ヘビのハンドリング(人への馴らし方)

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触らないべき種類

爬虫類のハンドリングはメリットとデメリットがあります。基本的に爬虫類は触られるのを好みませんので、スキンシップを喜びませんし、ハンドリングはストレスでしかないと言われています。しかし、多くのカメやトカゲでは、ハンドリングをしても問題がないのですが、ヘビにはストレスがかかることが多いので、極力触らずにそっとしておくべきとも言われています。ハンドリングを行うことは過度のストレスになり、病気を引き起こすことや拒食の原因にもなりますので注意して下さい。

ハンドリングのメリット

ヘビをハンドリングに馴れさせると、掃除などの日常の管理が楽になり、ハンドリングを行う際にヘビの健康診断も可能になり、病気の初期発見につながるというメリットもあります。もちろんペットとして飼育をしているため、触れることができると愛情深くなります。その為にも定期的にハンドリングを行って馴れさせるべきという考えもあります。

ハンドリングの考え

人に触れることに馴れていない爬虫類は、最初は体を硬直させて動かなくなったり、目を閉じてやり過したり、ハンドリング後もはしばらく落ち着かない素振りを見せたり、ケージの隅でジッとしています。その内に馴れれてくるとハンドリングをしても動じなくなっていきますが、あくまでも個体差がありますので、馴れるかどうかはやってみないと分かりません。あくまでも爬虫類は犬や猫のような哺乳類のように懐くのではなく、飼い主の存在に馴れるだけという認識でいて下さい。爬虫類で一般的に入門種とされている種類は、好奇心旺盛だったり、陽気で温和な性格の種類で、人に馴れやすいです。人馴れした個体は、飼育する上でハンドリングを嫌がらない個体という意味になります。もともと警戒心が強い種類などは、馴らすこと自体が難しい上、体調の変化や発情期になると、馴れていた個体が急に触われなくなるケースもあります。ハンドリングのポイントは、飼い主との関わりを餌と関連付けることです。長く人と暮らし、人の手で餌を与えられてきたものは、少しずつ人を怖がらなくなってきます。馴れてくると、人がケージや水槽近くを通ったり、餌の準備を始めると、シェルターから顔を出したり、ケージを引っかくようなアピールをするようになってきます。

人に飼われることを安心させる

ヘビは馴らすというよりは適切なハンドリングを行える、つまりヘビを触ったり、持ったりというスキンシップあるいは取り扱うことが容易にできる状態にすることを心がけて下さい。飼育されているヘビに対してハンドリングを行うことが、良いか悪いとかという論議もされています。しかし、ハンドリングされることに馴れたら、ケージの掃除などでヘビを取り出したり、健康チェックなどをする場合にストレスを与えなくてすむというメリットがあります。しかし、どうしても威嚇したり、かみついてくるヘビには無理をしません。ヘビは馴れても犬や猫のように飼い主にすり寄ってくるわけではありません。飼い主が触っても威嚇しない、かみつかない、逃げようとしないという行動が馴れている状態だといえます。馴れたヘビでも、手荒に扱うと攻撃されていると勘違いをします。



動物園では、嫌がらずに人に触られたり、首に巻いたりてもかまないヘビをみかけますよね?それが馴れているヘビといえるでしょう。ヘビは基本的に人に触られることを好まない動物です。そのことを踏まえて、最初はハンドリングなどの触る頻度はできるだけ少なくし、ケージを掃除するタイミングで少し触る程度から行い、少しづつゆっくりと行います。

方法


馴れたヘビにする方法は、温和な正確な種類を選び、ハンドリングのコツを習得することです!以下の5つの項目が考慮して下さい。

  • 性格が温和なヘビを選ぶ
  • 手洗いしてから触る
  • 食後は触わり過ぎない
  • 優しく持つ
  • 長時間触らない

性格が温和なヘビ

ヘビの中にでも、入手しやすくて性格的に馴れる種類がいます。ナミヘビのコーンスネーク、アオダイショウ、カリフォリニアキングスネーク、ミルクスネークそしてニシキヘビ科のボールパイソンなどが、その代表でしょう。
コーンスネークはヘビを飼育することが初めての人に推奨できる種類です。性格はおとなしく、人をかむことは滅多にないため、優しく扱ってやることですぐに馴れます。
アオダイショウも性格がおとなしく噛みつくこともほとんどありませんが、個体によっては気があらいこともあります。
カリフォリニアキングスネークはコーンスネークよりも流通量が少ないのが欠点ですが、やや気が荒かったり、臆病である個体がいます。
●ボールパイソンはいわゆるニシキヘビの仲間で大型のヘビですが、優しい性格で人に馴れやすい性質をしています。

手荒いをしてから触る

ヘビは嗅覚が優れていますので、ヤコブソン器官を使って嗅いをかぎます。タバコや化粧品、化学薬品の嗅いに警戒しますので、手をよく洗ってからハンドリングを行って下さい。また、手に餌の嗅いがついていると、餌と間違われてかみつかれることもあります。もちろん爬虫類はサルモネラ菌などの人に感染する菌を持っていることが多いので、触った後は必ず手をよく洗って下さい。

食後はさわり過ぎない

食後にハンドリングを行うと、ストレスで胃腸蠕動が低下する可能性があります。特にヘビでは、下痢や餌の吐き戻しが見られ、その後に拒食することが多いです。

優しく持つ

ケージをハンドリングする場合は、まずはケージから取り出すところから始まります。ヘビが馴れてない時は、動き回っているような時は避けてください。とぐろを巻いているような状態が最初はよいでしょう。基本的にヘビは掴むようにして持つと嫌がりますので、手の上に乗せてる感覚で触れるようにしてください。特に首や頭に触れられることを嫌がり、威嚇してくることがあるので、持つ際は、必ず胴体を持つようにしましょう。ハンドリングする際に、手や指だけといった狭い面積で持つとヘビは不安定になり嫌がります。ヘビは基本的に地面を這って行動しますので、可能な範囲で広い面積でヘビと触れるようにしてください。具体的には手のひらを大きく広げて指を立てたり、腕や掌全体を利用してヘビの体を支える感じで行って下さい。安心した持ち方をするとヘビは落ち好きます。

ハンドリングを行うときに以下の点を注意して下さい。できるだけ若い時から行うほうがよいでしょう。

①ゆっくりと正面から

爬虫類の多くは頭や後ろから触られることを嫌がります。これは野生では鳥などの天敵が、上から飛んできて捕食することから、爬虫類は上からくるものを怖がります。爬虫類のハンドリングを行う時は爬虫類の視界に入るところからゆっくりと手を伸ばし、無理やり拘束しないようにお腹の下からそっとすくい上げるように持ち上げます。もちろん後ろから追いかけて捕まえるのはよくありませんので、ケージ内から取り出す場合は、あまり動き回っているような時は避けて下さい。ヘビの場合は、顔の前に手を持っていくのでかまれないようにして、できればとぐろを巻いた状態のまま、あるいは胴体の中ほどを持ち上げるようにして下さい。

②手に乗せる

驚かさないように、下からすくって、あくまでも手に乗せる感じで行います。尾や胴体を強く持ったり、体をあちこちと触りすぎることは避けて下さい。

③安定させる

多くの爬虫類は地面を這いずり回って生活をしていますので、お腹を床に接触していることで安心します。手のひらを大きく広げたり、腕全体を利用して体を支えます。ヘビでは指や腕に絡ませたり、なるべく手を広げて蛇との接地面を多く作るようにしましょう。しかし、ヘビは手からニョロニョロと逃げようとしますので、下から手を添えてヘビの行き先に手があるようにしてします。逃げようとしている間、これをくり返します。

へビをつかむ時は、躊躇ぜすに素早くつかむべきです。躊躇することでヘビも逃げて抵抗し、ストレスになります。また、ヘビの顔の前に手を持ってこないように注意して下さい。餌と間違われてかまれてしまいます。

長時間触り続けない

ヘビを長時間触り続けることはストレスになるため避けてください。無理して長い時間ハンドリングを行うと、拒食になるかもしれません。1回のハンドリングの時間は長くても3分を目安にしましょう。

まとめ

気長にヘビにつきあって下さい。ヘビにもそれぞれ性格がありますので、一筋縄には行きません。

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。