ミニブタの牙切り

歯の解剖

歯式は切歯6本、犬歯2本、前臼歯8本、後臼歯6本の計44本です。犬歯は長く伸びて牙になり、生涯伸び続けます。ミニブタのは牙があまり伸びず、マイクロブタはほとんど伸びないと言われていますが、一部のミニブタでは犬歯(牙)が伸びる個体がいます。豚のオリジナルであるイノシシは偶蹄目ですが、珍しく雑食性で木の実や種子、草の茎葉根、キノコ類、ミミズや昆虫、カエルやヘビなど様々なものを食べ、闘争する際には肉を切り裂くための犬歯が必要になったと考えられています。上下の犬歯だけは他の歯と異なり、常生歯と呼ばれ、生涯伸び続けます。歯根には血管や神経は通っていますが、先端にはありません。

牙の処置

ブタの牙は上顎は外側に向かって伸び、下顎の犬歯は上に向かって過長します。ブタの牙は、人と共生する上で怪我をさせるなど危険になることがありますので、事故を未然に防ぐために、歯冠のみを部分的に研磨あるいはカットをします。処置は動物病院において麻酔下で獣医師が行うことを推奨します。

 

自宅でできないの?

家庭において無麻酔での牙の処置も一部では行われていますが、頬や口唇、口腔内を誤って傷つけてしまったり、牙が根元まで縦に割れてしまったり、顎を骨折させたり、歯髄が露出することで失活歯ならびに根尖膿瘍が発生します〔Compassion in World Farming 2012〕。無麻酔で処置ができるのは、家畜の豚でも幼体のみの限られた時期のみです。

一部の国では研磨のみ

牙のカットは、デンマーク、ノルウェー、スイスなど一部の国では許可されていません。カットの問題が起こることを考えると、むしろ研磨することの方が問題が行らないという考えのようです。

参考文献

  • Compassion in World Farming.Tooth Resection.http://www.compassioninfoodbusiness.com/media/5823238/tooth-resection.pdf.2012

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。