【解剖】鳥の塩腺

塩腺/塩類腺(Salt gland)と呼ばれる塩類排泄機能が、水鳥、海鳥、一部の猛禽類や砂漠に棲息する鳥類では発達しています〔Riddell et al.1991,Shuttleworth et al.1999〕。海水や餌とともに摂取した過剰な塩分を体外に排出する機能で、海鳥類では頭骨の眼窩の上に1対で存在し、鼻腺(Nasal gland)とも呼ばれています。

浸透圧の調整

排出された塩類の溶液は細い道管を通って鼻腔に運ばれて鼻孔から体外に排泄され、鳥は高張尿を生成する能力が限られていることから、代償機構として考えられています〔Shuttleworth et al.1999〕。塩腺が鳥の体から排出されるナトリウムと塩化物の60~88%を除去できるという記載もあります〔Frazier et al.1995〕。

鼻の周囲のガビガビ

脱水症状や熱ストレスを受けた鳥の鼻孔の周囲に塩の付着が見られる場合があり、これは鼻孔の機能が顕著に現れていることを示しています〔Lumeij 2000〕。塩腺の大きさは鳥の塩分摂取量に依存し、海鳥は過形成反応で大きく〔Shuttleworth et al.1999〕、塩分をほとんど摂取しない鳥では小さいです。

参考文献

  • Frazier DL,Jones MP,Orosz SE.Pharmacokinetic considerations of the renal system in birds: part I. Anatomic and physiologic principles of allometric scaling.J Avian Med Surg 9:92-103.1995
  • Lumeij JT.Pathophysiology,diagnosis and treatment of renal disorders in birds of prey.In Raptor Biomedicine III.Lumeij JT et al eds.Zoological Education Network.Inc. Lake Worth FL:p169-178.2000
  • Riddell C,Roepke D.Inflam16_Nephrology.qxd 8/23/2005 10:43 AM Page 490 Chapter 16 | EVALUATING AND TREATING THE KIDNEYS 491 mation of the nasal gland in domestic turkeys. Avian Dis 35:982-985.1991
  • Shuttleworth TJ,Hildebrandt JP.Vertebrate salt glands: shortand long-term regulation of function.J Exp Zoo283:689-701.1999

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。