ドブネズミとファンシーラットの違い

亜種?別種?同種?

ペット化されたラットがファンシーラットですが、野生種であるドブネズミとはラットを含めて別の亜種でもなく同じに扱われています。しかしながら、野生のドブネズミとファンシーラットは明確な相違がいくつか存在します。

ファンシーラットはカラーが豊富

野生のドブネズミの毛色の大半は暗褐色(アグーチ)で、突然変異で変色した個体もいますが稀です。

ファンシーラットはホワイトやクリームなど何十種も存在し、ハスキーなどの模様も含めるとバリエーションは100種以上になります。

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ファンシーラットは穏やか

ドブネズミは野生動物なので警戒心が強いです。新しいエサにもすぐには受け入れず、光や音にも敏感に反応します。自然界では天敵となる猫などの捕食動物が多いこと、長い歴史の中で人が害獣であるドブネズミを根絶しようとする試みによって影響を受けたことがその理由です〔Inglis et al.1996,Barnett et al.1956,Barnett 2001,Taylor et al.1989〕。

ファンシーラットは穏やかで行動もおとなしく、飼い主に威嚇したり怒ってかみつくことも少ないです。光と音に対する反応も小さく、ドブネズミのように驚いたりしません。新しい餌に対してドブネズミほど慎重でなく、素直に受け入れます〔Modlinska et al.2016〕。

ファンシーラットは繁殖が簡単

ファンシーラットはドブネズミよりも早期に繁殖が可能で、より容易に交配もします〔Barnett 2002〕。

ファンシーラットは喧嘩の仕方も違う

ファンシーラットのケンカはドブネズミとは異なります。ドブネズミは喧嘩に負けると相手から逃げ出すが、ラットは腹を見せるかボクシングのような威嚇の姿勢をとります 〔Blanchard 1977〕。

ファンシーラットは体が小さくて可愛い

ファンシーラットはドブネズミと比べて体と顔は小さく、耳は大きくて、尾が長い特徴があります。

ファンシーラットは寿命が長い

ドブネズミの平均寿命が1年に満たないのに対し、ファンシーラットは2~3年の寿命です。ペットでは捕食者から保護されて、食餌、水、隠れ家、そして医療措置を得やすいことが理由です。

ファンシーラットの内臓が小さい

ファンシーラットはドブネズミよりも、脳、心臓、肝臓、腎臓、副腎が小さいです〔Barnett 2002〕。

参考文献

  • Barnett SA.Naming and Taming.The Story of Rats: Their Impact on Us,and Our Impact on Them. Australia: Allen. Unwin: p21–23.2002
  • Barnett SA.Behavior components in the feeding of wild and laboratory rats.Behavior9:24‐42.1956
  • Barnett SA.The story of rats.Their impact on us, and our impact on them.Crows Nest: Allen & Unwin.2001
  • Blanchard R,Carolineblanchard D. Aggressive behavior in the rat.Behavioral Biology21(2):197‐224.1977
  • Inglis IR,Shepherd DS,Smith P,Haynes PJ,Bull DS,Cowan DP et al.Foraging behaviour of wild rats (Rattus Norvegicus) towards new food and bait containers.Appl Anim Behav Sci. 47:175‐190.1996
  • Taylor RH,Thomas BW. Eradication of Norway Rats (Rattus Norvegicus) from Hawea Island,Fiordland,using Brodifacoum.New Zeal J Ecol12:23‐32.1989
  • Modlinska K,Stryjek R.Food Neophobia in Wild Rats (Rattus norvegicus) Inhabiting a Changeable Environment‐A Field Study. PLoS ONE11 (6):2016

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。