モルモットの雌雄鑑別と繁殖(どんどん増える)

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あっという間に大人

モルモットの繁殖は乱婚性で、雌雄を含めた複数を同居させると、いつのまにかメスは出産して子が増えてしまいます。またモルモットは成長が早いため、メスでは約2ヵ月で成熟することもあり、早めにオスとメスを分けて飼わないと繁殖します。この繁殖力から原産地では食肉用の家畜に使われています。

成熟するのにもあまり時間がかかりません。この成長の早さから、実験動物としても生産性が高いことから、数多く使われているのです。

雌雄鑑別

モルモットの雌雄鑑別は他のげっ歯類よりも難しいです。その理由は生殖孔と肛門の距離の差が少ないからです。雌雄鑑別は下のイラストのように解説されていますが、正直よく分からないですよね!

その理由は生殖孔(突起)は雄雌ともに丸い突起で、肛門も直線状に見えて分かりにくいからです。外陰部を広げて確認するのがポイントとなります。

メス

メスの外陰部はY字の浅い溝が見られます(膣溝)。

外陰部を広げて見て下さい。丸い生殖孔にも膣の開口部の孔が確認されます。

オス

オスは丸い生殖孔がメスよりも大きいです。

外陰部を広げて、生殖孔に圧力をかければペニスが出てきます。オスは明確な陰嚢がなく、鼠径輪が閉じていないため、陰嚢はわずかに膨らみます。

モルのおちんちんの事も書いてある!

どうぶつのおちんちん学.緑書房

繁殖

モルモットは1年中繁殖ができる周年繁殖動物ですが、繁殖に適しているのは過ごしやすい春と秋です。繁殖させることは意外と簡単ですが、生まれたモルモットのことをしっかりと考えて下さい。自分で飼えるのか?もし飼えないのであれば里親を探さなければなりません。モルモットは7~8ヵ月齢以降に最初の交配を行うと恥骨分離が起こりにくくなり、胎子が通過するのに必要な2~3cmの開口が不可になるため、難産になりやすくなります。メスの最初の交尾は6ヵ月齢以内が好ましいでしょう〔Harkness et al.1995〕。しかしながら、実際に難産になることは少なく、メスの繁殖可能年齢は、4~5歳までです。

性成熟

性成熟についての多くの報告をまとめると、メスでは21~56日齢、オス28~84日齢であるす〔Weir 1974,Richardson 2000,Carpenter et al.1996〕。しかし、しっかりとした体でないと繁殖が上手くいかないので、3ヵ月齢以降になってから繁殖に使うとよい、あるいはメスでの体重が 450~ 600gにまで成長した方が交尾が最も成功すると言われています〔Ediger 1976〕。

発情

発情したメスは15~17日周期で、1~1.5日の発情期を迎えます〔Manning et al.1984〕。発情すると、外陰部は赤色を帯びてわずかに腫大しますが、分かりにくいです。なお、メスの膣は発情期にだけ開口し、それ以外の時他期は膣閉塞膜により閉鎖しています〔Carpenter et al.1996〕。発情は24~48時間持続しますが、オスを許容するのは6~11時間程度です〔Hillyer et al 1997,Richardson 2000〕。

交配

交配はお見合いからです。本来は1頭のオスに対して1~10頭のメスを同居させてハーレム状態にするとよいのです〔Harkness et al.1995,Guide for the Care and Use of laboratory Animal 1985〕。しかし、オスとメス1頭ずつで行う場合は、雌雄での相性の選択が難しく、相性が悪ければすぐにケンカが始まります。

モルモット繁殖

まずは、それぞれのケージを並べて、お互いの匂いをかがせて存在を意識させます。発情したオスは、メスのモルモットを追いかけまわし、臭いをかぐ動作を示し、後肢や臀部を振りながら(ルンバ :Rumba)、「グルルルル」「プルルルル」と喉の奥から低い特徴的な声を出します。メスの発情行動は特徴的で、発情期以外はオスを許容せず、後肢で蹴りとばし、メスはオスを気にいると、ロードシス(Lordosis)と呼ばれる尾を上げた姿勢が見られます。これは交尾を許容しているのです。交尾はオスがメスの背中に回ってペニスを挿入し、腰を動かして射精します。交尾が成功しているかの確認は、メスの陰部に膣栓がついているか否かで判定できます 。交尾後24~48時間で膣から自然に落ちてなくなります〔Flecknell 2002〕。なお、モルモットのメスは発情期以外は膣口を覆う膜が形成され(膣閉鎖膜)、発情前日に膜が破れて開口します〔Carpenter et al.1996〕膣栓が落ちた後は、分娩期に入るまでは膣口が膣閉塞膜により再び閉鎖された状態になります。交尾をしない場合は別の日に再び行って下さい。相性が悪い場合はペアの組み合わせを変えます。

モルモット

妊娠・出産

妊娠期間は63~72日と、他のげっ歯類と比較して長いです〔Kaiser et al.1986〕。お腹の中で子を大きく育ててから出産するというシステムをとっているのです。妊娠診断は動物病院で、触診、X線検査や超音波検査で行います。

妊娠した子の数によりますが、後半になるとお腹が大きくなってきます。この時期に巣箱の用意をします。妊娠中のモルモットには栄養価の高い餌が必要になりますので、ペレットは繁殖期用のものに変えるとよいでしょう。産子数は、1~7頭です〔Kaiser et al.1986〕。

新生子・子育て

新生仔は出産直後から既に目が開き、永久歯も生えています。自立が早く、生後1時間以内に歩行を始めます。

新生子の体重は85~100g で〔Ediger 1976,Sisk 1976,Apgar et al.1991a〕、体重 50g未満で生まれた子は生存の可能性が低いです〔Ediger 1976〕。

新生子は母親から10~14日間授乳されながら、既に歯も生えているので、生まれた直後の新生子でも柔らかいエサなら食べ始めます〔Ediger 1976〕。餌は柔らかい物、つまり野菜やふやかしたペレットなら食べれます。なお、モルモットは食物に対しての刷り込み形成が早いため、幼体時には単一のものだけを与えるのではなく、様々な食材を給餌するように心掛けて下さい。モルモットの母親は子育てが得意ではないため、子が積極的に母乳を求める姿が見られます。なお、集団飼育の場合は、泌乳中であれば他のメスの子にも授乳することもあります。また、子は約2週齢にならないと自発的な排尿ができないため、母親は新生子の陰部を舐めなければなりません。

消化機能が完全に発達するの少し時間かかりますので、完全な離乳は体重が約 250 g になる生後 21日です 〔Ediger 1976〕。

モルモット子育て

子育ては母モルモットだけで行いますので、安心して子育てができるような環境や食事の管理を行ってください。出産後は神経質になるため、ケージ内は暗くして、静かにしましょう。モルモットは出産後10~12時間で排卵が始まり、妊娠することができます(後分娩発情)。しかし、この時点で妊娠させることは負担になります。出産直後にケージ内にオスを入れないで下さい。

性成熟オス 約70日齢 メス 30- 45日齢〔Carpenter et al.1996〕
繁殖形式周年繁殖
発情周期 15-17日(13-21日)発情期 1-1.5日〔Manning et al.1984〕
妊娠期間63-72日〔Kaiser et al.1986〕
産子数1-7頭〔Kaiser et al.1986〕
離乳約21日齢〔Kaiser et al.1986〕
表:モルモットの繁殖知識

これがポイント!

・雌雄鑑別は難しい
・繁殖は簡単
・妊娠期間は63-720日
・赤ちゃんなのに毛が生えて自分で動ける
・出産半日後で妊娠できる

参考文献

  • Apgar J,Everett GA.The guinea pig as a model for effects of maternal nutrition on pregnancy outcome.Nutr.Res11:929–939.1991
  • Carpenter JW,Mashima TY,Rupiper DJ eds.Exotic Animal Formulary 2nd ed.WB Saunders.Philadelphia.1996
  • Ediger RD.Care and management.In Biology of the Guinea Pig,Wagner JE,Manning PJ.eds.Academic Press.New York:p5–12.1976
  • Guide for the Care and Use of laboratory Animal.U.S.Department of health,Education and Welfare.Public Health Service.NIH.1985
  • Harkness JE,Wagner JE.The Biology and Medicine of Rabbits and Rodents,4th ed.Williams&Wilkins. Baitimore.1995
  • Hillyer EV,Quesenberry KE,Donnelly TM,Biology,Husbandry,and Clinical Techniques.Guinea Pig and Chinchillas.In Ferrets,Rabbits,and Rodents.ClinicalMedicineand Surgery.Hillyer EV,Quesenberry KE eds.WB Saunders. Philadelphia:p243-259.1997
  • Kaiser S,Kruger C,Sachser N.The guinea pig.In The UFAW Handbook on the Care&Managment of Laboratory Animals 6th ed.Poole TB ed.Longman Scientific &Technical.UK:p380-398.1986
  • Richardson VCG.Library of Veterinary Practice.Disease of Domestic Guinea Pigs.2nd ed.Blackwell Science Ltd.2000
  • Slade LM,Hintz HF.Comparison of digestion in horses,ponies,rabbits and guinea pigs. Journal of Animal Science 28:842-843.1969
  • Sisk DB.Physiology.In Biology of the Guinea Pig,Wagner JE,Manning PJ eds.Academic Press.New York:p63‐98.1976
  • Weir BJ.Notes on the orgin of the domestic guinea-pig.Symp Zool Soc Lond34:37-44.1974

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。