◎ウサギの耳掃除

健常なウサギに耳掃除は必ずしも必要ではありません。耳垢が蓄積しやすい一部のウサギに限って行われます。耳垢が蓄積したウサギは後肢で耳根部をかく姿が頻繁に見られます。

耳の解剖

解剖学的に、耳の外側から鼓膜までの外耳、鼓膜から耳管部分の中耳、蝸牛や三半規管の内耳の3つに分けられます。ウサギの外耳道は、耳買介から垂直に降りて、その後鼓膜に向かってL字にほぼ水平耳道に移行して鼓膜に至りますが、この水平耳道に耳垢が溜まりやすい構造をしています。

耳疾患

外耳炎

外耳道の炎症を起こすと頭を左右に振る・耳を掻くようになります。耳介の目視できると白やクリーム色の耳垢も増えて、耳道も炎症を起こし、赤くなっています。

原因が耳ダニの場合、さらに強い掻痒が見られます。

【病気】ウサギのダニ・ノミの解説はコチラ

中耳炎

中耳炎だけにみられる目立った症状はありません。外耳炎からの波及で鼓膜が破れて中耳炎が起こるか、耳管を介してスナッフルなどの原因菌が波及します。

内耳炎

中耳炎が内耳にまで及ぶと内耳炎を発症します。内耳の平衡感覚を司る三半規管に影響が出て斜頸や眼振が見られます。内耳炎は脳に近いため、脳炎や髄膜炎へと進行する危険性もあります。

耳掃除対象

うウサギは前肢をつかって自ら耳掃除をおきないます。しかし、垂れ耳のウサギは立ち耳よりも耳垢がたまりやすいです。高齢や肥満、病気、障害のために上手く耳掃除ができないウサギも同様で、特に体を自由に動かすことができず、自力で耳掃除ができない場合は定期的な耳掃除が必要です。

掃除方法

水や専用のイヤークリーナーで湿らせたコットンで耳介の目視できる耳道のまわりをやさしく拭くことに留めて下さい。耳かきや綿棒で耳垢をとろうとすると、かえって耳垢を押し込んで鼓膜を破ったり、ウサギが暴れて耳の中を傷つけてしまったりする可能性があります。洗浄液が耳の中に入ると、犬や猫のように全てを回収できない特徴もあります。そのため、ウサギを保定して耳道の奥の耳垢を取り除く耳掃除は、動物病院で行うことをお薦めします。

イヤークリーナーの選び方

犬や猫用のイヤークリーナーであっても、ウサギの耳道粘膜はデリケートなために、使用する場合は注意が必要なことがあります。アルコールなどの成分は刺激が強いため、かえって炎症を起こうこともあります。可能であればウサギ専用の製品を選ぶべきです。

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この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。