あなた以上に賢い
賢いデグーは、しゃべることはできませんが、きっと頭の中では、「もっとおいしい餌を頂戴!」、「違うオモチャを買って!」、「暇なので遊んで!」・・・と思っているに違いありません。このようなデグーとのつき合い方を考えてみました。コツは意外と簡単です。新たな情報というより、改めて以下のことをよく考え直すだけです。
- 生活の習慣化
- 遊び
- コミュニケーション
- 人に馴れるデグーを選ぶ
生活の習慣化
デグーは基本的に昼行性の動物です。しかし、野生では季節によっては夜に行動することもありますが、飼育下のデグーは飼い主の生活サイクル次第で昼行性にもなります。デグーの生活リズムを整えることは、ストレスも減り、ホルモンや消化管蠕動も安定し、健康を維持するためにも重要なです。餌を与える時間やケージから出して遊ぶ時間も、一定の時間で決めて行うと、デグーはそのリズムに馴れてきます。名前を呼んで反応するくらい馴れると、呼びかけながら世話をするとよいでしょう。デグーは群れで暮らし、仲間とのコミュニケーションを取る時は、複数の鳴き声を使い分けます。飼い主が呼びかけると、返事をするようになるデグーもいます。
餌を与える時も、袋を鳴らすことでデグーは餌がもらえることが分かるようになります。好物を渡すと寄ってくるようになるので、ケージに戻すコツは、ケージに戻れば好物がもらえるということを理解させることです。ケージに入ったら褒めてあげましょう。これを毎日続けると、デグーは自分からケージに戻るようになります。デグーはトイレを覚えないことが欠点で、ケージ内のいたる所で糞や尿をします。しかし、臭いがきついということはありません。
遊び
知能が高いデグーは、道具を使うこともできます。大きい箱を下から順番に箱を積み重ねる 〔Tokimoto et al.2004〕、柵越しの手が届かない所に餌を置くと、熊手を使って餌をとることができること 〔入来ら 2007〕 などは有名な話です。
道具を使うくらいの知能を持っているため、おもちゃにも工夫を凝らさないとすぐに飽きられてしまいます。基本的にはかじっても安全な材質のものを与えるようにしましょう。デグーは縦の運動ができる立体的な遊び方が大好きです。そのためケージの止まり木やブランコなど立体的な遊び道具や三次元トンネルといった複雑な構造のおもちゃも適しています。デグーが退屈を感じるとストレスを感じ、ケージの金網ワイヤーや給水器などを齧って破壊したりもします。
コミュニケーション
群れで生活をするデグーは、個体同士でコミュニケーションをとります。主に鳴き声でコミュニケーションをとり、多彩な鳴き声を仲間同士で意志疎通をしています。人間がデグーの鳴き声を聞いて、機嫌がよいのか、不満なのか、鳴き声なのか、容易に理解出来ます。遊び相手がいない場合は飼い主を遊び相手として必要とします。デグーと接する時は優しく声をかけて下さい。
社交性が高いデグーは、人のストレス下での社会的・感情的行動の脳神経学的研究のモデルになっています。社会的絆の欠損による感情行動障害の研究 〔Colonnello et al.2011,Ardiles et al.2012〕、アルツハイマー病ならびに認知症 〔Braidy et al. 2012〕 の研究に使われています。きつい口調でデグーに話しかけていると、デグーも警戒して、馴れなくなります。つまり、人間が怒っているのか、機嫌がよいのか位は、デグーも理解できるはずです。
デグーに対して嫌がれることはしてはいけないですが、優しく話しかけることだけではしつけになりません。ある程度馴れてコミュニケーションがとれたら、ケージをかじったり、人に噛みついた時などは口調を強くして叱ることも必要です。
デグーは学習能力が高く、自分で考えて行動するということもできます。毎日繰り返すことで、飼い主との絆も強く太くなります。焦らず付き合ってあげてください。
馴れるデグーの選び方
デグーは群れの中の他のメスやオスも共同で子育てを手伝います 〔Braun et al.2003〕。子育ては、幼体の脳の発達に大きく影響します。子育ての時期に母親と子を放すと、声の発達、性格の発達、知的/社会的能力、精神障害の欠損などをもたらします 〔Braun et al.2003,Helmeke et al.2001〕。子育て中のデグーを親から早くに離すと、様々な異常行動がみられ、自咬などを引きおこす可能性があります 〔Wilson 1982〕。人にも馴れない性格になりやすいです。親から完全に放す離乳は、きちんと母親たちから愛情をうける21~28日齢まで待つべきです 〔Braun et al.2003〕。ブリーダーで早くから親から放した小さいベビーのデグーがペットショップで売られていますが、このようなベビーは性格に難がある可能性が高いです。そういう場合は人に対して必要以上に警戒心を持っています。性格がよいデグーを迎えいれると、コミュニケーションもとりやすく、デグーも飼い主も幸せだと思います。ペットショップで小さ過ぎるデグーは迎えいれないでください。ブリーダーなどで1ヵ月位は親と一緒だったデグーを探してみてください。
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教科書でデグーのことを勉強するならコレ!
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動物看護師の教科書です!
参考文献
- Ardiles AO,Tapia-Rojas CC,Mandal M,Alexandre F,Kirkwood A,Inestrosa NC,Palacios AG.Postsynaptic dysfunction is associated with spatial and object recognition memory loss in a natural model of Alzheimer’s disease.Proc Nati Acad Sci USA109(34):13835-13840.2012
- Braidy N,Muñoz P,Palacios AG,Castellano-Gonzalez G,Inestrosa NC,Chung RS,Sachdev P,Guillemin GJ. Recent rodent models for Alzheimer‘s disease:clinical implications and basic research.J Neural Transm (Vienna)119(2):173-195.2012
- Braun K,Kremz P,Wetzel W,Wagner T,Poeggel G.Influence of parental deprivation on the behavioral development in Octodon degus: modulation by maternal vocalizations.Dev Psychobiol42(3):237-245.2003
- Colonnello V,Iacobucci P,Fuchs T,Newberry RC,Panksepp J.Octodon degus. A useful animal model for social-affective neuroscience research: basic description of separation distress, social attachments and play. Neurosci Biobehav Rev35(9):1854-1863.2011
- Helmeke C,Ovtscharoff W,Poeggel G,Braun K.Juvenile emotional experience alters synaptic inputs on pyramidal neurons in the anterior cingulate cortex.Cereb Cortex11(8):717-727.2001
- Tokimoto N,Okanoya K.Spontaneous construction of “Chinese boxes” by degus (Octodon degu): a rudiment of recursive intelligence? Jpn Psychol Res46 (3):255-261.2004
- 入来篤史,岡ノ谷一夫,熊澤紀子.齧歯類の道具使用学習を触発する好奇心の脳内機構.理化学研究所研究実績報告. 2007.