雌雄鑑別
雌雄鑑別は難しくはありません。オスは生殖孔 (包皮の出口) と肛門の距離がメスよりも長く、わずかな膨らみをもつ陰嚢が見られみます。オスは生殖孔の開口部を押すと、ペニスが露出することで鑑別ができます。また、鼠径輪が開いているため、陰嚢はわずかにしか膨ら見られません。
メスは生殖孔と肛門の距離がオスよりも短いです。しかし、メスの生殖孔は円錐形で、一見するとオスのペニスと似ていますので注意して下さい。
繁殖
野生のデグーは繁殖する季節が決まっており、繁殖期は5月下旬 (チリの秋) に始まり、冬の終わりから早春 (9月から10月) に妊娠します 〔Woods, et al., 1975〕。しかし、ペットでは1年中繁殖することが可能です。
性成熟
オスもメスも12〜16週齢で性成熟をしますが 〔Ebensperger, et al., 2005〕、野生では繁殖期が決まっているので、最初の繁殖は53~55週齢で迎えます 〔Ebensperger, et al., 2002〕。オスは精子が作れるようになり、メスは子供をつくれる体になります。
発情
オスは発情すると気があらくなり、砂浴びと尿のマーキングの回数が増えます。オスのメスに対して、尾を振ったり体を震わせたりする求愛行動が見られます。メスに対してオスは後足を上げ、メスに尿をマーキングとしてかけます。これはメスに自分の臭いをよく知ってもらうためです。オスを気にったメスは感じようにオスに排尿マーキングをします 〔Ebensperger, et al., 2002b〕。ペットのメスの発情周期は約3週間で 〔Brown, et al., 2001〕、数日の発情期がみられます。発情すると外陰部は赤色を帯びてわずかに腫大しますが、分かりにくいです。
交配
交配はお見合いからです。オスとメスを各1頭ずつにさせるか、1頭のオスに2-3頭のメスをあてがうハーレム方法をとって下さい。しかし、雌雄での相性の選択が難しく、相性が悪ければすぐにケンカが始まります。それぞれのケージを並べて、お互いの匂いをかがせて、存在を意識させます。慣れてきたらメスをオスのケージに入れます (オスをメスのケージに入れると、メスがオスを攻撃する可能性が高いので注意して下さい)。
メスはオスを気にいると、ロードシス (Lordosis) と呼ばれる尾を上げた姿勢が見られます。これは交尾を許容しているのです。交尾はオスがメスの背中に回ってペニスを挿入します。交尾ができているかの確認は、メスの外陰部に膣栓がついているか否かで判定できます。交尾をしない場合は別の日に再び行って下さい。相性が悪い場合はペアの組み合わせを変えます。交尾後はオスとメスは別々のケージに戻します。確実に妊娠させたい場合は、数日以内にもう一度交配をさせて下さい。
妊娠
妊娠期間は86-93日と他のげっ歯類と比較して長いです 〔Woods, et al., 1975〕。お腹の中で子を大きく育ててから出産するというシステムをとっているのです。妊娠診断は動物病院で、触診、X線検査や超音波検査で行います。
妊娠した子供の数によりますが、後半になるとお腹が大きくなってきます。この時期に巣箱の用意をします。
妊娠中のデグーには栄養価の高い餌が必要になりますので、カロリーが高いペレットに変えるとよいでしょう。産まれてくる子供の数は、約6 (3-10) 頭です 〔Brown, et al., 2001〕。
赤ちゃん・子育て
新生子はすでに目が開いており、毛も生えて発育した状態で産まれ、姿は大人のデグーと同じです。母親から乳をもらいながら、既に歯も生えていますので、柔らかい餌やふやかしたペレットなら数日で食べはじめます。最初は柔らかい餌で慣れさせ、離乳するようになったら徐々に固い餌に変えていきましょう。
消化機能が完全に発達するの少し時間かかりますので、完全な離乳は21-28日齢 〔Braun, et al., 2003〕 が理想です。しかし性成熟をする12-16週を迎えても、生後約6ヵ月齢までは成体の体のサイズに達しませんが、一般的に最初の繁殖期が来る53-55週齢まで、群れの中に住んでいます。 〔Ebensperger, et al., 2005; Lee, 2004〕。野生のデグーでは、群れの中の他のメスやオスも共同で子育てを手伝います 〔Braun, et al., 2003〕。
デグーの子育ては、赤ちゃんの脳の発達に大きく影響します。子育ての時期に母親と早期に放すと、声の発達、性格の発達、知的/社会的能力、精神障害の欠損をもたらします 〔Braun, et al., 2003; Helmeke, et al., 2001〕。つまり、子育て中のデグーを親から早くに離すと、様々な異常行動がみられ、自咬などを引きおこす可能性があります。
性成熟 | 12-16週齢 〔Ebensperger, et al., 2005〕 野生での初回繁殖期: 53-55週齢 〔Ebensperger, et al., 2002〕 |
繁殖形式 | 季節繁殖 (チリでは5月下発情、9-10月に出産)〔Ebensperger, et al., 2002〕 飼育下では周年繁殖/発情周期は約3週間 〔Brown, et al., 2001〕 |
妊娠期間 | 86-93日 〔Woods, et al., 1975〕 |
産子数 | 約6 (3-10) 頭 〔Brown, et al., 2001〕 |
離乳 | 21-28日齢 〔Braun, et al., 2003〕 |
マンガで勉強するデグーの飼育書!
漫画ですが、しっかりと描かれています!合格!
参考文献
- Braun K, Kremz P, Wetzel W, Wagner T, & Poeggel G. Influence of parental deprivation on the behavioural development in Octodon degus: modulation by maternal vocalisations. Dev Psychobiol. 2003; 42 (3): 237-245.
- Brown C & Donnelly T. Cataracts and reduced fertility in degus (Octodon degus). Contracts secondary to spontaneous diabetes mellitus. Lab Animal (NY). 2001; 30 (6): 25-26.
- Ebensperger LA & Wallern PK. Grouping increases the ability of the social rodent, Octodon degus, to detect predators when using exposed microhabitats. Oikos. 2002; 98 (3): 491-497.
- Ebensperger LA & Caiozzi A. Male degus, Octodon degus, modify their dustbathing behavior in response to social familiarity of previous dustbathing marks. Rev Chil Hist Nat (En Línea). 2002b; 75 (1): 157-163.
- Ebensperger LA & Hurtado MJ. Seasonal changes in the time budget of degus, Octadon degus. Behaviour. 2005; 142 (1): 91-112.
- Lee TM. Octodon degus: a diurnal, social, and long-lived rodent. ILAR J. 2004; 45 (1): 14-24.
- Helmeke C, Ovtscharoff W, Poeggel G, & Braun K. Juvenile emotional experience alters synaptic inputs on pyramidal neurons in the anterior cingulate cortex. Cereb Cortex. 2001; 11 (8): 717-727.
- Woods CA & Boraker DK. Octodon degus. Mamm Species. 1975; 67: 1-5