爬虫類の温浴(目的・方法・時間)

お風呂のこと

陸ガメ、トカゲ、ヘビなどの爬虫類の飼育で、生体を温めたお湯につけて温浴をすることが普通に行われています。しかし、野生では温浴する状況は全くありませんので、温浴をすることの正しい解釈や決まったノウハウなどはありません。温浴はメリットとデメリットがあり、飼い主の間でも賛否が分かれます。

メリット

温浴を推奨している理由は、以下のメリットが多いという考えからきています。

・脱皮不全の予防

脱皮を促進するお湯につけると鱗がふやけて、脱皮がしやすくなります。脱皮不全がよく起こる場合には一番手っ取り早い方法です。

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・食欲がでる

温浴で体が暖まり、代謝が活発になることで体調を整えられ、食欲もあがります。

・消化管うっ滞/便秘予防

温浴の際にお湯を口にすることが多いの、胃腸の食物の流れをよくして、停滞を防ぎます。

・腎不全・痛風、膀胱結石の予防

水を飲むことで腎臓の機能を助け、腎不全・痛風を防ぎます。尿量を増やすことで膀胱結石もができないようにします。

・体を綺麗にする

甲羅や皮膚、総排泄孔の汚れを落とし、体が衛生的に保てます。餌を食べる際に食べかすなどが口の周りについてしまったり、糞を踏んづけてしま、体や四肢が汚れる場合には、温浴の際に綺麗にしてあげて下さい。

・排泄の習慣

温浴時に糞や尿をすることが多いです。毎日温浴をするような習慣があると、ケージの中での排泄が減って、掃除の手間が省けます。

・健康チェック

温浴の際に体全体を観察するので、健康チェックができて病気の早期発見につながります。温浴の一般的な方法 温浴をするには、爬虫類の体の大きさに合わせたケースや水槽などを用意して、お湯をはります。水深が深すぎると生体が安定せずに暴れだすことがあるので、しっかりと足がつく深さで、顔や鼻先が出せるくらいにします。

お湯の温度と方法は?

36℃くらいのぬるま湯?人肌より微妙に温かい温度?など飼育者によって意見がまちまちです。お湯の温度は30~38℃くらいのぬるま湯をおすすめします。温浴の時間も5~10分位が一つの目安です。時間の経過とともに水温がどんどん下がってくるので、冷たくなりますので注意して下さい。ただし治療の一環として長い時間の温浴をする場合は、お湯の継ぎ足しが必要になり、少し長く温浴をさせましょう。起床直後では体温が下がっているので、いきなり温浴させると温度差が起こり、ストレスや体調を崩す原因になりますので、起床後にしばらくたってからさせて下さい。温浴の間隔も、毎日~週に1回程度と飼い主によって様々です。しかし、消化管うっ滞膀胱結石脱皮不全のある場合は、週に複数回の温浴を勧めています。

デメリット

温浴によって、強制的に体温を上げて、食欲や排泄を促すというのは、自然下ではありえないことなので、動物に対してストレスの原因になるという考えもあります。また、温浴時に排泄を促す個体では、長時間や毎日の温浴をしてしまうと、未消化のままの糞が出ることがあります。また、温浴時の排泄は水が汚れ、その水を飲んでしまう可能性があるので、衛生上よくないです。温浴そのものの手間がかかるので、飼い主にとっては面倒になります。お湯の温度が高いと火傷を負ったり、水深が深くておぼれるような事故の話も聞きます。

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この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。