ハリネズミの飼育 意外と簡単!

体は特殊ですが飼育は簡単?

ハリネズミって飼うのが難しそうな印象ありますが、コツをおさえれば意外と簡単です。なお、アメリカでは輸入や飼育に規制がありますが、日本では特別な法的規制はありません。

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飼育

基本的に夜行性で、主に夜に活動して、昼は熟睡しています。臆病な性格で、さらに聴覚が発達しているために、静かでストレスの少ない環境で飼育することが理想です。物音や気配で目を覚ますために、ケージを置く場所は静かな部屋にしてあげましょう〔Ivey et al.2012〕。

飼育頭数

基本的に単独生活です。複数で飼育をする場合は相性を考えて、雄同士は相性が悪いことが多いですので 〔Smith, 1992〕、雌雄を一緒に飼う場合は繁殖計画をしっかりと立てた上で行って下さい。

ケージ

夜は活動的に動き回るので、脱走するおそれがあります。飼育ケージは広くて高さのあるタイプが理想です。

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床は金網だと手足が隙間に落ちたり、引っかける事故の可能性があります。ケージに床敷を厚く敷き、餌容器、給水器、小屋をレイアウトして設置して下さい。

探索する癖があるために、夜中に動き回って餌容器をひっくり返します。重たい陶製の容器あるいは大きな平皿がよいかもしれません。臆病な性格のため、落ち着ける場所が必要で、中で動けるくらい余裕がある小屋を1つ用意します。もし、複数のハリネズミを一緒に飼育する場合は、1頭につき 1 つの小屋が必要です〔Ivey et al.2012〕。

ハリネズミ小屋

通常はトイレは覚えませんが、一部の個体四隅にするかもしれません。ケージが汚れやすく、掃除は頻繁に行わなければなりませんので、床敷を取り換えやすいものにすることを考えましょう。木製や紙製チップの吸水性の優れたものを約10 cmの厚さで敷きます〔Ivey, et al., 2012〕。

温度・湿度・照明

温度

ハリネズミの体温は他の哺乳類と比べて低く、35.1℃ 〔Wallach, 1983〕や36.1-37.2℃ 〔Hoefer, 2005〕 などと報告されています。気温が高くなると熱の放散を上手く行うことができず、ストレスになります。気温が約17℃以下になると、本来は冬眠しないのですが、活動はかなり低下します 〔Hoefer, 1994〕。弱ってきているよう見えます。冬の寒い時は、ヒーターなどの保温器具で寒さを防ぐ工夫をし 〔Heatley, et al., 2005〕、夏は冷房や送風などで温度が上がりすぎないように注意して下さい (温度・湿度)。

ハリネズミ保温
表: 温度・湿度
温度24-30℃
湿度50-60%

照明

主に夜に活動しますので、昼は暗い部屋あるいはケージにカバーなどをかけます (照明)。

食事

活動し始める夕方から夜の早い時間にかけて、餌を与えて下さい。野生のハリネズミの餌になる軟体動物や昆虫は栄養素がそれぞれ大きく異なるため、飼育下での食事内容や栄養に関しては、まだ分かっていないことが多いです。定説的にはハリネズミ用のペレットを主食にし、ペレットには30-50%のタンパク質と10-20%の脂肪が理想とされています 〔Dierenfeld, 2009; Allen, 1992〕。フェレットフードやキャットフードは粗脂肪が高く、肥満になりやすいので、あえて与えないで下さい。正常な栄養スコアのハリネズミは、丸まった際に脂肪は確認されませんが.肥満個体は腋窩や臀部の蓄積した脂肪がはみ出ています 〔Ivey, et al., 2012〕。肥満脂肪肝などの内蔵の病気の原因なります。

ハリネズミ肥満

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ハリネズミ用ペレット以外にも、コオロギなどの昆虫ミルワームなどの軟体動物、動物性蛋白質 (ゆでたササミなど)、少量の野菜 (ふやかしたニンジンやカボチャ、葉野菜)などを組み合わせて与えて下さい。外骨格をもつ昆虫を大量に食べることから、飼育下であっても比較的高い粗繊維が必要とも考えられ、また昆虫の外骨格は採食の際、歯に磨耗を与え、歯石の沈着予防にもなっています。

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ハリネズミ用ペレットはそのまま硬い状態で与える方法とふやかして与える方法の2つがあります。硬い状態で与える方法のメリットは、餌の腐敗が少なく、歯石を落として歯のお掃除になる、食べ過ぎ防止、手間がかからないことです。デメリットは硬いために、歯や歯肉を痛める可能性があり、幼体では噛み砕けないこともあります。ふやかして与える方法のメリットは、柔らかくて歯や歯肉への負担が少ない、そして匂いが増すので嗜好性が高くなることです。デメリットは、ふやかすことで餌が腐敗しやすくなること、歯石がつきやすくなることの2つです。歯石がつくことで歯周病になるのが心配です。Dr. ツルはあえていえば、硬いままのペレットを与える方法をお勧めします。ハリネズミにはふらつき症候群という治らない病気が起こることがあります。栄養のバランスのとれた餌を与えることを心がけます。

ハリネズミ
ハリネズミ

ハリネズミは野生では虫を主食の一つとしていますので、虫が大好物です。しかし、一部のハリネズミでは虫をみせると嫌うこともあります。ペレットを主食としているならば、虫は絶対に与えないといけないものではありません。もしも虫が嫌いなハリネズミならば、無理して与えなくてもよいです。

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飲水

給水器はボトルタイプか皿タイプが使われますが、皿タイプはひっくり返すことが多いので、ボトルタイプが理想です。ふやかしたペレットを食べていると、そちらの水分で十分になり、あまり水を飲まないです。

ハリネズミ給水ボトル

ケア

ケージの中にハリネズミを入れて餌を与えるだけという単調な飼育は、成長や健康維持、繁殖のみならず、精神的的なストレスの原因になります。ハリネズミが持つ野生本来の行動を発現できるような環境作りのために、生息地に適応した体の特徴や生態を環境エンリッチメントに沿って考えて下さい。ハリネズミの場合、夜行性であること、想像以上に活動的であることがポイントとなります。シャンプーや入浴の必要性はないですが、ちなみにハリネズミは泳ぐことも可能です 〔Campbell, 1997〕。

昼間は暗くする

ハリネズミの場合、夜行性というのがポイントになり、昼はできれば暗い部屋、あるいはタオルや毛布などでケージを遮光して下さい。昼間も明るくすると寝れない以外に、ホルモンのバランスを崩す原因になります。

運動

実際は活発で好奇心旺盛な性格なので、夜は動き回ることのできる広い空間が必要になります。部屋の中に放すと自ら喜んで探索し始め、興奮すると意外に歩行のスピードが上がります。トンネルなどの玩具も気に入ると中に潜ったりもします 〔Ivey, et al., 2012〕。

回し車を気に入るかは個体差があります。回し車を回す場合は、金網タイプの回し車では手足を隙間に引っ掛けてしまう事故も多いので、カバーされている商品を選んで下さい。

ハリネズミ回し車

コミュニケーション

ハリネズミは人に馴れるというより、怖がらなくする程度と思って下さい。馴れていないハリネズミは、周囲の音や人の手を感知するとすぐに丸まりますが、慣れてくると、徐々に警戒心がなくなり、少しづつ顔を出すようになります。

ハリネズミ

スキンシップををとるために、針に耐えられる手袋を準備しますい。最も適しているのが皮の手袋で、特に豚皮の手袋は安価でお薦めです。馴れているハリネズミは、手にも乗ります。人に馴らすには時間がかかります。ストレスにならない程度に加減してください。徐々に警戒心がなくなるようになれば上出来です。

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爪切り

野生とは異なり爪がすり減る環境ではないため、爪が伸びすぎることがあります。しかし、警戒心が強い子は、丸まってしまうために爪切りが困難になることも多いです。そのような場合は、メッシュカゴやケージのメッシュ部分を利用し、網目の隙間から足だけが出てくるので、爪が切りやすくなります。しかし、ケガをすることもあるので無理に行わないで下さい。

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これがポイント!

  • 運動量が多いので大きなケージ
  • 冬眠させない
  • ペレットを主食
  • ワームやコオロギは副食
  • ペレットは硬いままかふやかす
  • 完全夜型の生活
  • スキンシップは少しずつ
  • べた慣れハリネズミは珍しい

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参考文献

  • Allen ME. The nutrition of insectivorous mammals. In American Association of Zoo Veterinarians, American Association of Wildlife Veterinarians, & Junge RE. Proceedings of the Annual Meeting of the American Association of Zoo Veterinarians. Oakland. 1992: 113-115.
  • Campbell T. Intestinal candidiasis in an African hedgehog (Atelerix albiventris). Exot Pet Pract. 1997; 2 (10): 79.
  • Dierenfeld ES. Feeding behavior and nutrition of the African pygmy hedgehog (Atelerix albiventris). Vet Clin North Am Exot Anim Pract. 2009; 12 (2): 335-337.
  • Heatley JJ, Mauldin GE, & Cho DY. A review of neoplasia in the captive African hedgehog (Atelerix albiventris). Semin Avian Exot Pet Med. 2005; 14 (3): 182-192.
  • Hoefer HL. Hedgehogs. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 1995; 24 (1): 113-120.
  • Ivey E & Carpenter JW. African hedgehogs. In Quesenberry KE & Carpenter JW. eds. Ferrets, Rabbits, and Rodents: Clinical Medicine and Surgery 3rd ed. Saunders-Elsevier. St. Louis. 2012: 411-428.
  • Smith AJ. Husbandry and medicine of African hedgehogs. J Small Exot Anim Med. 1992; 2 (1): 21-28.
  • Wallach JD & Boever WJ. Diseases of Exotic Animals: Medical and Surgical Management. WB Saunders. Philadelphia. 1983: 653-663.

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。