【解剖】鳥の複胃(胃が2つ)

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歯が無いんで・・・

歯を欠く鳥は胃で食物を細かく砕すために特殊な胃の形態を備えています。基本的に全ての鳥で、胃液を分泌する腺胃(前胃)と食物を 磨り潰す作用をもつ筋胃(後胃)の2つに分かれていますが、これら腺胃と筋胃の形状は、穀食性、肉食性、魚食性、草食性などの食性によって異なります〔McLelland 1990,Baumel et al.1993,Gadzev 1997〕。

腺胃

腺胃の胃壁は柔らかく、消化酵素を出す胃腺を持ち、消化腺と粘液腺を備え、胃酸とペプシノーゲンを分泌して食物を消化します。腺胃はカワセミやペンギンなどの魚食性の鳥や猛禽類で発達しています〔Duke 1989〕。

筋胃

その次に食物は強靭な硬い胃壁で囲まれた筋胃に移動します。筋胃は砂囊 、砂肝などとも呼ばれ、前胃で消化液と混合された食物をすり潰す機能を持っています〔King et al.1984〕。筋胃はオウム目やハト類などの穀食性の鳥で発達していますが〔McLelland 1979,Degen et al.1994〕、肉食性や果食性の鳥の筋胃は筋肉が乏しいです〔Gill 2007,黒田 1962〕。そして、鳥が自ら摂取したグリット(Grit)と呼ばれる多数の砂や小石を筋胃内に蓄え、筋胃の収縮運動とともに食物を摩砕する役目を持っています〔加藤ら2000〕。筋胃内腔は硬結なケラチン様物質で覆われています。腺胃からの胃酸と筋胃からの分泌液が反応してケラチン様物質層が形成され、コイリン(koilin)膜あるいはペリクル(Pellicle)〔胃小皮〕と呼ばれ、内腔は粗雑で、食物をすり潰すのにグリットとともに役立っています〔Wilkinson et al.2018〕。猛禽類や一部の鳥では、餌として食べた小動物の消化できない羽毛や骨をペリット(Pellet)として、生理的に吐き出されます。

グリットの補給にはコレ与えて!

餌やボレー粉とは別に与えて!結構口にしますよ!

鳥類の唾液腺は舌根など様々な場所にあります。唾液および粘液を生成し、飲み込む前に食物を湿らせる〔Gill 1994,Samar et al.2002)。鳥類の唾液腺は哺乳類と比較すると一般的にあまり発達していませんが〔Klasing 1998〕、果物や花蜜などの柔らかい餌を食べる鳥よりも穀食や昆虫食の鳥の方が発達しています〔Iwasaki 2002〕。

もっと鳥を勉強したい時に読む本

カラーアトラスエキゾチックアニマル鳥類編

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参考文献

  • Baumel J,King A,Breazile J,Evans H et al.Handbook of Avian Anatomy:Nomina  Anatomica Avium 2nd ed.Publication23.Publications of Nuttall Ornithological Club.Cambridge.1993
  • Degen AA,Duke GE,Reynhout JK.Gastroduodenal motility and glandular stomach function in young ostriches.1994
  • Duke GE,Place AR,Jones B.Gastric emptying and gastrointestinal motility in Leach’s Storm-Petrel chicks (Oceanodroma leuchoroa).Auk106:80‐85.1989
  • Gadzhev S.Anatomy of Domestic Birds.Jusautor.Sofia (BG).1997
  • Gill FB.Ornithology 3rd ed.WH Freeman and Company.New York.2007
  • King AS,McLelland J.Birds:Their Structure and Function,2nd ed.Bailliere Tindall.London.1984
  • McLelland J.Digestive system.Form and function in birds1.King AS,McLelland J eds:101-132.1979
  • McLelland J.A Colour Atlas of Avian.Anatomy.Wolfe Publishing Ltd.London.1990
  • Wilkinson N et al.Ultrastructure of the gastro intestinal tract of healthy Japanese quail (Coturnix japonica) using light and scanning electron microscopy.Animal Nutrition4(4):378-387.2018
  • 黒田長久.動物系統分類学10(上).脊椎動物(Ⅲ).中山書店.東京.1962
  • 加藤嘉太郎,内山昭二.家畜比較解剖図説.養賢堂.東京.2000

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。