、褐色で、背中に黒褐色の縞模様が入っています。
趾:三前趾足
 ブンチョウ

生態

環境:標高1,700mまでの森林に生息しています。
行動
・小さな群れをつくり、樹上に巣を作っています。
・澄んだ美しい声でさえずります。

カナリア

食性:主に植物の種子を食べる穀食性です。
寿命:7~10年

性格

自立心が強い

カナリアはヒナからの飼育が難しいため、ヒナではあまり流通していません。コミュニケーションをとれば手乗りにはできますが、基本的に触られることをあまり好みません。自立心が強い鳥で、他の鳥に比べて構ってもらえなくてもストレスになりませんが、その反面やや臆病な面も持っています。

カナリア

特徴

歌を歌う

カナリアはウグイスなどと共に美しい鳴き声を持つことで、鳴禽(めいきん)類とも呼ばれ、美しいさえずり(歌)は昔から多くの人々の興味を引いてきました。歌やさえずりが上手な個体もいますが、鳴き方の上手さは個体差があります。ただし、メスはオスのように鳴くことはできません。カナリアの普段の鳴き声は気にならない場合でも、繁殖期だけは特別大きな声で鳴くため注意して下さい。鳴き声は基本的に「ピーピー」と鳴きます。鳴禽は音声学習能力を持ち、幼鳥の時から歌を聞かせて学習させることで、成鳥になって上手に歌を歌えることができるようなります。さらにカナリアは成鳥になってから、その歌を変えて歌えるような能力も持っています〔渡辺ら 2006〕。オスは繁殖期毎にさえずりや歌が違うこともあり、一生のうちに数百もの歌を習得し、人間の言葉と同じように方言もあるようです。昔おぼえた歌でも、しばらく使わないでいると、忘れることもあります。これほどまでに多くの歌を歌うのは、より多くのメスが興味を持ってもらうためだと思われます。なお、カナリアの中でも鳴き声を楽しむために改良されたのが、ローラーカナリアになります。

鳥の鳴き声の詳細な解説はコチラ!

羽色が奇麗

品種改良で黄色や赤色の品種が作られ、これらカラーカナリアと呼ばれています。カナリアは漢字で、金糸雀と表記され、美しさを表しています。綺麗な黄色をカナリアイエローと呼ばれ、標準色彩になっています。
レモンカナリア 

羽色を奇麗に維持するために、赤カナリアではカロチンを含む色揚げ剤やビタミンサプリメントを与えるのが常法になっています。しかし、与えすぎると肝臓に障害を与える恐れがあるので注意して下さい。

毒ガス感知

カナリアは空気の変化に敏感な鳥で、有毒ガスなど発生するとすぐに弱ってしまいます。炭鉱で働く人がガスを察知するために連れて歩いたという歴史があります。

1995年3月22日の地下鉄サリン事件が起こしたオウム真理教を捜索隊で、ガスマスクをつけた機動隊員が手にしていたのはカナリアでした。カナリアは無臭のガスに反応し、さえずっていたカナリアが有毒ガスを察知すると、さえずらなくなります。

ガスマスク

水浴びが好き

カナリアは水浴びをする習性があるので、飼育では水浴びをさせて下さい。

足が長い

ブンチョウやジュウシマツと比べて、足が長く、指も細長いのが特徴です。

カナリア

これがポイント!

・カナリア諸島の野鳥を飼鳥にした鳥
・性格は自立心が強く、人とのコミュニケーションを積極的にとらない
・臆病な面もある
・色が奇麗
・美しいさえずりは幼鳥から訓練する
・毒ガス探知に使用されている
・水浴びが好き
・脚が長い

赤いカナリアの探求: 史上初の遺伝子操作秘話.新思索社

マニア向けですね!でもちょっと感動しますよ・・・

参考文献

  • Cameron M.Cockatoos.CSIRO Publishing.Australia.2007
  • Gill FB.Ornithology,3rd ed.W.H.Freeman and Company.New York.2007
  • David Alderton.You &your pet bird.Dorling Kindersley.London.1992
  • 島森尚子.ザ・カナリア.誠文堂新光社.東京.2010
  • 渡辺愛子、坂口博信.小鳥のさえずりの維持と可塑性 ―成鳥における聴覚フィードバックの役割について―.比較生理化学23(1).20-31.2006

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。