ハリネズミの雌雄鑑別と繁殖 ~意外と増やせます!~

雌雄鑑別

雌雄は生殖孔の位置で鑑別します。オスは生殖孔 (包皮の開口部) が、お腹の真ん中に位置しています。

包皮の中には大きなペニスが隠されています。

鼠径輪が開いているために精巣はお腹の中と陰嚢に移動しますが、ハリネズミは陰嚢が発達していないのでにわずかに膨らんでいる程度です。

メスの生殖孔 (外陰部) は肛門近くに位置します。子宮の形状は双角子宮と単一の子宮頸部を持っています〔Banks, et al., 2010〕。

繁殖

ペットのハリネズミは一年中繁殖ができる周年繁殖動物ですが、繁殖に適しているのは過ごしやすい春と秋です。繁殖させることは意外と簡単ですが、生まれたハリネズミのことをしっかりと考えてください。自分で飼えるのか?もし飼えないのであれば里親を探さなければなりません。

性成熟

性成熟は61~68日齢 〔Johnson-Delaney, 2007〕、また、オスは5~8ヵ月齢、メスは2~3ヵ月齢という報告もあります 〔Brodie, et al., 1982〕。しかし、メスは6か月齢までは繁殖に使わないほうがよいです 〔Heatley, et al., 2005〕。オスは性的な成熟を迎えると精子が作れるようになり、メスは子供をつくれる体になります。

発情

発情したオスはそわそわと落ち着かなく動き、勃起をすることが多くなります。メスは多発情を示し 〔Ivey, et al., 2012〕、発情をしているのか外観からは分かりにくいです。

交配

交配はまずはお見合いからです。基本的にオスとメス1頭ずつで行いますが、雌雄での相性の選択が難しく、メスは相性が悪ければ針を立ててオスを威嚇してきます。発情したオスは興奮して活発に動き回り、メスの匂いをかいで、頭をメスの体にぶけるような行動を見せて交尾をせまります。交尾はオスがメスの背中に回ってペニスを挿入します。交尾は3~4分くらいで終わります。交尾をしない場合は別の日に再び行ってください。相性が悪い場合はペアの組み合わせに変えます。

交尾後はオスとメスは別々のケージに戻します。確実に妊娠させたい場合は、数日以内にもう一度交配をさせて下さい。

妊娠・出産

妊娠した子供の数によりますが、後半になるとお腹が大きくなって、乳首が赤く目立ってきます。この時期に巣箱の用意をします。あるいは床敷を使って自ら巣穴を作りをさせて下さい。

妊娠中のハリネズミには栄養価の高い餌が必要になりますので、脂肪が多いペレットを与えましょう。

赤ちゃん・子育て

赤ちゃんは赤子で、目も耳も閉じた状態で生まれ、体温調節もできません。針が生えていない状態で産まれてきますが、24時間後には柔らかい白色の針が生えてきます。赤子は皮膚のすぐ下に位置する巣棘を持って生まれ、生後数時間以内に出てきます 〔Banks, et al., 2010〕。巣棘は生後 1 か月で脱落し、永久棘に置き換えられ、永久棘は最長 18 か月持続し、そのご年に1回 つずつ置き換えられます 〔Ivey, et al., 2012〕。

13~24日齢で目が開き、体を丸めることができるようになります 〔Johnson-Delaney, 2007〕。

最初はハリネズミ用のペレットをふやかした柔らかい餌を与えて慣れさせ、離乳するようになったら徐々に固い餌に変えていきましょう。

子育ては母親だけで行いますので、安心して子育てができるような環境や餌の管理を行って下さい。出産後は神経質になるため、ケージ内は暗くして静かにしましょう。子育ての間にストレスをかけると、育児放棄をすることが多いため、出産したら掃除や床敷の交換なども最小限にしましょう。

表: 繁殖知識
性成熟61-68日齢 〔Johnson-Delaney, 2007〕
オス: 5-8ヵ月齢 〔Brodie, et al., 1982〕
メス: 2-3ヵ月齢 〔Brodie, et al., 1982〕 / 6-8ヵ月齢 〔Heatley, et al., 2005〕
メスは2か月で性的に成熟しますが、生後6か月より前に繁殖させるべきではありません。
繁殖形式周年繁殖
妊娠期間34-37日 〔Johnson-Delaney, 2007〕
産子数1-7 (3-5) 頭 〔Johnson-Delaney, 2007〕
離乳4-6週齢 〔Johnson-Delaney, 2007〕

これがポイント!

  • 生殖器の孔と肛門の距離で雌雄鑑別
  • 陰嚢は目立たない
  • オスのペニスは巨大
  • 繁殖は簡単なので計画的に増やすこと
  • 赤ちゃんには柔らかい針が生えてくる

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参考文献

  • Banks RE, Sharp JM, Doss SD, & Vanderford DA. Exotic Small Mammal Care and Husbandry. Wiley-Blackwell. Hoboken. 2010.
  • Brodie ED, Broidie ED Jr, & Johnson JA. Breeding the African hedgehog Atelerix pruneri in captivity. Int Zoo Yearb. 1982; 22 (1): 195-197.
  • Hufnagl E. Libyan Mammals. Oleander Press. Wisconsin. 1972.
  • Herter K. The insectivores. In Grzimek B. ed. Grzimek’s Animal Life Encyclopedia. Van Nostrand Reinhold. New York. 1972: 176-257.
  • Heatley JJ, Mauldin GE, & Cho DY. A review of neoplasia in the captive African hedgehog (Atelerix albiventris). Semin Avian Exot Pet. 2005; 14 (3): 182-192.
  • Ivey E & Carpenter JW. African hedgehogs. In Quesenberry KE & Carpenter JW. eds. Ferrets, Rabbits, and Rodents: Clinical Medicine and Surgery 3rd ed. Saunders-Elsevier. St. Louis. 2012: 411-428.
  • Johnson-Delaney C. What veterinarians need to know about hedgehogs. Exotic DVM. 2007; 9 (1): 38-44.
  • Reeve N. Hedgehogs. T. & A. D. Poyser. London. 1994.
  • Poduschka W & Poduschka C. Fortpflanzung und Jungenentwicklung bei Hemiechinus auritus FITZINGER, 1866 (Insectivora: Erinaceinae). Zool Jb Physiol. 1986; 90: 501-535.

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。