なぜモルモットが実験動物で使われるのか?専門獣医師解説!

目次 [非表示]

実験動物の代名詞

モルモットというとマウスやラット、ウサギ以上に実験動物の代名詞といったイメージが強く、実際に様々な研究分野で活用しています。実験で使用される理由は、モルモットは動物個体の生産性が高く、人の解剖生理ならびに研究対象疾病が人の病態と類似するという特異的な理由があるからです。

ばんばん増えて実験に使いやすい

生産性が高いとは効率がよい繁殖力を指しています。妊娠期間はウサギの約2倍も要ししますが、出生した子の成長速度はウサギよりずっと早く、生後数日から自ら餌を摂取し、2ヵ月もすると成体になります。さらにメスは1年で2~3回の出産も可能で、1回で2~4頭も生まれます。さらにモルモットはマウスやラットよりも身体が大きく、一方ウサギよりは小さいために飼育がしやすいことも重宝されています〔Coates 1975〕。

体の特性が人に似ている

身体の生理的特徴として最も有名なのは、人と同じくL-グロノラクトンオキシダーゼを欠くため、体内でビタミンCを合成できずに、エサから摂取しなくてはならないことです。この特徴のために、創傷治癒、骨リモデリング、アテローム性動脈硬化に関与するコラーゲン生合成(ビタミンCが関与)の研究に使用されています〔Barnes 1975〕。モルモットの呼吸器系はアレルゲンに敏感であるため、喘息の研究に役立ち、他の哺乳類と比べて容易かつ強力にアナフィラキシー反応を示します〔Lucarini et al.2014〕。モルモットの耳の構造は人に類似し、多くの聴覚の研究に使用されています〔Böhmer 1988〕。皮膚が敏感で弱いことから、皮膚感受性によるアレルギー性皮膚反応検査、いわゆる化粧品関連の実験にモルモットは適しています〔Basketter  et al.2010〕。感染症にも罹患しやすく、免疫系が人と類似しているため、結核菌などの感染症の実験モデルにもなっています。まさに実験動物として適切なことがよく分かります。

モルモットのビタミンCサプリメントの解説とお薦め商品はコチラ!

参考文献

■Basketter DA,Kimber I.Skin sensitization,false positives and false negatives: experience with guinea pig assays.J Appl Toxicol30:381–386.2010
■Barnes MJ.Function of ascorbic acid in collagen metabolism.Ann NY Acad Sci258:264–277.1975
■Böhmer A.The Preyer reflex—an easy estimate of hearing function in guinea pigs.Acta Otolaryngol106:368–372.1988
■Coates ME.Gnotobiotic animals in research:their uses and limitations.Lab Anim9:275–282.1975
■Lucarini L et al.Poly(ADP-ribose) polymerase inhibition with HYDAMTIQ reduces allergen-induced asthma-like reaction,bronchial hyper-reactivity and airway remodelling.J Cell Mol Med.2014

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。