ハムスターの雌雄鑑別と繁殖(簡単に増えちゃう)

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雌雄鑑別

ハムスターの雌雄は生殖孔(包皮の開口部)と肛門の距離で鑑別をします。

ハムスター雌雄 ハムスター雌雄

オスはメスと比べて生殖孔と肛門の距離が長いです。成熟したオスは精巣が大きくなり陰囊が膨らむので、お尻が膨らんで見えますので容易に判断できます。しかし、オスは成熟後も鼠径輪が開いているために、精巣が腹腔内に移動して陰嚢が膨らんで見えない時がありますので、分からなくなることがあります。

ハムスターオスの陰部

成熟したオスは臭腺が発達してきます。

ハムスター臭腺

メスは生殖孔(外陰部)と肛門の距離が短く、生殖孔は小さな溝になっています。

ハムスターメスの陰部

繁殖

ハムスターは1年中繁殖ができる周年繁殖動物ですが、繁殖に適しているのは過ごしやすい春と秋です。繁殖させることは意外と簡単ですが、生まれたハムスターのことをしっかりと考えて下さい。自分で飼えるのか?もし飼えないのであれば里親を探さなければなりません。

種類が異なるハムスター同士は繁殖できません。しかし、種類的に近縁であるジャンガリアンハムスターとキャンベルハムスターは交雑種が可能ですが、遺伝的に弱いハムスターが生まれてくるので、極力避けて下さい。

ハムスターの中には劣勢致死遺伝子を持った毛色や毛様がいるため、同じもの同士の交配は避けて下さい。

種類カラー
ゴールデンハムスターライトグレー、ドミノ、ドミナントスポット、ダルメシアン、サテン
ジャンガリアンハムスターパール、プディング、インペリアル
キャンベルハムスターパイド
表:劣勢致死遺伝子を持つ毛色と模様

性成熟

オスは性的な成熟を迎えると精子が作れるようになります。メスは子供をつくれる体になります。

発情

発情したオスはそわそわと落ち着かなく動き、臭腺が目立ってきます。オスのゴールデンハムスターでは、脇腹の臭腺からの分泌物で周囲の毛が濡れていることもあります。陰嚢は大きくなった精巣のために膨らんでいます。

ハムスター精巣

メスは4~5日間の周期で繰りかえして発情します。排卵した後に外陰部から黄白色の膿性物質が分泌されますが〔Bivin et al.1987〕、これを膿と間違わないようにして下さい。しかし、多くのハムスターは舐めてしまうため、気づくことはまれです。

ハムスターメスの悪露

交配

交配はまずはお見合いからです。基本的にオスとメス1頭ずつで行いますが、雌雄での相性の選択が難しく、相性が悪ければすぐに喧嘩が始まります。メスにオスを引き合わせるには、まず発情しているメスのケージにオスを入れます。発情したオスは興奮して活発に動き回り、臭腺の臭いでメスを引きよせるために、さかんに臭腺をケージにこすりつける行動が見られます。メスを同じケージに入れると外陰部の匂いをかいで、交尾をせまります。

ハムスター交尾

メスはオスを気に入ると、ロードシス(Lordosis)と呼ばれる尾を上げた姿勢がします。これは交尾を許容しているのです。交尾はオスがメスの背中に回ってペニスを挿入し、交尾は20〜60分間行われます〔Lipman et al.1996〕。

ハムスター交尾

交尾の成功の確認は、メスの陰部に膣栓がついているか否かで判定できます 。

交尾をしない場合は別の日にお見合いからさせて下さい。相性が悪い場合はペアの組み合わせに変えます。交尾後はオスとメスは別々のケージに戻します。

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妊娠・出産

妊娠した子の数によりますが、後半になるとお腹が大きくなってきます。この時期に巣箱の用意をします。床材を与えると自ら巣穴を作ります(営巣行動)。

ハムスター赤ちゃん


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妊娠中のハムスターには栄養価の高い餌が必要になりますので、餌はヒマワリの種などのカロリーが高いものを加えてあげるとよいでしょう。

新生子・子育て

新生子は未熟な状態の赤子で、目も耳も開いておらず、体温調節もできません。

最初は柔らかい餌で慣れさせ、離乳するようになったら徐々に固い餌に変えていきましょう。ゴールデンハムスターは7〜10日齢で野菜や種子などの固形物を食べ始め〔Balk et al.1987〕、約21日齢で離乳します〔Poiley1972〕。

子育ては母親だけで行いますので、安心して子育てができるような環境や餌の管理を行って下さい。出産後は神経質になるため、ケージ内は暗くして静かにしましょう。子育ての間にス トレスをかけたり、子に人の匂いが付いたりすると、子食い(食殺)をすることが多いため、出産したら、掃除や床敷の交換なども最小限にします。

ハムスター子食い

離乳後は親子を別々のケージに分けて下さい。ゴールデンハムスターは基本的に単独で飼育しないと、たとえ親子の血縁関係があっても喧嘩をします。ジャンガリアンやキャンベルハムスターは相性次第で一緒にできます。ロボロフスキハムスターは集団で生活しているので、一緒にしても問題ありません。

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これがポイント!

・ハムスターの雌雄の鑑別は成体になれば簡単
・オスは陰嚢が大きい
・メスは発情の一時期に陰部から膿みたいな物を出す
・毛色によって繁殖しにくい品種がいる(劣勢致死遺伝子)
・多産なので、繁殖は計画的にする

種類ゴールデンハムスタージャンガリアンハムスター
性成熟45-60日齢Whittaker 201045-60日齢Whittaker 2010
発情形式周年繁殖
発情周期4-5日
Whittaker 2010周年繁殖
発情周期4-5日
Whittaker 2010
妊娠期間約16日Whittaker 2010約18日Whittaker 2010
産子数約6頭Whittaker 2010約3.2頭Whittaker 2010
出生時体重2~3gBiven et al.19891.8gPogosianz et al.1967
切歯萌出 1日齢Balk et al.1987 0日齢Pogosianz et al.1967
開眼4~5日齢 Balk et al.1987  3~4日齢Pogosianz et al.1967 
開耳14~16日齢Balk et al.198710日齢Pogosianz et al.1967
固形食開始7~10日齢Balk et al.198710日齢Pogosianz et al.1967
離乳約21日齢Whittaker 201016~20日齢Pogosianz et al.1967
離乳時体重35~40gBalk et al.1987約23gPogosianz et al.1967
表:ハムスターの繁殖知識

参考文献

  • Balk MW,Slater GM.Care and management,In Laboratory Hamsters,Van Hoosier,Jr.GL McPherson,CW eds.Academic Press.Orlando.Florida:p63‐64.1987
  • Bivin WS,Olsen GH,Murray KA.Morphophsiology.In Laboratory Hamster.Hossier GL Jr,MacPherson CW.eds.Academic Press.Orlando.Florida:p10-42.1987
  • Lipman NS,Foltz C Hamster.In Handbook of rodent and rabbit medicine.Laber-Laird.Swindle HM,Flecknell P.eds.Elsevier Science.Tarrytown.NY:p59-90.1996
  • Poiley SM.Growth tables for 66 strains and stocks of laboratory animals.Lab.Anim.Sci22:759–779.1972
  • Pogosianz HE,Sokova OL.Maintaining and breeding of the Djungarian hamster under laboratory conditions.Zeit. Versuchtier9:292–297.1967
  • Whittaker D.The Syrian hamster.In UFAW Handbook on the Care and. Management of Laboratory Animals,Eighth Ed.Wiley-Blackwell.Oxford.UK:p348-358.2010

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。