フクロモモンガってどんな動物(知らないといけない生態と特徴)

カンガルーの仲間

モモンガというと通常はげっ歯類のモモンガを想像しますが、フクロモモンガは腹部に袋を持つカンガルーの仲間の有袋類です。フクロモモンガは1980年代からアメリカでも飼育され始め、本邦でも2000年以降に人気が出てきて、ペットとして大量に流通しています。今はモモンガと言えばげっ歯類のモモンガでなく、フクロモモンガを指すことが多いです。

フクロモモンガ

分類・生態

フクロモモンガは飛膜を使い滑空することができます。

フクロモモンガ

げっ歯類のモモンガとフクロモモンガは、外見が類似していますが、分類学的に全く違う種類で、何万年の間に体が似た構造を持つ進化を遂げました (収斂現象)。

アメリカモモンガ
アメリカモモンガ

分類

カンガルー目 (有袋目) フクロモモンガ科フクロモモンガ属                                                                   学名:Petaurus breviceps                                                                                 英名:Sugar glider

亜種

生息地域により、いくつかの亜種が報告され、体の大きさや毛色に幅があります 〔Lindenmayer 2004〕。しかし、分類学的には明確に定まっていません。

フクロモモンガ科フクロモモンガ属フクロモモンガPetaurus breviceps breviceps
P.b.ariel
P.b.flavidus
P.b.papuanus
P.b.tafa
P.b.biacensis
表:フクロモモンガの亜種

分布

タスマニア島、オーストラリア大陸の北部と東部、ニューブリテン島、ニューギニア島とその周囲の島々

フクロモモンガ分布地図

身体

頭胴長:18-23cm                                                                                  尾長:20‐30cm                                                                                   体重:オス115‐160g、メス95‐135g

毛色

目の周りと耳にかけて黒色です。

フクロモモンガ

背側は淡色~青色気味の灰色で、鼻筋から頭部、背中にかけて黒色の線が走り、腹側はクリーム色です。

生態

環境:高温多湿の熱帯雨林                                                                 行動:樹洞を巣穴として生活する夜行性の動物です。6~7頭以下(1頭のオスと複数のメスと子)の群れで生活をしています。木々を滑空しながら移動して餌を探し、地面に降りたつことはまれです 〔Goldingay 1984〕。                            食性:雑食性で、アカシアやユーカリの樹液、果汁、花粉や花蜜、昆虫類などを食べています。大きな切歯で樹皮をはがして樹液を舐めとり、花蜜を吸いとります。英名のSugar gliderは、「甘いものが好きな滑空者」という意味です。                    寿命:5~7年、飼育下では12~15年という記録があります 〔Brust 2009〕

性格・習性

警戒心が強い

警戒心が強いため、部外者を激しく排除しようとして、「ギュイギュイ」、「ギュルギュル」、「ギコギコ」と甲高い威嚇の警告音をあげます。

警戒音

後肢で立ち上がり、前肢を広げるような姿勢で、歯をみせながら「ギュルギュル」、「ギーギー」と声をあげて威嚇をします (警戒音 / アラームコール: Alarm call)。仰向けになり四肢を突き出した姿勢で威嚇することもあります。声は威嚇以外にも多彩で、コミュニケーションなどにも使用されます。「ワンワン」は発情期の求愛、「ジジッ」は驚き、「シューシュー」や「キュキュ」は甘え、「プププ」は嬉しいといった意思表示です。

マーキング

縄ばり意識が強く、オスは群れの中のメスや縄ばりに、唾液や臭腺の分泌物を使って、臭いつけを行います。オスはメスよりも臭腺が発達しています。嗅覚は優れており、臭いによって縄張りや仲間を認識しているようです。

毛繕い

きれい好きな動物で、口で毛を舐める以外に手足の爪を使って毛繕いをします。毛繕いの行動は高速回転のように素早く、夢中になって行う動作がかわいいです。

フクロモモンガ

身体の特徴

大きな目

目は丸くて突きでています。視覚については、夜にわずかな光でもみることができ、動体視力が優れています。

フクロモモンガ

丸い耳

耳は大きくて丸く、聴覚はわずかな音でもどの方向に何があるのかを聞き分けることができます。

フクロモモンガ

皮膜

前肢の第5指から足首にかけて、伸縮性のある皮膚の襞である飛膜を持っています。

フクロモモンガ皮膜

飛膜は樹木間を滑空するのに使用され、尾で舵をとります。滑空は50 mにも及びます 〔Johnson-Delaney, 2002〕。飛膜を伸展させて表面積を大きくし、ハンカチのような形をつくり滑空します。しかし、ペットのフクロモモンガはそれほどの長い距離を滑空することはありません。

長い尾

尾は頭胴長とほぼ同じ長さで、先端がやや細くなり、末端は黒色をしています。

尖った歯

歯の数は全部で40本で〔Green 1983〕、樹皮をかじるために、下顎の切歯の2本が大きく前に突き出ています。

長い舌

舌は長く、樹液や花蜜を吸いとるのに役立っています。

フクロモモンガ

対向指

趾は対向指と呼ばれ、親指とその他の指が向かいあってい、物をつかむのに適しています。

フクロモモンガ

趾の数は四肢とも5本ですが、後肢の第2指と第3指は根元が癒合した指で、毛繕いの際の櫛の役目をし、前肢の長い第4指は樹皮の間の昆虫をとり出すのに使われます。

フクロモモンガ

臭腺

複数の臭腺があります。頭頂部にある前額腺、胸にある胸部胸腺肛門腺が大きく、四肢や外耳の内側などにも目立たないですが存在します。前額腺はハゲ頭にみえます。発情したオスは特に発達していますので、分泌物で濡れています。

胸部胸腺はあまり目立たないこともあります。

肛門の両側にある肛門腺も臭腺で雌雄にみられますが、オスで発達してます。なお、メスには育仔嚢内にも臭腺があります。

フクロモモンガの飼育の詳細な解説はコチラ!

フクロモモンガの飼育を極めるならこの本読んで!

フクロモモンガ完全飼育:飼育管理の基本、生態、接し方、病気がよくわかる.誠文堂新光社 

教科書でフクロモモンガのことを勉強するならコレ!

カラーアトラス.エキゾチックアニマル哺乳類編 第3版.緑書房

動物看護師の教科書です!

参考文献

  • Brust DM.Sugar Gliders. Exotic DVM11(3):32-41.2009
  • Goldingay RL.Photoperiodic control of diel activity in the sugar glider (Petaurus breviceps).In Possums and Gliders. Beatty S.in association with the Australian Mammal Society. Smith AP,Hume ID.eds.Chipping Norton,NSW: 385-391.1984
  • Green RH.An Illustrated Key to the Skulls of the Mammals in Tasmania.Queen Victoria Museum and Art Gallery. Launceston.1983
  • Johnson-Delaney CA.Other small mammals.In BSAVA Manual of Exotic Pets 4th ed.British Small Animal Veterinary Association.Meredith A,Redrobe S.eds.Quedgeley:102-105.2002
  • Lindenmayer D.Gliders of Australia: a Natural History.University of New South Wales Press.Sydney.2002
  • Suckling GC.Population ecology of the sugar glider,Petaurus breviceps,in a system of fragmented habitats. Austr Wildl Res11(1):49-75.1984

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。