◎ギリシャリクガメってどんなカメ(知らないといけない生態と特徴) 

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飼いやすい人気カメ

ギリシャリクガメは背甲の模様がギリシャ織のようにみえることが名前の由来で、学名のgraecaはギリシャという意味です。分布域は広く、10種以上の亜種が知られ、亜種によって大きさや色などが異なります。しかしながら、亜種の分類が混沌としており、独立種としての意義も唱えられています。ペットとして販売時に明記されている流通名は、必ずしも正確な亜種名とは限らないのです。性格も温和で、とても飼いやすいリクガメです。日本でのリクガメの中でも飼育頭数が最も多いです。

ギリシャリクガメ

【解剖】カメの特徴(甲羅と首の曲げ方)の解説はコチラ

分類・生態

分類

カメ目リクガメ科チチュウカイリクガメ属
学名Testudo graeca
英名:Greek tortise,Spur-thight tortoise

分布

ヨーロッパ南部、アジア南西部および西部、アフリカ北西部、地中海諸島

ギリシャリクガメ分布図

生態

環境:分布域が広く、森林や草原、山地等の比較的乾燥した地域。北アフリカではモロッコの標高高い、
Testudo graeca は湿潤から乾燥までの地中海気候に生息しています。イベリア半島では、亜湿潤、半乾燥、乾燥地域に限定されています。北アフリカでは、オーアトラス (モロッコ) で標高 2090 m に達し、イベリア半島では 500 m 未満の低高度に生息しています。

行動
・昼行性で昼間に活動し、夜は窪みのある穴で過ごしています。
・亜種や個体群によって、冬眠で越冬するものもいます〔安川 2000,安川2002〕。
食性:草食性で、主に植物や低木の葉を食べています。
寿命:40~50年

【生理】カメの寿命(何年生きるのか)の解説はコチラ

身体

甲長:20~30cm(最大甲長約36㎝)

亜種

ギリシャリクガメの亜種分類は難しく、混乱を招いています。 3大陸にまたがる広大な分布域のため、多様な地形、気候、生息地から膨大な数の品種が生まれ、新たな亜種が絶えず発見されています。 2023年現在、少なくとも20の亜種が公表されており、そのうち以下の12種が有効と認められています。

学名和名分布最大甲長特徴
T.g.graecaムーアギリシャリクガメ
アルジェリアギリシャリクガメ
グラエカ種
アルジェリア北部、モロッコ北東部、スペイン南部(移入?)34cm(アルジェリア個体群は大型化)/通常は甲長25cm・模式標本の産地(模式産地)はアルジェリア
・甲高は高く、後部縁甲板は外側へ張り出さない
・若齢個体では背甲の明色部と暗色部の境目が明瞭だが、成長に伴い背甲が暗色になる(一方で暗色斑が消失し、灰褐色や淡黄褐色一色になる個体もいる)
T.g soussensisスースギリシャリクガメモロッコ西部25cm・後部縁甲板は外側へ張り出さず、反り返ることはなく、後部縁甲板の外縁は尖らない間胸甲板長と間股甲板長がほぼ等しい
T.g.marokkensisモロッコギリシャリクガメモロッコ中部(地中海沿岸)23cm・甲高は低く、後部縁甲板はわずかに外側へ張り出し、反り返ることはない
・背甲の暗色斑が不規則
T.g.nabeulensisチェニジアギリシャリクガメチュニジア北東部、リビア北西部(地中海沿岸)18cm・甲高は高く、後部縁甲板は外側へ張り出さず、後部縁甲板の外縁は尖らない
・背甲の明色部と暗色部の境目が明瞭で、暗色斑は太い
T.g.cyrenaicaキレナイカギリシャリクガメ
キレーナギリシャリクガメ
リビア北東部20cm・甲高はやや低い
・後部縁甲板は強く外側へ張り出す
・背甲の色彩は黄色や淡黄褐色で、暗色斑は不明瞭
・前肢の大型鱗が発達する個体が多い
T.g.iberaコーカサスギリシャリクガメ
トルコギリシャリクガメ
イベリア種
アゼルバイジャン、グルジア、ロシア南西部最大亜種・甲高は高く、甲幅は幅広い
・後部縁甲板は外側へ張り出すが、反り返ることはない
・後部縁甲板の外縁は尖る個体もいる
腹甲全体に不規則な暗色斑が入る個体が多い
・前肢の大型鱗は尖る
・爪は暗色
T.g.armeniacaアルメニアギリシャリクガメアゼルバイジャン西部、アルメニア南部、トルコ北西部・甲高はやや低いかやや高く、甲幅は幅広い
・全身に明瞭な斑紋が入らない
T.g.buxtoniカスピギリシャリクガメイラン中北部(カスピ海南岸)27cm・後部縁甲板はやや外側へ張り出すが、反り返ることはなく、後部縁甲板の外縁は尖らない
・背甲の明色部が大きい
T.g.terrestrisアラブギリシャリクガメ
テレストリスギリシャリクガメ
シリア、トルコ南西部、イラク北西部25cm・甲高は高く、甲幅も幅広い
・後部縁甲板は外側へ張り出すが、反り返ることはなく、後部縁甲板の外縁は尖らない
・背甲の明色部と暗色部の境目が不明瞭
・腹甲中央部に暗色斑が入る個体が多い
・頭部の色彩は明色で、大型の暗色斑は入らない個体が多い
T.g.zarudnyiイランギリシャリクガメイラン東部、南東部27.5cm・甲高は高く、甲幅も幅広い
・背甲の前端の切れ込みがごく浅いか、切れ込まずに前方に突出しする
・後部縁甲板はやや外側へ張り出し、反り返る
・後部縁甲板の外縁は尖らない
・背甲の色彩は黄褐色や灰褐色で、暗色斑が入り、老齢個体では背甲が黒褐色になる個体もいる
・頭部に明色斑が入らない個体が多い
T.g.whiteiアルジェリア
T.g.perses ザグロスギリシャリクガメイラク北東部、イラン西部、トルコ南東部のザグロス山脈25.7cm・背甲は上から見ると長方形に近い
・後部縁甲板は強く外側へ張り出すが、反り返ることはなく、後部縁甲板の外縁は尖らない
・背甲の色彩は暗褐色や黒

以下の亜種は流動的な種類になります。

学名和名分布最大甲長特徴
T.g.anamurensisアナムールギリシャリクガメトルコ中部(地中海沿岸)26cmアナムールはギリシャ語で美しいを意味します
・甲高はやや低く、甲幅もやや狭い
・後部縁甲板は外側へ張り出すし、背甲は上から見ると台形に近い
・暗色斑は不規則で、全体が暗色になる個体もいる
T.g.antakyensisアンタキアギリシャリクガメイスラエル北東部、シリア西部、トルコ南部、ヨルダン北西部、レバノン東部16.2cm・後部縁甲板は外側へ張り出さない
・背甲の明色部と暗色部の境目が明瞭で、暗色斑の割合は個体変異が大きい
・頭部の色彩は明色で、暗色斑は入らない個体が多い
T.g.floweriレバンドギリシャリクガメイスラエル、レバノン西部・甲高はやや低く、甲幅は幅広い
・背甲の色彩は黄色や淡緑褐色で、孵化直後からある甲板(初生甲板)や甲板の継ぎ目にのみわずかに暗色斑が入る個体が多い(全身暗色の個体や暗色斑がない個体もいる
T.g.lamvertiランバートギリシャリクガメモロッコ北東部(地中海沿岸)21.4cm・甲高はやや低い
・後部縁甲板は外側へ張り出し、反り返る
・背甲の暗色斑が不規
・後肢と尾の間に突起状の鱗が大型
T.g.nikolskiiニコルスキーギリシャリクガメグルジア北西部、ロシア(黒海北東岸)29.6cm・甲高は高く、甲幅も幅広い
・後部縁甲板は外側へ張り出す
・第6-8縁甲板が括れて見える
・背甲の色彩は暗色
・前肢の大型鱗は丸みを帯びる
・爪は無色
T.g.pallasiダゲスタンギリシャリクガメアゼルバイジャン北部、ロシア南西部(カスピ海西岸)24.7cm・背甲の色彩は暗色
・爪は暗色


亜種の鑑別は主に大きさと体重、そして色や斑点の種類です。甲羅のフレアーの程度は、最小限のものから顕著なものまで様々です。また、ギリシャリクガメは亜種間でも交配をし、亜種の鑑別を難しくなります。現在はCB個体も数多く流通しています。本邦に輸入される数が多い亜種は、アルジェリアギリシャリクガメ、トルコギリシャリクガメ、アナムールギリシャリクガメ、アラブギリシャリクガメです。他にもキレナイカギリシャリクガメ、モロッコギリシャリクガメ、チュニジアギリシャリクガメ、ニコルスキーギリシャリクガメ、ダゲスタンギリシャリクガメ、ザグロスギリシャリクガメ、スースギリシャリクガメ、イランギリシャリクガメ、アンタキヤギリシャリクガメ、アルメニアギリシャリクガメ、カスピギリシャリクガメ、ランバートギリシャリクガメ、レバントギリシャリクガメ、ニコルスキーギリシャリクガメなどの呼称で呼ばれています。

ムーアギリシャリクガメ(T.g.graeca

ギリシャリクガメの基亜種で、アルジェリアギリシャリクガメやグラエカ種という流通名があり、亜種の中では小型です。アルジェリア北部~モロッコ北東部、そして一部スペイン南部の山地に生息しています。アルジェリア北部~モロッコ北東部の個体は冬眠しません〔安川 2000,安川 2002,Ernst et al.1999〕。背甲のギリシャ織模様は成長に伴い不明瞭になり、暗~灰褐色を帯びる個体が多く(ブラックギリシャリクガメ)、縁甲板や臀甲板はフレアー状に外側へ張り出しません。しかし、亜種の中でも、大きさ、色彩もかなり違うため鑑別が難しく、さらに細かい亜種へと分類が分かれるかもしれない種類です。入手困難な亜種なため、価格がやや高価です。

ムーアギリシャリクガメ

コーカサスギリシャリクガメ(T.g.Iberia)

亜種の中で最も大型になる亜種で、トルコギリシャリクガメイベラ種という流通名があります。アゼルバイジャン、ロシア西部に生息し、最も寒さに強い亜種で、数ヵ月の冬眠をします〔安川 2000,安川2002〕。背甲のギリシャ織模様は多彩ですが、暗色の模様が多く入るようになり(ブラックギリシャリクガメ)、腹甲全体にも模様か多いです。縁甲板や臀甲板はフレアー状に張り出し、特にオスでは外縁は尖ることもあります。

アナムールギリシャリクガメ(T.g.anamurensis)

トルコ中南部の地中海沿岸性気候の低地に生息し、基本的に冬眠はしません〔安川 2000,安川 2002〕。大型の亜種で、背甲のギリシャ織模様は不規則で、全体が暗褐色になる個体が多いです(ブラックギリシャリクガメ)。

アナムールギリシャリクガメ

縁甲板や臀甲板はフレアー状に張り出し、背甲は上からみると台形のようです。

アラブギリシャリクガメ(T.g.terrestris)

テレストリスギリシャリクガメという別名もあり、亜種の中では小型で、全体的に丸みを帯びています。そして、背甲のギリシャ織模様が不明瞭になることも多く、全体が黄色あるいは黄褐色になり(イエローギリシャリクガメ/ゴールデンギリシャリクガメ)、ギリシャリクガメの中では、最も鑑別がしやすい亜種かもしれません。シリア、トルコ南西部、イラク北西部の、ステップ気候や地中海性気候の地域の乾燥した地域に生息し、ギリシャリクガメの中でも最も寒さに弱く、基本的に冬眠をしません〔安川 2000,安川2002〕。

背甲の縁甲板や臀甲板のフレアーが張り出しています。

アラブギリシャリクガメ

キレナイカギリシャリクガメ(T.g.cyrenaica)

キレーナギリシャリクガメとも呼ばれ、リビア北東部のキレナイカ高原に生息し、亜種の中では小型です。背甲はギリシャ織模様にはならずに、大小の不規則の暗色の模様が散らばっており、腹甲の模様も不規則に入り、一部連続しています。
キレナイカギリシャリクガメ キレナイカギリシャリクガメ

背甲の縁甲板や臀甲板のフレアーが張り出しています〔安川 2000,安川 2002〕。

キレナイカギリシャリクガメ

性質

基本的に神経質で、臆病なカメです。飼育することで人に応じない個体になることが多いです。

特徴

ギリシャ織姫模様の背甲

背甲は暗褐色で黄褐色のギリシャ織のような模様が入っていますが、亜種や個体群によって模様は不明瞭になり、かつ全体が黄色あるいは黒褐色になることもあります。

ギリシャリクガメ

亜種の鑑別が難しいため、甲羅が黄色を帯びるものをイエローギリシャリクガメ、黒褐色を帯びるものをブラックギリシャリクガメという単純な流通名で呼ばれることもあります。
ギリシャリクガメ 

フレアー

亜種によっては、背甲の縁甲板や臀甲板が張り出している(フレアー)ものもいます。

腹甲の蝶番

腹甲の各甲板に黒褐色のまだら模様が入ったりたり、変異が大きいです。

ギリシャリクガメ

全ての亜種に共通して腹甲に1つの蝶番があります。

蹴爪

後肢と尾の間にそれぞれ丸い突起状の鱗(蹴爪)があり、英名のSpur-thighed tortoise(トゲモモリクガメ)の由来になっています〔安川 2000,安川2002〕。

ギリシャのポイント

地中海沿岸にいる陸ガメ
・ギリシャ織模様の甲羅
・温和な性格
・亜種の鑑別は容易でない
・昼行性
・草食性
・腹甲の蝶番
・臀甲板は1枚
・大腿に突起状の鱗(蹴爪)

参考文献

  • 安川雄一郎.チチュウカイリクガメ属の分類.クリーパー.創刊号.クリーパー社.東京:p4-19.2000
  • 安川雄一郎.チチュウカイリクガメの分類.クリーパー13.クリーパー社.東京:p4-23.2002

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。