爬虫類の病気と飼育の関連性(まずは読んで)

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重要なことは3つ

飼育環境と温度と栄養の3つの要素が病気にさせないポイントになります。

飼育環境

ペットで爬虫類を飼育するとは、人工的な環境を再現することですが、飼育面積、温度や湿度、照明、風流や水流、設備等において非常に複雑な問題を抱えています。他の動物と同様に爬虫類も自発的に動くことができる空間を与えないといけませんが、必要に応じて自発的に隠れシュルターも必要です。実際の多くの爬虫類は行動範囲がとても広く、1日で数千㎞の範囲で行動するものもいます。行動も複雑で、昆虫食の小さな爬虫類では敏捷性も備え、速い速度で動く虫を何度も捕食します。活動量以外にも複雑な行動パターンも考慮しないといけません。そして、各爬虫類ともに生息場所および動物の姿勢に対応しなければいけません。グリーンイグアナでは太い木の上で幹や枝にしがみつく姿勢を好み、体形もそれに対応して、大きな太い尾と長い趾を備えています。ヘビは自分の体の長さより短い幅のケージの中では真っ直ぐに伸びる姿勢をとることができません。ヘビにはとぐろを巻いた大きさ3個分のケージ面積が最低必要とされていますが、直線状の姿勢は腸の蠕動に必要な姿勢でもあります。これまで様々な飼育書に記載されているケージの大きさやレイアウトは最低限なものなのかもしれません。

温度

爬虫類は外気温動物であり、体温を自ら調節できる哺乳類や鳥類と異なり、外気温に依存しています。つまり爬虫類は、それぞれの種類に適した至適環境温度域(POTZ:Preferred Optimum Tempetature Zone)内で飼育しないといけません。さらに爬虫類は適した温度を環境内で探し、それを得るための行動をとり、体温調節を行いますので、ケージ面積だけでなく、本来爬虫類が持つ特有の行動パターンも理解しなければなりません。至適環境温度域で体温が上がり、代謝が活発になり、消化器、呼吸器、泌尿器も正常に機能するわけです。免疫も上がるので、病気に抵抗する体になります。至適環境温度域の範囲以外で飼育することで、代謝も免疫も低下し、易感染を起こし、内臓疾患になりやすくなります。病気になる理論の一つに、身体の生理機能が上手く動かすことができない環境温度が優先的にあげられます。体温は上がりすぎてもよくなく、下げる環境も必要です。つまり、適切な温度勾配は健康維持のために必要不可欠なものです。

栄養

栄養とは毎日与える餌のことになります。餌の栄養のバランスが悪いと体の機能の変調を起こします。それぞれの爬虫類の食性を考えなければいけません。草食性、肉食性、昆虫食性、雑食性などに分けられますが、爬虫類によっては幼体と成体の時期で食性が異なったり、季節などで変わるものもいます。過酷な環境で生き抜いた爬虫類なので、餌を得るためにたくさんの特異性があります。もちろん餌を捕食するという行動も彼らにとって必要になり、生き餌を与えないといけないこともあります。

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病気にさせない心構え

爬虫類の病気は、哺乳類や鳥類と違い、微妙に判断できない症状として現れます。それが病気なのか?不適切な環境によるストレス行動なのか?種特有の行動なのか?病気であれば初期発見・初期治療ならびに飼育における初期対応が必要になります。爬虫類を飼うにはしっかりと爬虫類のことを分かっていないといけないのです。

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。