【医療】ウサギの避妊手術・去勢手術(どうする)

手術で悩む

ウサギは麻酔に弱いと言われています。外科手術を受ける際には、全身麻酔が必要です。ウサギでは胃切開毛球摘出手術、卵巣・子宮摘出手術ならびに避妊手術、精巣摘出手術ならびに去勢手術、膀胱結石摘出手術などがよく行われます。メスは子宮疾患は高齢になると多く見られ、多くのウサギが命を落としています。この問題がメスのウサギを飼育している飼い主さんにとって大きな問題になっています。手術をするならば3歳以内で行うと良いとされています。

オスは精巣腫瘍が高齢になると発生しますが、メスほどではありません。多くの方が複数で飼育する場合、マーキングによる尿飛ばし(尿スプレー)で困って手術を受けています。ウサギは麻酔で死にやすいといわれ、全身麻酔を安易に考えないで下さい。多くの方が悩んでいると思いますが、この記事で麻酔の死亡率、手術の流れ、金額、病院の選び方について解説をしますので、よく考えてから決断して下さい。

ウサギ麻酔

避妊・去勢手術を行うと、生殖に対するエネルギー消費が減り、性欲も薄れて運動量が減るために肥満になりやすいです。

メリットデメリット
繁殖が不可全身麻酔で死ぬこともある
異性と同居が可能費用ががかかる
性行動を阻止(尿スプレー)肥満になりやすい
卵巣・子宮疾患を予防尿失禁をしやすい
精巣腫瘍を予防
表:避妊・去勢手術のメリットとデメリット

避妊手術をしたメスは、尿失禁をしやすいと言われていますが、これは女性ホルモンが低下することで膀胱収縮が弱くなるからです。しかし、実際に尿失禁を起こしたウサギはほとんど見かけたことがありません。

麻酔の死亡率

健康な状態での麻酔の死亡率は、イヌ0.17%、ネコ0.24%、ウサギ1.39%と報告があります。つまり、犬の約8倍の危険性があります。ウサギの死亡率が高い理由は、これは犬や猫よりも体が小さい、ストレスで死にやすい等の多くのことが考えられます。最も注目することは、体調が悪い、何か病気をもっていると、ウサギの麻酔での死亡率は約10倍に高くなることです。ウサギは病気を隠す性質があり、見た目が元気でも病気をもっていることが多くみられます。麻酔での死因は呼吸器や循環器疾患といわれ、つまり肺炎や心不全があるかどうかが問題になります。麻酔前のウサギの体の状態を調べる検査を、麻酔前検査あるいは術前検査といいます。特に高齢のウサギであれば心臓検査を必ず受けてください。ウサギの麻酔での死亡率で興味ある報告があり、麻酔中(36%)よりも麻酔後(64%)の確率で死亡しているそうです。手術後の入院や管理も重要です。入院施設などもどのようになっているのか確認してみて下さい。

手術の流れ

手術前の2週間以内に検査を受けてください。検査を受けるかどうかは、費用の問題もあるので、飼い主としてのあなたが最終的に決めて下さい。

ウサギ

手術までの日は体調を整えてください。ケージの置き場所を変えたり、普段と違うエサを与えたり、遠出をしたりしないでください。もし検査で異常がでたら、治療をしたり、手術を延期します。手術の後に傷口をかじらないかも大きな問題です。ウサギによってはエリザベスカラーという物を装着します。

費用見積

手術費用は検査、麻酔、手術料、投薬料、入院費などセットの場合もありますし、手術費用だけを提示していることもあります。詳細は病院に問い合わせした方が良いでしょう。


ウサギの麻酔は予測できないことが起きます。肥満であると手術が難しくなったり、傷口をかんでしまったり、麻酔後に点滴が必要になったり、退院後の通院が必要になったりします。そうなると必然的に金額も変わってきます。例え金額が安くても、ウサギの状態が悪くなり、入院が長引いたり、通院が必要になると、金額は加算されます。


予測はだれもできませんが、執刀する獣医師とよく相談して、考えられる緊急事態もよく相談しておいて下さい。

病院の選び方

ここまで読むと、麻酔や手術が怖くなってくるかもしれませんが、ウサギのことをよく考えてから手術を決めてください。ネットやSNSを参考にしている方も多いと思いますが、Dr.ツルからすれば、事実と嘘が混在しています。ウサギそれぞれで、臆病である性格、暴れる性格、病気の可能性がある場合などで、処置の内容を省略したり、加算することもあります。飼い主であるあなたと執刀する獣医師で、すべての状況を予想してください。

インターネット

ウサギのストレスを考えると、近隣の動物病院がベストですが、手術は一生に一回です。信頼をおける獣医師をあなたが探しだし、そして手術経験が豊富な獣医師に執刀してもらうのが何よりも一番です。個人的な意見ですが、若手獣医師よりも熟練した年配の獣医師の法が良いと思います。


獣医師  ウサギ手術

これがポイント!

・100%安全な麻酔は絶対にない
・ウサギのストレスがどれくらいかかるのかがポイント
・隠れた病気があると麻酔での死亡率が高くなるので、麻酔前検査はするべき
・費用は手術費用だけなのか?検査や入院費まで含まれているのか?
・値段が安い病院が良いとはいえない
・信頼のおける獣医師、手術経験の豊富な獣医師を探す

参考文献

  • Brodbelt D.Perioperative mortality in small animal anaesthesia.Epub26.2008

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。