ヘビの拒食の対応

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拒食はやばいのか

爬虫類は外気温で体温ならびに基礎代謝を調整し、エサを食べない時には消費するカロリーも抑えることができます。特にヘビは餌を食べている時と食べていない時では、代謝は10倍位違うと言われています。ヘビは餌の消化吸収効率が非常によく、90%以上ともいわれており、エサとなるマウスはヘビにとって完全栄養食といわれています。一度完全栄養食のマウスを食べた後では数日の拒食では死ぬことがありません。1~2週間食べないからといって強制給餌をしないで下さい。代謝が落ちている状態で消化器系の動きが悪い時なので、無理やり餌を与える行為こそ危険かもしれません。まずは状況をよく考えて、拒食の原因を考えてからにしましょう。

拒食の原因

食欲不振の原因は数多く、複数の原因が絡んでいる場合もある。大きく分けて環境ストレス、生理現象、そして病気の3つになります。

環境ストレス

ヘビは縄張り意識が強いので、基本的に1つのケージに1頭で飼育します。神経質な面も持っていますので、飼育環境の変化が心理学的な要因となります。拒食する環境要因はたくさん考えられます。

温度・湿度

至適環境温度(POTZ)でないとヘビの消化機能は動きません。温度や湿度が高くても、低くてもいけませんし、急激な変化も苦手です。

→温度計・湿度計で温度・湿度をチェックして下さい。

日照時間

秋や冬に日照時間が少なくなると、急に食欲がなくすことがあります。逆に過度に光をあてるのも原因になります。ヘビの種類によって、昼行性か夜行性なのかでも、部屋の明るさを考えましょう。

→暗すぎたり、明るすぎなか、チェックして下さい。

気圧

季節ごとの気圧の変化が、ヘビの行動パターンに影響を及ぼします。その結果、食欲不振になることがあります。

→台風などが近ずいていませんか?

振動

ヘビのケージを揺らしたり、近くでの工事で振動を与えることでも、拒食します。

過度のコミュニケーション

飼い主がいつも触ったり、いつも誰かがそばを通ったり、ケージの清掃回数が多い場合ですら、食欲減退になることがあります。時には、生き餌がヘビを傷つけてしまい、結果として、マウスに怯えるようになってしまうこともあります。

カーペットパイソン

ヘビのハンドリングについて!

→触り過ぎていませんでしたか?

シェルター

ヘビが隠れるシェルターが大きすぎたり、小さすぎたり、気に入らないと拒食の原因になることがあります。同様にグリーンパイソンなどの樹上性のヘビは、安定した枝がなければ、餌を食べようとはしないです。

→シェルターの大きさはどうですか?

ケージ

ヘビの必要に応じて、より大きな (あるいは小さな)ケージに移動させてやると、餌を食べ始めることも多いです。

→ケージが大きすぎませんか?

好み

ヘビも特定の餌を好むことはよく知られています。しかし残念ながら、何を好むのかはヘビに聞いてみないとわからないです。中には死んだ餌しか食べないのもいれば、生き餌しか食べないヘビもいます。食欲不振の時に生き餌を与えると食べることがあります。

→ヘビに好みを聞いてみる?

温度

特に温度で餌を探知するボアやパイソンでは、餌の温度が原因になります。冷凍マウスを解凍させて与えますが、時間が経過し、冷めたエサには興味を示しません。

→マウスが冷たくないですか?

冷凍マウスの解凍についての詳細な解説はコチラ!

大きさ

餌を与える人が変わって、マウスの大きさが異なると食べません。

→餌が大きくない?

生理現象

脱皮前

脱皮の前は、一時的に拒食になります。

→脱皮前で目が白くなっていませんか?

ヘビの脱皮

繁殖期のオス

繁殖期のオスのヘビはやや神経質になっており、興奮をしています。餌も食べないことも珍しくはありません。

→気があらくなっていませんか?

妊娠中のメス

妊娠中のメスのヘビが餌を食べなくなります。卵が発育し、ヘビの体内で大きな容量を占めるようになり、胃腸を圧迫するためです。妊娠は正常ですが、卵巣や卵管疾患、あるいは変性卵は卵塞を起こします。

→体が卵で太くなっていませんか?

大食いした後

ヘビに餌を与えすぎると、その後絶食になることがあります。ヘビの中には、大食いした後は、しばらく絶食するというのが自然なヘビもいます。

→前回の食事でマウスたくさん食べていませんでしたか?

病気

拒食ならびに食欲不振を起こす病気は多数あり、卵巣・卵管疾患、卵塞、マウスロット(細菌性口内炎)肺炎寄生虫、腸閉塞、ビタミン・ミネラル不足などがあげられます。病気の判断は動物病院で診断してもらいましょう。

まとめ

ヘビの拒食はよくあることです。環境や餌やりを一つ一つ確認して、しばらく様子をみて下さい。それでも、食べない時は一度動物病院で病気の有無を受診して調べてもらいましょう。

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。