全てが変わっている・・・
チンチラは南米の限られた地域にだけいる特殊なげっ歯類で、独自の進化を遂げました。体形はもちろん、生理機能も特徴的ですので、知っておかなければならない歴史もあります。
分類・生態
チンチラというと、猫のチンチラ、ウサギにもチンチラが存在しますが、ここではネズミの仲間であるチンチラ に関して詳しく解説します。チンチラはアニメ映画の「となりのトトロ」のトトロのモデルになったとも言われています。よく見ると似ていますね。
分類
ネズミ目(げっ歯目)チンチラ科チンチラ属
学名:Chinchilla lanigera
英名:Chinchilla
ペットのチンチラにはいくつかの種類がいるとされ、その分類なとは混沌とされており、明確になっていません。一般的にはオナガチンチラ(Chinchilla lanigera)〔Long-tailed Chinchilla〕とされていますが、タンビ(チビオ)チンチラ、コスチナチンチラなど、計3種類に分けられています。しかし、現在のペット個体は、それらの交雑種とも論議されています。そして、中でもオナガチンチラ(Chinchilla lanigera)は今も昔もチリのみに生息してきたチリの固有種であり、タンビチンチラ(Chinchilla chinchilla)の生息範囲はチリとボリビアですが、かつてはペルー、ボリビア、チリ、アルゼンチンに渡って生息していたそうです。オナガチンチラの生息地は、タンビチンチラの生息地と比べると標高は低く、日中と夜間の気温差は緩やかで、年間降水量もそれなりにある半乾燥地帯で、砂漠気候に棲息するタンビチンチラと比べると、気候にかなりの相違があります。反対にタンビチンチラの棲息環境は過酷で、アンデス山脈の頂上付近に分布し、氷点下になることもある寒さの厳しい環境で暮らし、空気はとても乾燥しています。そのため、チンチラの毛皮も、オナガチンチラよりも密な毛皮で美しいタンビチンチラが人気でした。なお、Chinchilla brevicaudata はタンビチンチラ(Chinchilla chinchilla)のシノニムです。
分布
チリ北部(*)
*タンビオチンチラは、ペルー、ボリビア、チリ、アルゼンチンにまたがるアンデス山脈にも分布していましたが、現在はチリでのみで野生個体がいます〔Patton 2015〕。
身体
頭胴長:25.4~35.6cm
尾長:15.2~20.3cm
体重:400~600g
生態
環境
南米大陸のアンデス山脈地帯西側に生息し、標高約4500mの傾斜のある岩場で、気温は約27℃度から氷点下まで変動します。上記の3種類は山の標高の高さで住み分けているそうです。主な捕食者には、オオフクロウやキツネ、家畜が含まれます〔Jimenez 1995〕。
行動
・チリ北部の砂漠地帯は乾燥しており不毛で、巣穴や岩の割れ目に住んでいます〔Norwak1999,Hoefer 1994〕。基本的に夜行性で、夕方から活動を始めますが、昼に活動することもあります。特に夜間は寒くなり、保温のために厚い毛皮を備えています〔Webb et al.1991〕。岩場を二足歩行の跳躍で移動し、軽石の砂で砂浴びで毛皮のメンテナンスも行います。
・何十頭の群れで生活をし、2~5の家族から形成されています〔Hoefer 1994〕。群れは最大113頭で、多くは50頭未満です〔Jimenez 1995〕。
食性:草食性で、草の葉や茎、根、樹皮、サボテンやコケなどの植物質を食べ、雪解け水や岩場に結露した水滴などを飲んでいます。
寿命:野生での寿命は約10年ですが、飼育下での最長の記録は17.2年〔Weigl 2005〕、一部の報告では20年以上ともいわれ〔Nowak 1999〕、ギネス記録では29年229日です。
これがポイント!(分類・生態)
・猫のチンチラではなく、ネズミの仲間のげっ歯類
・極寒のアンデスの山に生息
・チンチラは乱確され、激減した暗黒時代がある
・鉱山技師のチャップマンさんが人工的に飼育することに成功
・寿命が長く10~15年(ギネス記録では29年229日)
性格
静かで内向的で警戒心が強いですが、非常に機敏で活発な面もあります。 メスは時にオスよりも攻撃的で、領土や防御を示すために尿をひっかけます。 他のげっ歯類とは異なり、チンチラは餌を食べる際に、直立して前肢で餌を持って食べる特徴があります〔Spotorno et al.2004〕。また、チンチラは、他の動物や人間を識別することが得意で、互いに意思疎通するために、視覚、聴覚、嗅覚、触覚に依存し〔Jurciseck et al.2003,Vanderlip2006〕、 ペットとして人を十分に認識します。
警戒心が強い
警戒心が強いですが、好奇心旺盛で活動的な面をもち、意志表示も明確です。
ギーギーグーグーと鳴く
興奮したり、嫌なことをされると、「ギーギー」、「グーグー」と甲高い声をあげることもあります。
昼でも夜でも
夜行性の動物ですが、意外と昼間も活動的に動きます〔Hoefer 1994〕。
特徴
跳躍
耳介と尾が大きく、足が細くて長いです。特に後肢は前肢と比べて発達し、大きな尾とともに跳躍するのに役立っています。
房尾
尾の先端にも長くて硬い剛毛が生えており、ヒゲと同じに感覚器官です。
毛皮のコート
耳以外は細いしなやかな2~3cmの長さの毛で被われ、1本の毛根から約60本の細い毛が密生しています〔Walker 1975〕。野生では高山にいるため、寒さに耐えるために厚い毛皮のコートを着ています。しかし、体温を下げるのが苦手なので、熱中症に注意しなければなりません。皮脂からの脂性の分泌物は皮膚の乾燥を防いでいますが、この毛が脂で絡まないように、砂浴びをして毛を整えています。
ヒゲ
ヒゲは重要な感覚器官で、岩の巣穴の中での障害物との接触、風の方向や強さなどを感じとる役目をしています。
肛門腺
肛門の頭腹側に1つの肛門腺(臭腺)がありますが、分泌物は人には感じられないです。
縦長の虹彩
目は大きく、瞳孔は縦長のスリット状をしています。目の色によって瞳孔の形状がやや異なりますが、その理由は分かりません。
丸い耳介
丸い耳介は大きくて薄く、聴覚が発達しています。
音を伝達する鼓室が大きいことも特徴で、下記のCT写真で見ると頭骨のかなりの割合を占めています。音の刺激に敏感な面もあるので、騒がしい環境は避けて飼育しましょう。
平爪
趾の数は四肢ともに4本で、犬や猫のような肉球を備え、小さな平爪があります。
偽指
前肢には2つの発達した偽指(ぎし)と呼ばれる突出部分がみられ、親指の代わりに使用して物をつかむことができます。
常生歯
切歯と臼歯があり、計20本です。切歯も臼歯も常生歯で、生涯にわたり伸び続けます。切歯のエナメル質は黄色~橙色で、これは銅や鉄などの色素がカルシウムと一緒に取り込まれるためです。
抗生物質に弱い消化管
胃は深い袋状の形をしており、食道とつながる噴門部(入口)と十二指腸とつながる幽門部(出口)が接近していて、それぞれの直径が細いのが特徴です。このような胃の形のために、チンチラは吐くことができません。チンチラの消化器で最も特徴を持つのが盲腸です。腹腔の大半を占めるほど大きいです。盲腸にはたくさんの腸内細菌が共存し、繊維の細胞壁を壊し、消化吸収を行う発酵曹としての重要な役割をしています。そして、チンチラは薬に対して敏感で、抗生物質の内服投与により腸内細菌叢が崩れ、悪玉菌のクロストリジウム菌が増殖して腸炎を起こし、下痢や食欲不振がみられます(抗生物質関連性腸炎)。クロストリジウム菌が毒素を出して、全身状態が悪化して死亡するようなこともありますので、注意して下さい。
チンチラに抗生物質を与える時は、乳酸菌などの善玉菌も一緒に与えて腸炎を予防してください。チンチラ専用の乳酸菌はありませんが、胃酸で失活しないような生菌(プロバイオテックス)、腸内細菌において生菌の栄養となるプレバイオテックス、生菌でなく死菌も腸内環境を改善するためバイオジェニックスとして有用です。チンチラに使える製剤は以下にアップしておきました。普段からチンチラの腸活に役立てたい場合、現在動物病院からお薬を処方されている場合はお求めになって下さい。
プロバイオテックス
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食糞
チンチラはウサギ以上に食糞をします。
これがポイント!(特徴)
・嫌なことをされると鳴き叫び、やや神経質な性格
・手足が細長く、ぴょんぴょん飛び跳ねるので、後肢が発達
・ヒゲと尾が長いです
・器用に物を前肢でつかめます
・チンチラは吐くことができません
・抗生物質の内服投与で下痢を起こしやすいので注意して下さい
参考文献
- Hillyer EV,Quesenberry KE,Donnelly TM.Biology,Husbandry,and Clinical Techniques.Guinea Pig and Chinchillas.In Ferrets,Rabbits,and Rodents.Clinical Medicineand Surgery.Hillyer EV, Quesenberry KE.eds.WB Saunders. Philadelphia.US.1997
- Hoefer HL.Chinchillas.Veterinary Clinics of North America. Small Animal Practice24(1).p103-111.1994
- Jimenez J.Conservation of the last wild chinchilla archipelago:a metapopulation approach.Vida Silvestre Neotropical4(2):88-97.1995
- Jurcisek J,Durbin J,Kusewitt D,Bakaletz L.Anatomy of the nasal cavity in the chinchilla.Cells Tissues Organs174:136-152.2003
- Nowak RM.Walker’s mammals of the world,Sth Ed.Vol2.Baltimore,MD:The John Hopkins University Press.1991
- Patton,James L.Pardiñas,Ulyses FJ,D’Elía, Guillermo.Rodents.Mammals of South America2.University of Chicago Press.p765-768.2015
- Pavia A.Chinchillas:a new owners guide.TFH Publications.Neptune City,NJ.2003
- Spotorno AE,Zuleta CA,Valladares JP,Deane AL,Jimenez JE.Chinchilla laniger: mammalian species.American Society of Mammalogists758:p1-9.2004
- Vanderlip SL.The chinchilla handbook.Hauppauge.Barron’s.NY:2006
- Webb RA,Beynon PH,Cooper JE.Chinchilla,manual of exotic pets.British Small Animal Veterinary Association, Gloucestershire,United Kingdom.1991
- Walker EP.Mammals of the World.3rd ed. Vol.II.Johns Hopkins University Press.Baltimore.US.1975
- Weir BJ.Chinchilla.In Reproduction & Breeding Techniques for Laboratory Animals.Hafez ESE ed.Lea&Febiger.Philadelphia.p209-223.1970
- Weigl R.Longevity of Mammals in Captivity from the Living Collections of the World.Kleine Senckenberg- Reihe 48 Stuttgart.2005
- 富永聡、辻紘一郎.チンチラ.実験動物技術編.田嶋嘉雄編.朝倉書店.東京.1977