マウスの雄雌鑑別と繁殖(20日で繁殖するハツカネズ)

あっという間に増える

マウスの繁殖力は強く、オリジナルのハツカネズミの名前の通りに、交尾してから約20日で子供を産みます。ネズミ算ともいわれるほど強い繁殖力です。寿命は短いものの、生後出産可能な時期が他の動物に比べて早く、一度に出産する子供の数も多いのも特徴です。8~10週齢で妊娠が可能となり、妊娠期間も約20日と短く、1回の出産で6~10頭も子供が生まれてきます。年間の妊娠は6~10回となることもあり、つまり1年間では、最大2000頭を超えることになります。

雄雌鑑別

雌雄は生殖孔と肛門の距離で鑑別します。オスはメスと比べてして、生殖孔 (包皮の出口) と肛門の距離が長いです。成熟したオスは精巣が大きくなり、陰囊が膨らむことでも容易に判断できます。

オスは成熟後も鼠径輪が開いているために、陰嚢が膨らんで見えない時がありますので、注意して下さい。生殖孔 (包皮の出口) からペニスが出ることは稀です。

メスはオスと比べてして、生殖孔と肛門の距離が短いです。

繁殖

マウスは1年中いつでも繁殖することが可能である周年繁殖動物です。

性成熟

性的な成熟は8~10週齢で迎え、オスは精子が作れるようになり、メスは子供をつくれる体になります。

発情

発情したオスはそわそわと落ち着かなく動きまわり、陰嚢は僅かに腫れるくらいで、あまり分かりません。
メスは4~5日間周期で繰りかえして発情します。実験動物のメスのマウスでは、膣の細胞を顕微鏡で観察して (膣垢検査、スメア検査)、発情期を確認して交配に用います。

交配

交配はまずはお見合いからです。基本的にオスとメス1頭ずつで行いますが、メスにオスを引き合わせるには、発情しているメスのケージにオスを入れます。あるいは、オス同士以外は協調性もあるので、オス:メス=1:複数のハーレム状態でも構いません。約1週間ほど同居させれば普通は交尾が行われます。

マウス

発情したオスは興奮して活発に動き回り、メスの外陰部の匂いをかいで、交尾をせまります。メスはオスを気に入ると、ロードシス (Lordosis) と呼ばれる尾を上げた姿勢がみられます。これは交尾を許容しているのです。交尾はオスがメスの背中に回ってペニスを挿入します。交尾の成功の確認は、メスの陰部に膣栓がついているか否かで判定できます 。交尾後はオスとメスは一緒のケージでも構いません。オスは子育てまで手伝うことがあります。

妊娠・出産

妊娠期間は19 (18~21) 日です 〔Baumans, 2010〕。妊娠した子供の数によりますが、交尾後約15日くらいで、お腹が大きくなってきます。この時期に巣箱の用意をします。あるいは床敷を使って自ら巣穴を作るようになります。妊娠中のマウスには栄養価の高い餌が必要になりますので、餌はヒマワリの種などのカロリーが高いものを加えてあげるとよいでしょう。

マウス赤子

赤ちゃん・子育て

産まれてくる子供の数は、6~10頭です 〔Baumans, 2010〕。新生子は未熟な状態の赤子で、目も耳も開いておらず、体温調節もできません。

マウス赤子

最初は柔らかい餌で慣れさせ、離乳するようになったら徐々に固い餌に変えていきましょう。子育てができるような環境や餌の管理を行ってください。出産後は神経質になるため、ケージ内は暗くして静かにしましょう。

マウス

集団で子育てをすることも可能で、他のメスは自分の子以外でも巣づくりし、子を巣に集め、保温したりグルーミングしたりするように世話をします 〔Rosenblatt, 1967〕。オスも子育てを手伝いますが、交配したことのなりオスでは子への攻撃をすることがあるので注意してください 〔vom Saal, et al., 1982〕

子育ての間にストレスをかけたり、赤ちゃんに人の匂いが付いたりすると、子食い (食殺) をすることが多いため、出産したら、掃除や床敷の交換なども最小限にしましょう。

これがポイント!

  • 生殖孔と肛門の距離で雌雄を鑑別する
  • 1年中繁殖する周年繁殖動物
  • 繁殖は簡単
  • 性成熟は8~10週日齢
  • メスは4~5日間で発情を繰り変えす
  • 妊娠期間は約20日なのでハツカ (二十日) ネズミ
  • オスも子育てを手伝う
表: 繁殖知識 〔Baumans, 2010〕
性成熟8-10週齢
繁殖形式周年繁殖
発情周期: 4-5日
妊娠期間19 (18-21) 日
産子数6-10頭
離乳約21日齢

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参考文献

  • Baumans V. The Laboratory mouse. In Hubrecht R & Kirkwood J. eds. The UFAW Handbook on the Care and Management of Laboratory and Other Research Animals 8th ed. Wiley-Blackwell. Oxford. 2010: 276-310.
  • Konopka G & Roberts TF. Animal models of speech and vocal communication deficits associated with psychiatric disorders. Biol Psychiatry. 2016; 79 (1): 53-61.
  • Rosenblatt JS. Nonhormonal basis of maternal behavior in the rat. Science. 1967; 156 (3781): 1512-1514.
  • vom Saal FS & Howard LS. The regulation of infanticide and parental behavior: implications for reproductive success in male mice. Science. 1982; 215 (4537): 1270-1272.

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。