鳥の栄養評価 (キールスコア)

太っている?痩せている?

よく聞く話しですが、「ケージの外から見て太っていそうに見えたが、実は寒くて膨らんで調子が悪く痩せていた・・・!」、「栄養状態が良いと思っていたのに、お腹の中にしこりが出てきて腹水がたまって死んでしまった・・・」という声を聞きます。栄養状態は体重と筋肉や脂肪の付き方で評価しますので、そのチェックの仕方を教えます。ちなみに左のジュウシマツは寒くて膨れていますが、右のセキセイインコは腹水が貯留して身体のシルエットが太く見えているのです。

ジュウシマツ痩せている

理想体重

体重測定には料理などに使われるデジタルのキッチンスケールでも測定できますが、下記の体重計付き止まり木がお勧めです。定期的に体重を量り、数値を記録に残して下さい。鳥種ごとの標準体重は下記の表の通りです。

セキセイインコ体重測定

マルカン 小鳥の体重計

最小0.1gから最大500gまで計量/0.1g単位表示

表:標準体重
鳥種理想体重
セキセイインコ30-40g
オカメインコ80-90g
ボタンインコ35-50g
コザクラインコ42-55g
ブンチョウ22-27g
ジュウシマツ12‐15g
カナリア12‐29g

骨格によっては、理想体重よりも重たいかもしれません。その鳥にとって個体差で理想体型ということもありますので、全てが異常とは限りません。健康診断の際に、鳥の理想体重を確認しておき、増減するかの確認をして下さい。体重の変化は、鳥さんの変化の大事な指標になります。体重は骨格によって決まるため、同じ種類でも個体差がありますので、この数値を少しだけ外れてもいても完全に病気とは言えません。透明な箱に鳥を入れて測りで重さを計測し、後で箱の重さを引けば正確な鳥の体重が測定できます。

筋肉の付き方と脂肪の確認

筋肉

筋肉の付き方は胸筋の量で評価され、胸骨の竜骨突起(りゅうこつとっき)(胸の中央の骨の突起)の左右の胸筋の量で確認します。鳥は空を飛べるのは、翼を動かす強力な胸肉にあります。竜骨突起は胸の中央に白く縦長に見え、左右の筋肉のつき方がなだらかです。竜骨突起はキール (Keel) と呼ばれ、胸筋の付き方で痩せているかどうかを判断します。この評価方法はキールスコア (Keel score) と呼ばれ、評価は主観的な尺度であるが、一般的には1から5までのスケールが指定され、痩せてくると胸筋が減ってきて、評価は1~2となります。

鳥の筋肉の詳しい解説はコチラ!

5: 胸筋が盛り上がり、キールが触れない

キールスコア5

4: 筋肉がキールをまたいで平坦で、キールがわずかに触ることができる


胸筋が発達しているのと、肥満とは異なります。筋肉であれば赤色をしていますが、肥満だと黄色の脂肪が見えます。息を吹き掛けて、羽をどかして確認して下さい。肥満になると、脂肪肝脂肪腫になりやすくなります。

セキセイインコ肥満

3:キールが触ることができ、胸筋がしっかり発達している

セキセイインコキールスコア3

2: 胸肉がやや少なく、キールが簡単に触れることができ、尖り気味である

セキセイインコキールスコア―2

 1: 胸筋が殆ど無く、キールがはっきり触ることができ、尖っている

セキセイインコキーススコア1

肥満

肥満になると、胸や腹、肩部に脂肪が付いてきて、鳥においても犬や猫と同じようにボディコンディションスコア(BCS:Body Condition Score)として、キールスコアと同じように脂肪の蓄積具合を数値化して表します。評価は主観的な尺度ですが、1から5までのスケールが指定され、中間は3です。胸や腹部の脂肪は羽毛をかき分けると、クリーム色や薄ピンク色に見えるので明確に易に確認ができます。

体重は発情や卵を持っていると増える!

発情中の鳥は体重が増えますが、餌を多くとり、少し肥満にもなりますが、これは正常です。

体重が減って痩せている時はどうする?

何らかの問題がある可能性があります。下記のことを確認して下さい。

  • 餌の量が足りていますか?
  • 餌の内容は問題ありませんか?
  • 羽を膨らませていませんか?
  • 寝ている時間が多くありませんか?
  • 軟便や下痢はありませんか?
  • 吐いていませんか?

餌の量が足りていますか?

餌の量を確認し、少し増やしてみて下さい。栄養価の高いシードを与えてみるのも一方法です。しかし、病気であることがあるため、早期に動物病院で受診することをお勧めします。

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餌の内容は問題ありませんか?

野菜を多く食べて、種子やペレットを残していませんか?皮付きの種子を与えている場合は、殻が餌容器の中に残ってしまい、交換を怠ると実際の食べた量が分かりません。

羽を膨らませていませんか?寝ている時間が多くありませんか?

羽を膨らませている状態を膨羽と呼ばれます。ケージの中が寒いのか?体調が悪くて病気?だと思います。まずは保温して、戻らない時は病気の可能性が高いです。夜はしっかりと寝かせているのに、昼間も寝ている時間が多く、活動性が低下している時も病気の可能性が高いです。

カナリア痩せてる

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軟便や下痢はありませんか?

寒かったり、発情したり、野菜を食べる量が多い、飲水量が多いと軟便になります。飼育環境と餌を見直しても改善がない時は、動物病院で受診しましょう。

吐いていませんか?

食べても吐いてしまうと、栄養が採れないので痩せてきます。オスは発情吐出を繰り替えすと少しだけ痩せます。病気による嘔吐の可能性が高い場合は動物病院で診察を受けましょう。

まとめ

鳥は病気を隠します。体重や栄養状態を確認して、異常があれば病気の初期症状の一つかもしれません。定期的に体重を図ったり、保定してキールスコアを確認できるようにしておきましょう。

これがポイント!

  • 鳥の栄養状態は、キールスコアとボディコンディションスコアで判断する
  • キールスコアとともに体重測定を行うことは健康診断にもなる
  • キールスコアが体重とともに落ちていく場合は病気かもしれない

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。