ボタンインコ・コザクラインコの雌雄鑑別と繁殖  

雌雄鑑別

オスもメスも同じ色をしているので、体の特徴や行動などで鑑別しますが、不明瞭な点が多く、非常に難しいです。最終的には遺伝子検査で鑑別します。

体の特徴

嘴や頭の形、恥骨間距離などで鑑別しますが、個体差があります。

オス

オスの嘴はメスより大きく、頭頂部は丸みを帯びています。

メス

嘴はオスより小さく、頭頂部は丸みがありません。メスの恥骨間距離はオスよりも広いです。

行動

オス

オス特有の行動

  • 性の相手に寄り添って体を擦りつける (求愛)
  • 吐き戻しをする (発情吐出)
  • お尻をこすりつける (マスターベーション)

オスは性の対象としてメスの鳥だけでなく、飼い主である人、玩具 (おもちゃ)、鏡、止り木を相手にすることがあります。これらの性の対象を気に入り、体を擦りつけるような行動をします。オスは性に対象に対して求愛行動 (プロポーズ) をするために、餌を吐き戻しする行動をとります (発情吐出)。発情吐出は、本来メスに吐き戻した餌を与える行動なので、餌を一か所に吐くのが特徴です。発情したオスは、対象とする物に尾羽を左右に振って、お尻を止り木などに擦りつける行動 (マスターベーション) をします。

メス

メス特有の行動

  • 紙をちぎって羽にさす
  • 狭い所に潜り込む
  • お尻をあける (許容)
  • 無精卵を産む

メスは床敷の紙などを細長くちぎって、羽の下に差し込む行動 (ディスプレィ) をします。

巣作り行動として、床敷の紙をちぎって巣を作ったりします (営巣)。巣にこもる行動として、紙の下などに潜り混むような行動をします。おもちゃや餌容器の隙間に潜る行動も同じで、入れそうだなと思った狭い隙間にも入って行こうとします (巣ごもり)。お尻をあげる姿勢は、羽を広げて交尾を許容している姿勢です (シャチホコポーズ)。メスはオスがいなくても、無精卵を産みます。

遺伝子 (PCR) 検査

セキセイインコの性別は、獣医さんでも間違えることがあります。遺伝子検査は、採血をして血液を調べてもらう方法です。専門の検査機関に依頼するので、結果がわかるまでに1〜2週間ほどかかります。遺伝子検査だと、ほぼ確実に性別が分かります。

繁殖 (巣引き)

鳥を繁殖させることは巣引きと呼ばれています。相性がよく、年齢が近い雌雄の番を同居させて、巣を用意しましょう。容易に発情を起こし、繁殖が簡単にできる鳥ですが、卵塞などの繁殖疾患、卵巣・卵管疾患が多いので、計画的な繁殖以外は、無駄な発情をさせないで下さい。1年中繁殖できますが、冬は低温による雛の死亡や卵塞やなどのリスクが高いです。

鳥を繁殖させるためのサプリメント

ネクトンE

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性成熟

性成熟は6~12ヵ月齢です。オスは性的な成熟を迎えると精子が作れるようになります。メスは卵が産めるようになります。

発情

上述したようなオスとメスで発情兆候が見られます。発情させるために、栄養価の高い繁殖期用のペレットやシードに切り替えてください。産卵に備えてビタミンやカルシウムなども十分に補給して下さい。

交配

交配はまずはお見合いからです。基本的にオスとメス1頭ずつ同じケージに入れますが、相性が悪ければすぐに喧嘩が始まります。メスとオスのケージを隣同士に置いて、相性を確認してから一緒にするとよいでしょう。発情したオスはメスに対して盛んに求愛行動を示し、交尾をせまります。メスはオスを気に入ると、しゃちほこポーズをとり、尾を上げて交尾を許容します。交尾はオスがメスの背中の上に乗って、お尻をこすり合わせて精子を注入します。相性が悪い場合はペアの組み合わせに変えてください。

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産卵

交尾後にメスのケージに巣箱を用意をしますので、巣材にするために、ワラ、牧草、シュロ、紙などを与えて下さい。自ら営巣を始めます。巣箱は鳥の種類によって異なります。セキセイインコ、オカメインコ、ボタンインコやコザクラインコは木製の巣箱、ブンチョウやジュウシマツは壺巣、カナリアには皿巣を用いるとよいです。

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産卵は毎日あるいは1日起きに1個ずつ産み始め、産卵数は5~6個です。3~4個産んだ頃から抱卵を始めます。抱卵は約20日くらいで、メスは1日中巣にこもりっきりになります (巣ごもり)。出てくるのは糞と餌を食べる時ぐらいなので、1日数回ぐらいしか出てきません。オスは基本的に巣箱の中にこもらず、本来のオスの仕事は餌を抱卵中のメスに届けたり、巣箱の前で見張りをします。母鳥は神経質になっています。巣箱の中を覗いたり、ケージを移動させるのは最低限にしてください。刺激すると抱卵をやめてしまいます。なお、産卵した卵を人工孵化で孵卵させる方法もあります。

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雛・子育て

孵化が始まると、雛の鳴き声が聞こえるようになります。雛は未熟な状態の赤子で、目も耳も開いておらず、体温調節もできません。母鳥が上手に雛に餌を与えます。雛は孵化後に数日で目が開き、羽も生えてきます。全身の羽が生えそろったら、雛でなく幼鳥と呼ばれます。巣から雛が出てくるようになり、この状態を巣立ちといいます。

自ら餌を食べるようになることを一人餌 (ひとりえ) といいます。一人餌になったら、別のケージに移してあげましょう。幼鳥は3~5ヵ月後に親の羽に変わります。手乗りに育てる場合には、生後18~20日齢で巣からヒナを取り出し、親の変わりにさし餌をします。

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表:繁殖知識
性成熟6-12ヵ月齢
発情周年繁殖
繁殖回数3-4回/年
産卵数4-6個 (1日おきに産卵)
抱卵約23日
巣立ち35-40日齢

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。