日光浴は夜行性の鳥は不要
夜行性の鳥類は少ないですが、フクロウ類が代表的で、フクロウ、シマフクロウ、アオバズク 、コノハズク、オオコノハズク、コミミズク、トラフズクなどです。それ以外の鳥は昼行性で日光浴をすることが推奨されています。
必要性
日光浴の最も重要な目的はビタミンDを生成することで、その他に体内時計の調整、ストレス解消の作用があります。
ビタミンD合成
ビタミンD(Vitamin D)は脂溶性ビタミンに分類され、日光浴によって生合成されます。カルシウムおよび骨形成に関与し、天然由来のビタミンDは、キノコなど植物由来のビタミンD2(エルゴカルシフェロール:Ergocalciferol)と、魚類の肝臓や魚肉,卵黄由来のビタミンD3(コレカルシフェロー ル:Cholecalciferol)に分類されています(以前に発見されたビタミンD1は、後にビタミンD2と混合物による人工産物の見誤りであるということが判明し、現在は使用されていません)。ビタミンD2とビタミンD3は側鎖構造のみが異なる同族体ですが、通常まとめてビタ ミンDとして扱います。鳥の主食としてもあげられる、ヒエ・アワ・キビなどのシードでは、十分なビタミンDを摂取することができません。総合栄養食であるペレットの原材料には、ビタミンDが配合されていますし、鳥用のサプリメントなどでも補ったりすることはできます。しかし、その得られる効果には個体差があるため、健康的な骨格形成には、日光浴が欠かせません。人ではビタミンD3が重要な働きを果たしています。またビタミンD3は、身体内でにコレステロール生合成の最終中間体である7-デヒドロコレステロール(プロビタミンD3)からも生成されます。皮膚に存在する7-デヒドロコレステロールが、紫外線(Ultra-Violet:UV)に照射されるとステロイド骨格B環が 開裂し、プレビタミンD3となります〔Crissey et al.2003〕。ヒトでは午前10時から午後3時の太陽光を少なくとも週に2回、5分から30分の間、顔、手足、背中に浴びることで十分な量のビタミンDが体内で生合成されると言われています〔Holick 2007,Holick 2002〕。これらのプレビタミンD3は身体内において体温で異性化し、ビタミンD3(コレカルシフェロール)に変換します。ビタミンD3は、肝臓で水酸化されて、 25-ヒドロキシコレカルシフェロール(25(OH)D3、カルシジオール)へと変化し,ビタミンD結合タンパク質と結合し,血液中を長期間安定的に循環します。25(OH)D3はさらに腎臓で水酸化されることで活性型ビタミンD(1,25-ジヒドロキシビタミンD3、カルシトリオール)となり〔Akers et al.2013, Elaroussi et al.1993,Holick 1989〕、様々な効果を発現します。腸からカルシウムの吸収を高めて血中濃度を高くし、腎臓の働きによりカルシウムの血中から尿への移動を抑制し、骨から血中へカルシウムの放出を促進します〔Donald et aL.2004,Elaroussi et al.1993〕。飼鳥ではくる病や代謝性骨疾患が多発するため、日光浴はとても重要なのです。
体内時計の調節
野生の鳥は、朝日が昇るのとともに活動を始めて、太陽が沈むと身体を休めます。つまり、生活リズムおよび体内時計が自然と整いますが、屋内飼育では夜も飼い主の都合で照明をつけて明るくなり、リズムが取りにくくなるわけです。できるだけ午前中のうちに日光浴をさせて、体内時計をリセットする必要があります。人では睡眠ホルモンとよばれるメラトニンは太陽光を浴びることで夜間に分泌が盛んになり、体内リズムを調整される報告があります〔Murphy et al.1997,Duffy et al.2002〕。
ストレス解消
セロトニンとは脳内の神経伝達物質で、脳の興奮を鎮めて精神を安定させる作用があります。幸福感を高めるのに役立つことから、幸せホルモンと呼ばれることもあります。日光浴をすることで、網膜が光を感じてセロトニン神経を活性化させて、分泌を促進させます。蛍光灯の光よりも、例え雲っていても太陽光の刺激が欠かせません。
日光浴の方法
日光浴は屋外に出すだけでなく、室内でも行えます。室内で窓を開けて網戸は閉め、時間は30分くらいで十分です。ただし、熱中症を避けるために、ケージの中に日陰ができるように配置し、可能であれば日光浴中は常に人が見守ります。なお、直射日光を浴びるようにさせてください。ガラス越しではUVBが吸収され、ビタミンDが合成されないからです。つまりガラス戸は開けて、万が一の事故を避けるために網戸は閉めて行うのです。気温、日差しの強さ、鳥の様子を観察しながら、時間の調整をします。もちろん翼を広げたり、嘴を開けているような暑がってる姿が見られたら、早めに切り上げます。網戸を閉めていても、カラスや猫等の動物に注意しないと攻撃されますので、見守る必要があります。日光浴の頻度は毎日が理想ですが、最低でも週に1回くらいは行うべきです。
日光浴が難しい場合
太陽光での日光浴の替わりに紫外線ライトを使う方法があります。鳥での使用も可能なので昼間の時間に照射し、ビタミンDを合成できる効果は期待できます。しかし、屋外の光や風や風景を感じることはできないため、太陽光による日光浴の方がもちろん優れています。
鳥用の日光浴ライトはコレのみ!
ライトのソケットも買わないと使えないよ!
ルーチン!1日12時間ケージの脇にセットして照らしておくだけ!
ペレットが主食の場合
質の良いペレットやビタミン剤のサプリメントを適切に取れていれば、ビタミンDも十分に摂取できており、理論上、日光浴は必須ではありません。しかし、体内時計やストレス解消にもなる目的で日光浴をすることはお薦めします。
参考文献
- Akers RM,Denbow DM.Anatomy and Physiology of Domestic Animals.2nd ed.Digestive System.Chapter 17.John Wiley & Sons Inc.Hoboken NJ .USA.p483-527.2013
- Crissey SD,Ange KD.Jacobsen KL et al.Serum concentrations of lipids, vitamin d metabolites,retinol,retinyl esters,tocopherols and selected carotenoids in twelve captive wild felid species at four zoos.The Journal of nutrition133(1):160-166.2003
- Duffy JF et al.Peak of circadian melatonin rhythm occurs later within the sleep of older subjects.Am J Physiol Endocrinol Metab282:297-303.2002
- Donald V et al.Biochemistry. Volume one.Biomolecules, mechanisms of enzyme action,and metabolism 3rd edition.John Wiley & Sons.New York.p663-664.2004
- Elaroussi MA et al.Adaptation of the kidney during reproduction: role of estrogen in the regulation of responsiveness to parathyroid hormone.Poult Sci72:1548-1556.1993
- Holick MF.Phylogenetic and evolutionary aspects of vitamin D from phytoplankton to humans. In Vertebrate Endocrinology:Fundamentals and Biomedical Implications.Pang PKT, Schreibman MP eds.Academic Press Inc.(Harcourt Brace Jovanovich).Orlando.FL.USA.1989
- Holick MF.Vitamin D deficiency.The New England Journal of Medicine357(3):266-281.2007
- Holick MF.Vitamin D:the underappreciated D-lightful hormone that is important for skeletal and cellular health.Current Opinion in Endocrinology & Diabetes9(1):87-98.2002
- Murphy PJ et al.Nighttime drop body temperature:A physiological trigger for sleep onset?.Sleep20 (7):505−511.1997