【生理】カメレオンの変色(学術的解説)

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変身

カメレオンは体色を瞬時に変化させることができます。体の色を背景そっくりに変化させて、捕食者からカモフラージュをして隠れたり、興奮時や繁殖時には鮮やかな赤や黄色などのカラフルになり、オスは体を目立つ色に変化させて求愛したり、ライバルを威嚇して追い払ったりします。その他、恐怖を感じた時や捕食動物から逃れる時は体色をくすませたり、斑点が出てきます。言い換えれば、カメレオンは体の色で感情を表現するので、表情がわかりやすいです。

変色させる細胞

爬虫類の体色が変化するのは皮膚に存在する色素細胞によりますが、人の皮膚の色素と言うとメラニン色素が有名ですよね。しかし、爬虫類での色素細胞を色素胞(Chromatophore)と呼ばれ、細胞外へ色素を分泌する恒温動物の色素細胞とは異なり細胞内に色素顆粒や反射小板と呼ばれる細胞内小器官を備えています。色素胞は細胞の中心部から体表に沿って放射状にのびる樹枝状突起をもっており、細胞の変化や細胞運動が体色変化に関与し、環境の変化ならびにホルモンやアドレナリンにが影響します。黒色素胞以外に細胞内の顆粒によって、赤色、黄色、虹色といくつかの色素胞が存在し、様々な体色や模様を作ります。色素胞は皮膚の真皮層に、上から順番に黄色色素胞・赤色素胞、虹色素胞と位置し、それらの下に黒色素胞があります。

細胞内における色素顆粒や反射小板の位置・分布を変える細胞運動をする色素胞によって変色をします。最下層の黒色素胞は上部の黄色や赤色素胞をとり囲んでいます。黒色素胞の中の色素の顆粒が砂時計のように下に集まると明るい色になり、黒色素胞の顆粒が上に拡散すると、各色素胞を取り囲んでいるので暗くなります。つまり、体色を変化させる動物の大半は、黒色素胞によって体色の明るさが変わりまする。なお、反射性のある虹色素胞はCDのように光が反射することで、見え方によって青や黄色などの鮮やかな構造色になります。

カメレオンは特殊

最近の研究でカメレオンの鮮やかな色は虹色素胞が重要な役割りをしていることが分かりました(パンサーカメレオンで研究されました)。虹色素胞には2層の細胞からなり、体表に近い1層目の細胞には格子状の結晶が存在し、瞬時に体色変化を調整することができます。結晶格子を調整して光反射を変化させます。リラックスしている平静時では格子が密集して、入射してくる光から青の波長が反射され、それが皮膚にある黄色の色素と結びつい緑色にも見えます。一方、興奮時には細胞が引き伸ばされると結晶同士の間隔が格子が緩んで、黄色や赤色などの他の色が反射されるようになります。なお、1層目の細胞はオスにしか存在しなく、求愛などに使用されているらしいです。下層にあたる2層目は、どのカメレオンにも存在し、赤外線を反射することが分かり、体温調節に役立っているのではないかと推測されています〔Teyssier et al.2015〕。

虹色素胞は自分でコントロールするものではなく、気温が低いと黒ずんで太陽光を集めようとし、暖かければ体温が上がり過ぎないように明るい色になり、体温調節に役立っています。また明るい場所はかい場所のことが多く、そのような場所で暗い色をしていると太陽の熱を吸収して体が熱くなってしまうので、明るい色にすることで光を反射して体温がこもりにくくしています。反対に暗い場所(寒い場所)ではできるだけ熱を吸収して体を温めるために、暗い色に変化します。

カメレオンの特徴と魅力の詳細な解説はコチラ!

参考文献

  • Teyssier et al.Photonic crystals cause active colour change in chameleons.Nature Communications6.Article number6368.2015

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。