鳥の嘴のトリミング(猛禽類ではコーピング)

嘴のカット

飼鳥での嘴のトリミングはオウムや猛禽類で行われており、嘴の先端をマイクロエンジンや爪切りで切り落としたり、ヤスリで磨いたりさえることがあり、猛禽類の飼育者の間では、嘴のトリミングをコーピング(Coping:対処する)と呼ばれています。

野鳥ではあり得ない

野鳥は常に嘴を使って種子を引き裂いたり、木に穴をつついたり、猛禽類の場合は獲物の骨を割ったり、磨耗することで長さも必然的に調整されます。

なぜ伸びる

磨耗不足による嘴の過長もありますが、病的に栄養性(栄養性嘴羽毛形成不全)や肝機能低下(脂肪肝症候群)などが原因で嘴形成不全を起こし、変形を伴って過長する場合もあります。また、飼育者を攻撃する目的で噛んでくる問題行動の鳥の嘴のトリミングを行うこともあります。

ニワトリではやってる

本来は、家禽での共食い、羽毛つつき、通気口や排水口破壊などの被害を予防策として、嘴のトリミングが行われていました〔Hester et al.2003〕。しかし、一部の国では、この処置が有用でないため推奨されていません〔Gentle et al.2007〕。嘴が短くなることで、自らの羽繕いができなくなり、小さい餌をついばむこともできなくなるからです〔Hester et al.2003〕。さらに、処置は疼痛を伴うとも言われています〔Gentle et al.1991,Gentle et al.1997〕。嘴は痛みや有害な刺激を感知する侵害受容器を含む広範な神経供給を備えた器官で、血管供給もされており〔Breward 1984〕、短く切ると出血します。

参考文献

  • Breward J.Cutaneous nociceptors in the chicken beak.Proceedings of the Journal of Physiology.London 346:56.1984
  • Gentle MJ,McKeegan DEF.Evaluation of the effects of infrared beak trimming in broiler breeder chicks.Veterinary Record160:145–148.2007
  • Gentle MJ,Hunter LN.Waddington D.The onset of pain related behaviours following partial beak amputation in the chicken.Neuroscience Letters128:113–116.1991
  • Gentle MJ,Hughes BO,Fox A,Waddington D.Behavioural and anatomical consequences of two beak trimming methods in 1-and 10-d-old domestic chicks.British Poultry Science38:453-463.1997
  • Hester PY,Shea-Moore M.Beak trimming egg-laying strains of chickens. World’s Poultry Science Journal59:458-474.2003

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。