鳥の心臓

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飛ぶための心臓

鳥の心臓血管系は呼吸器系とともに、飛翔時に十分な酸素と代謝を維持できるように進化し〔Scott et al.2011,Butler et al.2016〕、飛翔する体温の高い鳥類は、四腔の心臓、高収縮期血圧、高代謝によって効率的な循環・血管系を発達させました〔Butler et al. 2016,Gavrilov 2013〕。

心臓バクバクじゃん

鳥の心臓も人間の心臓も、胸腔の前部の正中線に沿って位置していますが、心臓の長軸は哺乳類と異なり、正中線のわずかに右側にあります。鳥は人間よりも代謝率が高く、鳥の平均体温は 40~42°Cで、哺乳類よりも高いことが特徴です。ニワトリの安静時の心拍数は約245拍/分ですが、最大400 拍/分に達することもあります (アオジハチドリの心拍数は1260拍/分にもなる)。鳥類は飛翔を維持するために必要な高い有酸素が必要になるため、哺乳類よりも心臓が大きく、単位時間当たりより多くの血液を送り出す傾向があります〔Hartman 1955,Brush 1966,Butler et al.1977〕。ホバリング飛行をするハチドリでは、鳥類の中でも最大の心臓を持っています〔Hartman 1961〕。

2心房2心室

鳥類は哺乳類と同様に心房中隔と心室中隔があり、2房2心室の構造で、弁も備えています。酸素化された血液と脱酸素化された血液を分離し、体循環と肺循環を完全に分離できます。鳥の心臓の心室は、人間の心臓よりも筋肉量が多く、心室のスペースが狭く、外見上の鳥の心臓は人よりも細くて尖っているように見えます〔Lu et al.1993〕。しかし、鳥類も心膜嚢で囲まれており、心嚢水で満たされています。鳥の心臓はより滑らかな壁とより単純な弁を持つことも特徴で、血液が送り出される際の摩擦が軽減されて、流出されやすくなっています〔Lu et al.1993〕。人の右房室弁は三尖弁ですが、鳥は単一の螺旋状の弁、人の僧帽弁は二尖弁ですが、鳥は三尖弁です。肺動脈弁と大動脈弁は、鳥と人の両方で三尖弁です〔Lansford et al.2020〕。なお、哺乳類は左大動脈弓であるが、鳥類では右大動脈弓が発達しています〔Lansford et al.2020〕。


参考文献

  • Brush AH.Avian Heart Size and Cardiovascular Performance.Auk83:266–273.1966
  • Butler PJ,West NH,Jones DR.Respiratory and cardiovascular responses of the pigeon to sustained,level flight in a wind tunnel.J.Exp.Biol71:7–26.1977
  • Butler PJ.The physiological basis of bird flight.Philos.Trans.R.Soc.B: Biol.Sci371.2016
  • Gavrilov VM.Origin and development of homoiothermy:A case study of avian energetics.Adv.Biosci.Biotech4:1–17.2013
  • Hartman FA.Locomotor mechanisms of birds.Smithson.Misc.Collect143:1–91.1961
  • Hartman FA.Heart Weight in Birds.Condor57:221–238.1955
  • Scott GR.Elevated performance:The unique physiology of birds that fly at high altitudes.J.Exp.Biol214:2455–2462.2011

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。