ファンシーラットの雌雄鑑別と繁殖(オスも子育て)

繁殖は簡単

ラットはマウスと同様に繁殖は簡単にできます。しかし、増えたらマウスと異なり、体が大きいので飼ってくれる人を探さないと大変なことになります。

雌雄鑑別

雌雄は生殖孔と肛門の距離で鑑別します。オスはメスと比べて、生殖孔と肛門の距離が長いです。成熟したオスは精巣が腫大し、陰囊が膨らみます。

メスは成熟後も鼠径輪が開いているために、陰嚢が膨らんでみえない時がありますので、注意して下さい。生殖孔からペニスが出るのは稀です。

メスはオスと比べて、生殖孔と肛門の距離が短いです。

繁殖

ラットは周年繁殖動物です。繁殖させることは意外と簡単ですが、生まれたラットのことをしっかりと考えてください。自分で飼えるのか?もし飼えないのであれば里親を探さなければなりません。

性成熟

性成熟は約60日齢で迎え、オスは精子が作れるようになり、メスは子をつくれる体になります。

発情

発情したオスは落ち着かなく動き、初期は陰嚢は僅かに腫れるくらいで、あまり分かりません。メスは4~5日間の性周期で発情します。実験動物のラットでは、メスの膣の細胞を顕微鏡で観察して(膣垢検査:スメア検査)、発情期を確認して交配に用います。

交配

交配はまずはお見合いからです。基本的にオスとメス1頭ずつで行いますが、メスにオスを引き合わせるには、まず発情しているメスのケージにオスを入れます。あるいは、オス同士以外は協調性もあるので、オス1頭と複数のメスのハーレム状態でも構いません。

ラット

約1週間ほど同居させれば普通は交尾が行われることが多いです。発情したオスは興奮して活発に動き回り、メスの外陰部の匂いをかいで、交尾をせまります。メスはオスを気にいると、ロードシス(Lordosis)と呼ばれる尾を上げた姿勢が見られます。これは交尾を許容しているのです。交尾はオスがメスの背中に回ってペニスを挿入します。交尾の成功の確認は、メスの陰部に膣栓がついているか否かで判定できます 。交尾後はオスとメスは一緒のケージでも構いません。

妊娠・出産

妊娠期間は21~23日です〔Baumans et al.2010〕。妊娠した子供の数によりますが、交尾後約15日くらいで、お腹が大きくなってきます。この時期に巣箱の用意をします。あるいは床敷を使って自ら巣穴を作ります。妊娠中のラットには栄養価の高いエサが必要になりますので、エサはヒマワリの種などのカロリーが高いものを加えてあげるとよいでしょう。

子育て

産子数は、3~18頭です〔Baumans et al.2010〕。新生子は未熟な状態の赤子で、目も耳も開いておらず、体温調節もできません。メスの乳首は6対の12個です。

ラット

子は最初は柔らかい餌で慣れさせ、離乳するようになったら徐々に固い餌に変えていきましょう。安心して子育てができるような環境や餌の管理を行ってください。出産後の母親は神経質になるため、ケージ内は暗くして静かにしましょう。

ラット幼体

集団で子育てをすることも可能で、他のメスは自分の子以外でも巣づくりし、子を巣に集め、保温したりグルーミングしたりするように世話をします〔Rosenblatt 1967〕。オスも子育てを手伝いますが、交配したことのなりオスでは子への攻撃をすることがあるので注意して下さい〔vom Saal FS et al.1982〕。子育ての間にストレスをかけたり、赤ちゃんに人の匂いがついたりすると、子食い(食殺)をすることが多いため、出産したら、掃除や床敷の交換なども最小限にしましょう。

これがポイント!

  • 生殖孔と肛門の距離で雌雄を鑑別する
  • 1年中繁殖する周年繁殖動物
  • 繁殖は簡単
  • 性成熟は約60日齢
  • メスは4~5日間で発情を繰り変えす
  • オスも子育てを手伝う
性成熟約60日齢
繁殖形式周年繁殖 発情周期4-5日
妊娠期間21-23日
産子数3-18頭
離乳約21日齢
表:繁殖知識

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参考文献

  • Baumans V.The Laboratory mouse.In The UFAW handbook on the care and management of laboratory and other research animals.Universities Federation for Animal Welfare.8th ed.Hubrecht R, Kirkwood J.eds.Wiley-Blackwell.Oxford. UK.2010
  • John K.Animals in Person: Cultural Perspectives on Human-animal Intimacy. Berg Publishers:p131.2005
  • Rosenblatt JS. Nonhormonal basis of maternal behavior in the rat. Science. 156 (3781):1512-1514.1967
  • vom Saal FS,Howard LS.The regulation of infanticide and parental behavior: implications for reproductive success in male mice.Science215 (4537):1270-1272.1982
  • 石橋正彦,高橋寿太郎,菅原七郎,安田泰久編. 実験動物学.ラット.講談社.東京:p66.1984

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。