鳥のクリッピング(羽切りのこと)

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クリッピング

鳥の羽切り(クリッピング:Clipping)とは、翼に生えている風切羽の一部を切ることで、鳥の飛行能力を無くしたり、低下させたりする目的があります。クリッピングによる飛行能力の低下は次の換羽で新しい羽が生えてくるまでであり、生涯飛べなくなるわけではありません。

方法

一般的な処置は、両翼の初列風切羽を雨覆と同じ長さに切り、風切羽の長さの約半分から 3 分の 1 を除去することになる。クリッピングは外側の2~3枚の風切り羽を残す方法と全ての風切り羽を切る方法があります。

外側の2~3枚の風切り羽を残す方法

切った後に折りたたんだ風切りは短く見えないので、見た目は変わらないです。ただし短い距離であれば飛ぶ鳥もいます。

セキセイインコの羽切り

全ての風切り羽を切る方法

風切り羽をすべて短く切りますが、切った後は翼がヒナにように短く見えます。通常は飛ぶことは全くないはずです。

筆毛や血管が走行している幼若な羽毛を切ると出血するため、注意して下さい。

インコの羽

風切羽を切る位置や枚数を調節することにより、完全に飛べなくすることもできれば、高く飛び上がれない程度に調節することもできます。ただし、 片翼のみをクリッピングすると、鳥は空中でバランスを崩し、物に衝突する恐れがあるので、推奨できません。このクリッピングは、メリットとデメリットがあり、鳥から飛ぶことを奪うのは虐待だと主張する人もおり、論争になっています。

メリット

最大のメリットは飛翔に伴う逃亡や事故を防ぐことです。開いている窓やドアから屋外へ逃げて迷子になるのを予防し、部屋の中での天井、ファン、窓、ドアや家具に激突する事故を予防できます。そして、クリッピングによって飛行能力を失えば、鳥が飼育者に依存する時間が増えて馴れると言われています。社会的な群れをなす鳥は、独立性を制限するためと、飼い主との社交を促します。

デメリット

一般に雛や幼鳥にとって、翼を羽ばたかせて空中に飛んで、地上に着地するという一連の動作を学ぶことは、生理的行動であるため必須です。クリッピングすることで事故が防げるというイメージがありますが、完璧に安全であるという証拠はなく、以下のような様々な状況や事故に遭遇する可能性もあります。飛翔しないことで、運動不足になって肥満になりやく、飛翔は胸筋を使用するが、飛翔しないことで筋量は必然的に減ります。オウム類は飛び回る以外にも、屈強な脚を活かして木の上を自在に歩き回りますが、特にフィンチはそれができないため、肥満と筋力低下になりやすいです。床にいる時間が長くなることで、人に踏まれたり、犬や猫などの同居動物から襲われるリスクも高まります。鳥は飛行中に速度を落とす必要があると、翼を垂直に伸ばし、初列の風切羽を抵抗させて、空気ブレーキとして利用します。しかし、 クリッピングされることで、ブレーキの能力も低下し、高速で落下しやすく、外傷を負いやすいです。もちろん、クリッピングによる身体的影響に加えて、行動面や精神面での悪影響も発生する可能性があります。 鳥は本能的な反射行動として、脅威から逃れる最初の手段として飛翔して、恐怖心を消失させます。 この行動がクリッピングをすることで、生来の反射行動ができずに、鳥の恐怖心は治りません。 これは、毛引き・羽咬自傷などの行動上の問題やストレスを引き起こす可能性があります。また、クリッピングは翼に生えている風切羽を切るため、見た目に影響を与える。風切羽が短いため、成鳥であっても幼若鳥に見えるような美観の低下があります。

まとめ

クリッピングは飼い主として行うか行わないのか決めて下さい。どちらが良いのかということは誰も決めれません。

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。