【解剖】ヘビの目と耳の構造(祖先は地中生物?水中生物?)

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ヘビはトカゲから進化

ヘビは四肢を欠き、細長い体をくねらせて移動します。本来トカゲから分化し〔Wiens et al.2002〕、その独特のスタイルになった進化の過程をめぐったのは、地中での穴掘りに適応したとする説〔Walls 1940,Bellairs et al.1951,Underwood 1970〕と水中を泳ぐことに適応したとする説〔McDowell 1972,Zaher 1998,Rieel et al.2003 〕があり、昔から議論され続けていました。地中、水中のいずれも四肢は邪魔となることが多く、細長い体は水中や地中といった抵抗のある場所では有利です〔Zaher et al.2000〕。特に近年は水中説が有力誌され、具体的には、痕跡的な四肢を持つヘビの化石がかつて海だった地層が発見され、トカゲとヘビの体型の間の過渡期であるという仮説が立てられています〔Caldwell et al.1997,Lee et al.1999,Scanlon et al.2000〕。ヘビの起源に関する証拠として、眼科および耳の解剖から諸説が支持されています。

目の構造

具体的には、ヘビの目はトカゲの祖先からの起源の間に劇的に変化したことを示唆しています〔Walls 1940〕。最も大きな違いは、網膜上に画像の焦点を合わせる構造に関係します。ヘビは拡張した虹彩周辺筋を介して硝子体に圧力を加えることによって焦点を合わせ、それによって硬い球状のレンズを眼球内で前方に押し出します。これらの筋肉が弛緩すると、水晶体の受動的な収縮が起こります〔Sivak 1977,Walls 1942〕。一方でトカゲは、脈絡膜に埋め込まれ、強膜の骨要素に固定された頑丈な毛様体筋が、柔らかく平らな水晶体を圧迫します〔Walls1942〕。

当初はトカゲがヘビの祖先であり、トカゲの多くが巣穴を掘る動物であることを考えると、これらのヘビの眼科機能は、光が少ない環境においてトカゲの典型的な巣穴機構を失ったという解釈でした〔Greene 1997,Coates et al.2000,Zaher et al.2000,Senn et al.1973〕。哺乳類や鳥類を含む二次的な水生動物も、陸生の近縁動物よりも多くの球面レンズを持っていることが共通しており〔Walls 1942,Sivak 1975〕、その他にも平らな角膜や厚くなった角膜縁の所見もあります〔Sivak 1975〕。ヘビの進化の過程で、地中あるいは水中にしても、網膜の血管が乏しい特徴があり、視力が強くはありません〔Walls 1942〕。

耳の構造

哺乳類の耳は外耳(耳介、耳孔)、中耳(耳小骨が入る鼓室、耳管)、内耳(平衡覚器、聴覚器)から構成され、中耳の鼓室には3つの耳小骨が入っており、鼓膜側からツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨が連なっています。陸上脊椎動物は、空気中の音の振動を鼓膜で受け取り、耳小骨を通して内耳の神経へ伝達します。一方、爬虫類の耳小骨は1つだけ(耳小柱)、これは哺乳類のアブミ骨に相当し、鼓膜と内耳の間を連絡しています。爬虫類の中で、ヘビは耳が退化しているために、耳介や耳道、鼓膜を欠きますが、内耳と呼ばれる内部器官は存在し、とても発達しています。耳道を介して音を聴取しているのではなく、振動を筋肉や骨を通じて内耳まで届け、音として認識しています〔Knight 2012〕。爬虫類の顎骨には方形骨形と関節骨と呼ばれる構成骨があり、これらの骨は哺乳類にはありません。ヘビや地中生活のトカゲでは本来の顎関節の機能的だけでなく、中耳における音の振動にこれらの骨が伝達に役立っています。地面に腹ばいになっている爬虫類は、地面の振動を下顎の振動として受けとり、内耳まで届けて聞き取っています。このような耳の振動に反応する解剖学的特徴から、ヘビの祖先は地中で進化したと推測されています。したがって、ヘビの上で大きな音を発しても、音を発する物体が動かないか、動いたとしてもその動きがヘビに見えない限り、何の反応も引き起こしません。しかし、地面や空気、草が動くわずかな振動でも感じ取る能力が優れています。なおインドでのコブラを使った蛇使いが、笛を吹いてコブラを操るように見せる芸がありますが、これはヘビが笛の音に反応しているのではなく、蛇使いが足でカゴを叩いたり、地面をトントンとたたく振動などに反応していると考えられています〔Bagla 2007〕。

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参考文献

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この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。