リチャードソンジリスってどんな動物?│知らないといけない生態と特徴

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ミニプレーリードッグであるリチャードソンジリス

ジリスはネズミ目リス科に属する地上生のリスの仲間です。俗称としてアメリカやアフリカ大陸に生息する種類はジリス、ユーラシア大陸に生息する種類はハタリスと呼ばれています。種類によって毛色は異なり、鮮やかな赤茶色~灰色など様々です。現在、本邦で飼育されている種類はリチャードソンジリスが多く、その他にジュウサンセンジリス、ホシジリス、コロンビアジリス、ダウリアハタリスなどがペットで飼われていました。

表 ジリスの分類

ネズミ(げっ歯)目リス科Urocitellus属リチャードソンジリス
コロンビアジリス
ベルディングジリス
Ictidomys属ジュウサンセンボンジリス
Xerospermophilus属ホシジリス
Spermophilusヨーロッパハタリス
ダウリアハタリス

ホシジリス

ホシジリス
ダウリアハタリス

コロンビアジリス

ジリスはプレーリードッグと異なり、単独生活をするものが多く、食性は草食傾向の強い雑食性です。なお、冬眠する種類が多いことも特徴です。ジリスはプレーリードッグの半分くらいのサイズで、ペットショップでミニプレーリードッグという名前で販売されていることがありますが、プレーリードッグの一種ではありません。性格や飼育方法も同じような面もあれば、独自のものもあります。リチャードソンジリスは個体数が多く、プレーリードッグによく似ており、なおかつ輸入が許可されている動物なために、飼育される機会が増えています。

スコットランドの博物学者の、ジョン・リチャードソンによって発見されたことから命名されました。

分類・生態

分類

ネズミ目(げっ歯目)リス科Urocitellus属
学名Urocitellus richardsonii
英名:Richardson’s ground squirrel

分布

北アメリカ大陸中西部(南はテキサス州 から北はアメリカ合衆国とカナダとの国境付近まで)

リチャードソンジリス分布図

身体

頭胴:オス 30.7(28.3~33.7)cm、メス 29.1(26.4~31.8)cm〔Smithsonian’s National Museum of Natural History〕
尾長:オス 6.5~8.8cm、メス 5.5~8.2cm〔Smithsonian’s National Museum of Natural History〕
体重:オス 290~745g、メス 120~590g〔Smithsonian’s National Museum of Natural History〕
毛色:背中は茶色~淡黄褐色と多様で、褐色を帯びた黒色の毛が霜降り状に入ります。お腹は白色を帯びた淡黄褐色で、尾は白色や淡黄褐色で縁取られています。

 

https://youtube.com/watch?v=I5ef3G0ArwY%3Frel%3D0%26start%3D3

生態

環境:グレートプレーンズと呼ばれる草原地帯で、乾燥した気候をしています。
行動
・昼行性で、巣穴を掘って生活をしています。巣穴は最大で長さ10m、深さ25-75cmのトンネルといくつかの巣室、出入口からなります〔大野ら 2000〕。
・オスは単独生活、メスは近親同士で社会性を持つといわれていますが、プレーリードッグのようにオス1頭に対して3~4頭のメスとそれらの子供から構成されるコテリーをつくることもあります〔Goodwin et al.2005, Michener 2002〕。
・リチャードソンジリスは冬眠をし、1年のうち6~8ヵ月間を地下巣で過ごします〔Goodwin et al.2005,Michener 2002〕。成体は6月から、その年に生まれた子は遅れて8~10月頃から冬眠を開始します。オスは翌年3~4月、2~3週間後にメスが冬眠から目覚めます。冬眠前の4〜6週間前から、乾いた草などの営巣材料を集めて冬眠の準備を行います。


・地下の巣は最大で長さ10m、深さ25~75cmのトンネルといくつかの巣室、出入口からなります。
食性:草食性で、植物の葉、茎、根、実や種子、時に草についていた昆虫などを食べています。
寿命:5~7年

習性・性格

臆病で神経質

性格は個体によってずいぶんと差があるのも特徴です。群れで生活をする社会性豊かなプレーリードッグとは違って、単独行動をするリチャードソンジリスは、臆病で神経質な面もあり、人に馴れるもやや時間がかかります。

潜る

巣穴を掘るために、床を掘ったり、潜る習性があります。そして物を齧る習性も強く、よくケージや部屋の中で様々な物が壊されることがあるので注意して下さい。プレーリードッグよりもかなり野性味があり、活動的で起きている時間はほとんど動き回っています。

フリッカーテール

縄ばりに天敵が侵入すると、尾を上にもち上げて振る威嚇行為が見られ、警戒時に尾を振るしぐさから、英語ではフリッカーテール(flickertail)と呼ばれています。アメリカのノースダコタ州は、リチャードソンジリスが多く生息していることから、州名の愛称としてフリッカーテール州と呼ばれています。

https://youtube.com/watch?v=FKJEQTT1mV8%3Frel%3D0%26start%3D25

アラームコール

天敵を威嚇したり、嫌なことをされたり、嫌いな人が近づくと、「キーキー」と鳴きさけびます。これは警戒音(アラームコール:Alarm call)と呼ばれ、群れの中で天敵が進入した際に、仲間に危険を知らせるためです。
https://www.youtube.com/embed/8r7jx2b_NJQ?rel=0&start=3

冬眠

冬眠が長いのも特徴で、毎年7月頃から脂肪を蓄えて冬眠に入り、3月頃に覚醒します〔Goodwin et al.2005, Michener 2002〕。冬眠をする前に脂肪を蓄えるのも特徴で、肥満になります。飼育下で冬眠させなくても、秋以降になると、多くは太ります。ジリスの冬眠は外気温の低下が大きく影響しますが、冬前に豊富なエサが入手できた個体は冬眠期間が長くなります〔Goldberg et al.2021〕。

特徴

寸胴短足

地上ないし巣穴で生活をするため、体は寸胴で手足も短いです。耳は小さく、体に密着しています。地下の巣に容易に潜れるためです。

指の数は四肢ともに5本で、地面を掘るために鋭く長い鉤爪が特徴です。

小さい頬袋

一対の小さい頬袋が口の中の両脇に持っています。

肛門腺

興奮すると肛門周囲の3本の肛門腺を突出させ、分泌物を放散しますが、人がこの臭いを悪臭だと感じることはあまりありません。

常生歯

歯は前歯と奥歯があり、全部で22本で、特に前歯は大きくて鋭く、硬いものもかじります。前歯は常生歯で 、生涯にわたり伸び続けますが、奥歯は伸びません。前歯の表面は黄褐色をしていますが、これは虫歯ではなく、体内のミネラルが沈着しているからです。

雌雄鑑別

オスは生殖孔(包皮)と肛門の距離が、メスと比較して長いです。発情期になると陰嚢が膨らみますが、非発情期は分かりにくいです。

メスは生殖孔(外陰部)と肛門の距離が、オスと比較して短いです。発情期になると外陰部が腫脹しますが、非発情期は分かりにくいです。

繁殖

性成熟は約1年を要し、季節繁殖動物で年に1回繁殖します。冬眠から覚めた後の4~5月の2~3週の繁殖期において、オス同士で激しい縄張り争いが起こり、オスよりも遅くに冬眠から覚めるメスは覚醒後の3~5日目に2~3時間の発情期が見られ、オスと地下巣で交尾をします〔Michener 2005,Michener 1993,Richard 2012〕。妊娠期間は22~23日間で、産子数は3~11頭です〔Richard 2012〕。乳頭は4対(8個)あります。子は28~30日齢まで地下巣で過ごし、地上に現れるようになってから1~2週で離乳します。

表:繁殖知識〔Richard et al.2012〕

性成熟約1年
繁殖形式季節繁殖(冬眠後の4-5月)
発情期間 2-3週間
妊娠期間22-23日
産子数3-11頭
離乳約6週齢

これがポイント!

・プレーリードッグの小型のジリス
・基本は単独生活者
・昼行性、草食動物
・馴れるのに時間がかかる
・尻尾をフリフリと振る動作をする
・秋以降になると脂肪が付いて太る
・冬眠をする
・前歯のみが伸び続ける常生歯

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参考文献
■Goldberg AR,Conway CJ.Hibernation behavior of a federally threatened ground squirrel:climate change and habitat selection implications.Journal of Mammalogy102(2).p574–587.2021
■Goodwin HT,GR Michener,Gonzalez D,Rinaldi CE.Hibernation is recorded in lower incisors of Recent and fossil ground squirrels(Spermophilus).Journal of Mammalogy. 86. p323-332.2005
■Koford CB.Prairie dogs,whitefaces,and blue grama. Wildlife Monographs 3.The Wildlife Society.Washington DC.p78.1958
■Michener GR.Seasonal use of subterranean sleep and hibernation sites by adult female Richardson’s ground squirrels.Journal of Mammalogy83.p999-1012.2002
■Michener GR.Limits on egg predation by Richardson’s ground squirrels. Canadian Journal of Zoology, 83: 1030-1037.2005
■Michener GR.Sexual differences in hibernaculum contents of Richardson’s ground squirrels: males store food. pp. 109-118 in Life in the Cold: Ecological,physiological,and molecular mechanisms.Carey C.et al.eds.Westview Press.Boulder.1993
■Smithsonian’s National Museum of Natural History:Richardson’s Ground Squirrel:https://eol.org/pages/327848/articles
■Richard W.Thorington,Jr.Squirrels of the World.Johns Hopkins University Press.2012
■大野瑞絵、三輪恭嗣編 .ザ・プレーリードッグ&ジリス―食事・住まい・接し方・医学がわかる.誠文堂新光社.東京.2010

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。