雌雄鑑別
雌雄鑑別は難しくはありません。オスは生殖孔(包皮の出口)と肛門の距離がメスよりも長く、わずかな膨らみをもつ陰嚢がみられます。
生殖孔の開口部を押すとペニスが露出することで雌雄の鑑別ができます。なお、鼠径輪が閉じていないために、オスの陰嚢はわずかにしか膨らみません。
メスは生殖孔と肛門の距離がオスよりも短いです。しかし、メスの生殖孔は円錐形で、一見するとオスのペニスと似ていますので注意して下さい。
繁殖
野生のチンチラは繁殖する季節が決まっていますが、飼育下では1年中いつでも繁殖することが可能です。なお、チンチラは毛色によっては劣勢致死死遺伝子を持ち、繁殖をする場合は組み合わせにも注意して行わなければなりません。
表:致死遺伝子のために交配してはいけない毛色
ブラックベルベット×ブラックベルベット |
ホワイト×ホワイト |
ホワイト×パイド |
パイド×パイド |
性成熟
オスもメスも8ヵ月齢過ぎには性的な成熟を迎えます。オスは精子が作れるようになり、メスは子供を作れる体になります〔Weir 1970〕。オスとメスの体格差がある場合は交尾がうまくいきませんので注意してください。
発情
発情したオスの陰嚢はわずかに赤色を帯びてきますが、明確ではありません。発情したメスは、30~50日間の発情期が繰り返し起こります〔星ら 1996〕。発情すると、外陰部は赤色を帯びて腫大しますが、あまり明確ではありません。
交配
交配はお見合いからになりますが、チンチラの繁殖で難しいのは、相性の問題です。基本的にオスとメスを各1頭ずつで行います〔富永 1977〕。
それぞれのケージを並べて、お互いの匂いをかがせて、存在を意識させます。慣れてきたらメスをオスのケージに入れます(オスをメスのケージに入れると、メスがオスを攻撃する可能性が高いので、注意してください)。しかし、相性が悪ければすぐにケンカが始まります。発情したオスはメスの臭いを嗅いで、興奮してきます。メスはオスを気にいると、ロードシス(Lordosis)と呼ばれる尾を上げた姿勢が見られます。これは交尾を許容しているのです。交尾はオスがメスの背中に回ってペニスを挿入します。しかし、交尾をしない場合は別の日に再び行ってください。相性が悪い場合はペアの組み合わせを変えます。交尾後はオスとメスは別々のケージに戻しますが、確実に妊娠させたい場合は、数日以内にもう一度交配をさせて下さい。交尾ができているかの確認は、メスの陰部に膣栓がついているか否かで判定できます また、1頭のオスに4~5 頭のメスをあてがうハーレム方法をとる場合もありますが〔Zeinert 1983〕、一般的ではありません。
妊娠・出産
妊娠期間は105~118 日と、他のげっ歯類と比較して長いです〔富永 1977〕。チンチラは寒い山の上で生活をしていますので、子供が生まれてもきちんと育てられるような環境ではありません。そのためお腹の中で子を可能な範囲で大きく育ててから出産するというシステムをとっているのです。妊娠診断は動物病院で、触診、X線検査や超音波検査で行います。妊娠中のチンチラには栄養価の高い餌が必要になりますので、ペレットは繁殖期用のものに変えるとよいでしょう。
妊娠した子供の数によりますが、後半になるとお腹が大きくなってきます。この時期に巣箱の用意をします。出産が近づくと、巣箱に牧草を運んで、巣を作り始めます。
偽妊娠が起こることもあり、発情行動や営巣が頻繁に見られ、乳腺が張って母乳が出てきます。産まれてくる子供の数は、2(1~5)頭です〔Hillyer et al.1997〕。
赤ちゃん・子育て
チンチラは乳首が4個ありますが、母乳がでるのが2個とも言われています。そのため3頭以上産まれた場合は取り合いになってしまい、弱い赤ちゃんは母乳が飲めなくて成長不良になる可能性がありますので注意して下さい。生まれたばかりの子はすでに目が開いて毛も生え、と早熟した状態です〔Hillyer et al.1997〕。
赤ちゃんは母親から母乳を14日間位もらいながら、既に歯も生えていますので、柔らかいエサやふやかしたペレットなら食べることもあります。最初は柔らかい餌で慣れさせ、離乳するようになったら徐々に固い餌に変えていきましょう。消化機能が完全に発達するの少し時間かかりますので、完全な離乳は6~8週齢以降が理想です。子育ては母親だけで行いますので、安心して子育てできるような環境や食事の管理を行って下さい。出産後は神経質になるため、ケージ内は暗くして、静かにしましょう。掃除も毎日やると母親にストレスを与えるので、出産前にきちんとして、しばらくは最低限の掃除にします。チンチラの赤ちゃんは母親と一緒にいる時間よりも、赤ちゃん同士でくっついている場合が多いです。
表:繁殖知識
性成熟 | オス8.5ヵ月齢 メス8ヵ月齢〔Weir 1970〕 |
発情形式 | 野生では季節繁殖(南半球5-11月)〔Walker 1975〕 飼育下では周年繁殖 性周期 30-50日〔Hillyer et al.1997〕 |
妊娠期間 | 105-118日〔富永 1977〕 |
産子数 | 2(1-5)頭〔Hillyer et al.1997〕 |
離乳 | 6-8週齢〔Hillyer et al.1997〕 |
これがポイント!
・雌雄鑑別はそんなに難しくはない
・致死遺伝子のために交配してはいけない毛色がいる
・チンチラはお見合いが難しい
・妊娠期間がなんと100日超え
・赤ちゃんは毛が生えて自分で動ける
参考文献
- Hillyer EV,Quesenberry KE,Donnelly TM.Biology,Husbandry,and Clinical Techniques.Guinea Pig and Chinchillas.In Ferrets,Rabbits,and Rodents.Clinical Medicineand Surgery.Hillyer EV, Quesenberry KE.eds.WB Saunders. Philadelphia.US.1997
- Hoefer HL.Chinchillas.Veterinary Clinics of North America. Small Animal Practice24(1).p103-111.1994
- Zeinert K.Husbandrg of chinchillas.Veterinarry Medicine/Small Animal clinician Aug.p1292-1294.1983
- Weir BJ.Chinchilla.In Reproduction & Breeding Techniques for Laboratory Animals.Hafez ESE ed.Lea&Febiger.Philadelphia.p209-223.1970
- 富永聡、辻紘一郎.チンチラ.実験動物技術編.田嶋嘉雄編.東京.朝倉書店.1977