用途
特にげっ歯類では巣穴を掘って身を隠すため、飼育には必要不可欠なもので、役割は以下の3つです。
- 歩行しやすくする
- 巣穴を掘らせる
- 保温する
歩行しやすくする
ケージの床が滑りやすいと歩きにくいので、基本的にクッション性のあるものを敷いて下さい。床材が細かいと足が埋まって歩きにくいです。
巣穴を掘らせる
ハムスターは巣穴を掘って生活をしています。性格的に床敷に穴を掘って身を隠そうとするため、床材をかきわける行動がよく見られます。
巣穴を掘る行動は習性の一つで、ストレス解消にもなります。巣穴が掘れる材質の床材を厚く敷くか、体が隠れる小屋を用意してあげましょう。
保温する
ハムスターは低温が苦手で、気温が下がる冬は、巣穴に潜って体を暖めます。床材が保温性が高いものだとハムスターは喜びます。
床材の量や深さ
床材に潜らせるには、大量の床材が必要になります。大まかな目安として、ハムスターではケージの床面に高さ2~5cmくらい敷き詰めて下さい。潜るのが好きな場合は、2~3倍の床材の量が必要になります。夏になると暖かくなって床材に潜る回数が減るため、様子を見ながら半分程度に減らしましょう。冬は保温のためにやや多めに敷いてあげましょう。
湿度にも影響
床材はケージ内の湿度にも大きく影響します。糞や尿で汚れると、湿気が高くなること以外にも、細菌が増殖してアンモニアが発生します。アンモニアは悪臭のもとになり、さらに目や鼻の粘膜を刺激して結膜炎や鼻炎の原因になります〔Reeb et al.1998〕。給水器からの水が床敷に垂れることでも湿度が高くなりますので注意して下さい。
交換
床敷の交換の頻度は飼育者の判断になりますが、動物の身体の大きさや飼育頭数、糞尿の排泄量、床敷の外観と汚染程度などによって異なります。交換を毎日することに越したことはないのですが、床敷には動物がマーキングのために匂いをつけていることが多く、その匂いが少なくなった床敷では不安を覚えるかもしれません。床材を全交換するタイミングは、最低でも月1回の頻度で行って下さい。動物が不安のようであれば、元の床材も交換せずに、半々くらいの交換をしましょう。特にげっ歯類は体が濡れることを嫌がるので、給水器から水が垂れたり、尿で濡れたりしたら、すぐに部分的に交換するようにして下さい。
選び方
理想の床敷は動物種やケージのタイプなどによって異なり、それぞれ長所と短所があります。床敷はケージ内の温度や湿度にも影響します。糞や尿で床敷が汚れると、湿気が高くなること以外にも、細菌が増殖してアンモニアが発生します。アンモニアは悪臭のもとになり、さらに目や鼻の粘膜を刺激して結膜炎や鼻炎の原因になります〔Reeb et al.1998〕。給水器からの水が床敷に垂れることでも湿度が高くなりますので、注意して下さい。
牧草
柔らかめの牧草のチモシーの三番刈りが良いと思います。
メリット
床敷を動物が食べる可能性があり、食べても安全なものを優先する場合は、植物性の素材として牧草がよいです。牧草は香りもよいので、その匂いで動物が安心します。
デメリット
毎日交換するにはコストパフォーマンスが悪いです。またマメ科の牧草は蒸れると毒性を帯びるために、イネ科の牧草を使用して下さい。
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木製チップ
一般的に実験動物のげっ歯類では木製のチップを厚く敷くことが多いです〔Gordon 2004〕。
メリット
吸湿性が高く、保温性に優れているのが特徴です。ハムスターは木の香りを嗅ぐと安心するみたいです。広葉樹や針葉樹などの種類も豊富で、ウッドチップとも呼ばれ、フレーク状に加工されています。細かい木片状~ふわふわのフレーク状まで、カットの仕方で触り心地も抜群になります。圧縮した商品もあり、コストパフォーマンスも優れています。
デメリット
木製チップは素材によって、動物への悪影響もあります。松の木製チップは放出する芳香族炭化水素がラットの肝酵素に影響し〔Buddaraju et al.2003〕、マウスでは発癌性も報告されています〔Jacobs et al.1978〕。特に松や杉などの針葉樹のチップは粉塵も含めて、動物のみならず人にも結膜炎や皮膚炎などを起こすアレルゲンとなります〔生野ら 1988〕。アレルゲンとなるのは成分である芳香族炭化水素で、ラットでは肝不全を起こし〔Buddaraju et al.2003〕、マウスでは発癌性〔Jacobs et al.1978〕も報告されています。そのため、ポプラやユーカリなどの広葉樹の木製チップはアレルゲンになりにくいことから、床敷への使用が推奨されています。しかし、針葉樹の木製チップも熱処理を行うことによって、芳香族炭化水素の濃度を減らすことができます〔局 1988〕。
針葉樹の木製チップも熱処理を行うことによって、芳香族炭化水素の濃度を減らすことができます〔局 1988〕。最近の商品は全てが加熱殺菌されていますので安心して使えます。
針葉樹マット
マルカン ふわふわベッド
コストパフォーマンス抜群!スギやマツより低アレルギーで、なんとホコリも出にくいなんて!
広葉樹マット
マルカン やさしい広葉樹マット
アレルギーが心配ならコレ!スギやヒノキに比べて低刺激な広葉樹を使用したマットです。
バージンバルプ???
マルカン クリーンマット ふんわり仕上げ
ウサも、ハリも・・これ断トツ1位!木材を材料にして製造された新しいパルプ素材!低アレルギー、消臭、抗菌・・・・新世代の床敷。白マットで、糞や尿のチェックがしやすい。ふわふわで通気性抜群。ハーブ配合で防ダニ効果も・・・すごい!
紙
紙を細かくカットした紙製チップはクッション性と吸湿性とに優れています。紙製チップ以外にも、ティッシュやキッチンペーパーなども細かく裂いて床敷に使えます。
メリット
クッション性が高いので、ハムスターにとって潜り込みやすく、やんちゃなハムスターが高いところから落ちても安心です。尿の色や体からの出血があると、紙製の床材が白いと色がついてよく分かります。病気の判断をする際に特別に使用してもらうこともあります。
ペーパーパルプと呼ばれている床敷は一見すると再生紙(古紙)を回収して原料としたものを連想するが、多くは木材から直接作られたものである。バージンパルプと呼ぶ場合がある。パルプとは主に製紙に用いるために分離した植物繊維と指します。古紙を原料とするパルプでは脱墨して、紙を水に溶解して、紙繊維以外の異物(フィルムや粘着性樹脂)を分離・除去し、用途に応じて白さを高めるよう漂白処理を加え、脱水・乾燥し紙原料の古紙パルプとなる。木材パルプは、木材のをチップしたものを処理して製造されます。そして、紙はアレルゲンにならないことから刺激性が無く、粉塵もないため、木製のチップを使ってアレルギーの疑いがあった場合は紙に変更しま。
デメリット
紙の素材が軽いので動物が潜ってかきまわすことでケージの外まで飛び散ってしまうことです。
市販の紙製チップではなく、新聞紙を細かくカットしたもので十分だと思われている方も多いかもしれません。しかし、毎回細かくカットする手間がかかり、インクによって毛が黒くなってしまったり、インクのにおいを嫌う動物もいます。
再生紙
KAMIYUKA~紙床~
ふんわり加工でもぐりやすい!低アレルギー素材だけでなく、リサイクル原料で作られていて環境にやさしい商品。
トウモロコシ
近年はトウモロコシの芯や穂軸を細かく切断して乾燥させたコーンチップが注目されています。
メリット
コーンチップは食べても安全で、吸水性以外にも尿のアンモニアなどの有毒なガスも吸着します〔Perkins et al.1995〕。木製や紙製チップではホコリが気になる場合がありますが、コーンチップではホコリもほとんど出ません。
デメリット
安全性の高いコーンチップですが、高価でペットショップでも取り扱いがないことが多いです。本来食品素材のため、トイレの掃除を怠ると、カビや腐敗する恐れがあります。一般的に高額であもあり、コストパフォーマンスが悪いのでトイレだけに使用していることが多いかもしれません。
コーンチップ
ドギーマンハヤシ 小動物のコーンフロアサンド 4.5L
あまり売ってないよ!消臭性・吸収性・吸湿性にも優れ、夏場もサラッと気持ちよく過ごせる。一般的な木製・紙製の床材と比べるとホコリが出にくく、低アレルギーなので、静電気の発生も少ないです。
コーンチップ
マルカン コーンクリーンベット 900ℊ
トウモロコシの穂軸100%を粉砕した床敷!安全性も高く吸水性に優れ、ホコリも出にくく色も自然で動物によくマッチします。
綿
化学繊維である綿などを床敷きとして使われます。
メリット
綿は保温効果があるため、冬の寒い時にはよいと思います。綿を木製チップ床敷に混ぜて使うことで腰がでて、げっ歯類などは巣作りをします。
デメリット
綿は口に入れて食べてしまうと消化管閉塞を起こすのが欠点です。繊維がほぐれて脚に絡まって怪我をすることもあります。
綿
マルカン ふわふわふとん スノーホワイト
天然綿原料100%!巣作りにぴったり!。保温性が高い上、湿気もよく吸収・発散し、ケージ内をさわやかに保ち、ほぐれやすい短い繊維の綿を使用しているので脚に絡みにくいです。
営巣のための素材で、食べても安全な物を使った床材も販売されています。
営巣をさせるならコレ!
マルカン ハムちゃんの寝床作るんで巣
ハムスターが巣作りが観察できる!天然のケナフを乾燥させたもので、ケナフはティッシュペーパーやコーヒーフィルターの原料としても有名な天然素材。
土
最近はあまり土の床敷は見かけなくなりました。
メリット
なんと言っても見かけがワイルドです。そしてバクテリアにより、排泄物や餌の残りを分解、臭いも抑えます。
デメリット
動物の体が汚れます。そして食べかすなどに小ハエがわくこともあります。
参考文献
- Buddaraju AK,an Dyke RW.Effect of Animal Bedding on Rat Liver Endosome Acidification.Comp Med53(6):616-621.2003
- Gordon CJ.Effect of Cage Bedding on Temperature Regulation and Metabolism of Group-housed Female Mice.Comp Med54(1):63-68.2004
- Jacobs BB,Dieter DK.Spontaneous hepatomas in mice inbred from Ha:ICR Swiss stock:effects of sex, cedar shavings in bedding, and immunization with fetal liver or hepatoma cells.J Natl Cancer Inst61(6):1531-1534.1978
- Perkins SE,Lipma NS.Characterization and Quantification of Microenvironmental Contaminants in Isolator Cages with a Variety of Contact Beddings.Contemp Top Lab Anim Sci34(3):p93-98.1995
- Reeb CK,Jones RB,Bearg DW,Bedigian H,Myers DD,Paigen B. Microenvironment in ventilated animal cages with differing ventilation rates, mice populations, and frequency of bedding changes.Contemp Top Lab Anim Sci37(2):43-49.1998
- 生野麻美子,江副和彦,羽田俊六.皮膚病診療10:693-696.1988
- 局博一.環境要因の生態管理と環境基準.最新実験動物学.前島一淑,笠井憲雪編.朝倉書店.東京:51-59.1988