グリーンイグアナの飼育

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同居飼育

イグアナは成長が早く、体の大きさに合わせて、飼育環境を考えなければなりません。成体になると全長が2mを超えることも珍しくはありません。大きくなることも考えて、責任をもって飼育できるか考えて下さい。賢い動物です。飼い主を認識できるだけでなく、餌やトイレの場所も理解し、しつけもできます。

グリーンイグアナ

爬虫類の病気と飼育の関連性(まずは読んで)!

飼育

飼育頭数

イグアナは基本的に縄張り意識が強いため、単独で飼育しないとストレスになります。

グリーンイグアナのオス

特に発情したオス同士は激しい喧嘩になります。メスであれば複数で飼育できます。

ケージ

イグアナはすぐに大きくなりますので、成長に合わせて飼育のケージやスペースを変える必要があります。幼体は水槽や小さいケージなどでも飼育できます。

イグアナケージ

成長とともに大型の金網ケージや観葉植物用温室などに変えますが、大型かつ丈夫でないと破壊されますので注意して下さい。

温室の飼育はガラスを壊すこと以外にも、透明なガラスの壁なので鼻をぶつけてケガをしたり、運動不足におもなりがちです。

大きくなると広いスペースが必要となりますが、野生では樹上性であるため、高いところに登りたがる習性もあります。可能な限り多くの縦の空間を、つまり立体的な空間を必要とします。木の枝や幹をケージ内で斜めに設置し、イグアナが安定して木に登り、上下に移動できる空間を作ってあげてください。可能であれば踊場を設けて階層を作ってもよいでしょう。

イグアナ飼育

幼体は急激に成長し、最初の1年で全長約1mに達し、2~3年で成体の大きさになるのが普通です。成体では部屋での放し飼いになり、そのスペースが用意できない限り、一般家庭での飼育はお勧めできません。

床敷

床敷は大きな問題になりません。樹上で排泄を行い、糞や尿が床に落ちるため、便宜性を優先する場合は新聞紙などの紙でもよいです。

温度・照明

ケージ全体に紫外線を出す紫外線ライトを設置し、赤外線を出すバスキングライトをケージ内の端の止り木などの高い所を照射して、局所的に高温の部分を作り、体温を上げるホットスポットを設けます。特にイグアナは成長速度が速いので、温度管理と紫外線は他の爬虫類と比べて重要になります。

イグアナ飼育

一般的なグリーンイグアナの至適環境温度域は約30~37℃(ホットスポットは37~40℃)で、夜は約25.0℃にまで下げてもよいです〔McKeown 1996〕。温度はしっかりと温度計で測定するべきです。そして、昼夜の温度変化に対して心配ならば、サーモスタットで温度調節することも可能です。

イグアナ日光浴

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ライト類は朝に点灯し、夜間は消灯します。冬になると夜は気温がさ下がりますので、保温球やヒーターなどで補助的に保温対策をします。紫外線も赤外線も出るでメタルハライドランプは便利です。メタルハライドランプを使用する場合はケージの端に照射するようにします。春から夏にかけて、可能であればわずかな時間でも、窓ぎわやベランダを使って太陽光による日光浴をさせましょう。太陽光に勝るものはありません。しかし、真夏などは熱中症にならないように注意して下さい。

イグアナ飼育

特に紫外線不足はイグアナの骨の成長に影響を与え、代謝性骨疾患を起こします。成長不良や骨が変形します。

イグアナのMBD

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湿度

イグアナは熱帯雨林に生息しており、多湿の環境を好みます。最低限の湿度を保つことを考えてください。理想の湿度は50~70%〔Barten 1996〕で、可能であれば温浴も定期的に行うとよいです。湿度が不十分で脱水が起こると、脱皮不全消化管のうっ滞腎不全ならびに痛風の発症要因になります。湿度を保つためには、飲水用の水容器をケージ内におくだけでも多少は上がります。

温浴

野生のイグアナはて、水辺の木の上で生活をしており、いつでも水へのアプローチが可能です。

イグアナ飼育

ペットのイグアナでは温浴をすることが勧められています。温浴をすると、水分をとる以外にも、体もきれいになり、食欲も出てきて、動きが活発になってきます。部屋での放し飼いの時は水槽を部屋に置いておくと勝手に中に入り泳ぐこともあります。

イグアナ

放し飼い

大きく成長したイグアナはケージで飼育することが限界になり、部屋で放し飼いをすることになるでしょう。樹上性であるため、ラックなどで高い所に登れる環境を作ります。高い所にバスキングライトでホットスポットをつくり、エサを食べたり、水を飲める場所を設け、部屋全体の照明も紫外線ライトをつけて下さい。

イグアナの飼

部屋の中で高さのある所を好んで移動します。ネットを張ったり、色々と工夫をしましょう。

放し飼いは、家具などの破壊の恐れ、あるいは部屋に落ちている色々な物を口にしてしまうので(消化管内異物)の可能性もあるため、注意しましょう。イグアナはとても頭の良い動物なので、扉や窓を前足でひっかいたり、顔を突き出して開けて外へ脱走すうような事例も報告されています。部屋の中で散歩される際は必ず鍵を締めましょう。

グリーンイグアナと人は部屋の中で共存するため、グリーンイグアナは飼育者を認識し、馴れてくると人に抱かれることも嫌わなくなります。

グリーンイグアナ飼育

イグアナはトイレのしつけをすることが可能ですが、個体差もあります。トイレは風呂場、あるいは猫用トイレを利用します。風呂場は、汚れても平気ですし、すぐに水で流せます。猫用トイレを利用する場合は、鹿沼土などをトイレに敷いてあげると掃除が楽になります。季節的にベランダや庭での太陽光を取り入れた飼育も可能ですが、逃亡だけには十分に注意してください。ベランダでは檻を作って放しますが、熱中症を予防するために、日蔭や水場も用意して下さい。

イグアナ日光浴

庭での飼育では、高い木を植えておくと、その上に登って逃走する恐れがあります。また、植物をエサとして食べる恐れがあるので、中毒になるような植物は取り除きます。口に入るような釘などの金属片を片し、殺虫剤などの散布はしないようにしましょう。

イグアナ日光浴

ポイントはコレ(飼育環境)!

・ケージ飼育は幼若期のみ
・成体は部屋で放し飼い
・昼行性
・太陽光による日光浴をさせる
・屋内では赤外線ライトと紫外線ライトを使う
・ケージ内で温度勾配をつける
・多湿な湿度をつくる
・冬眠はしない

食餌

イグアナは草食性で、カルシウムが多く含まれている野菜を主食として与えます。

イグアナエサ

カルシウム不足は、急速に発育するイグアナでは代謝性骨疾患を引き起こす原因になります。カルシウム剤のサプリメントを餌に添加することが常法となっています。

イグアナエサ

爬虫類飼育者は必ず読むこと!

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給餌回数は、幼体も成体も毎日与えます。1回に与える餌の量は、イグアナの年齢や気温などに左右されるため、様子を見て加減します。定期的に体重測定をし、低下しているようであれば餌の回数や量を増やします。野菜や野草はしおれたり、糞や尿がついて汚れるため、食べ残しはかたしてください。昼行性であるため、給餌時間は午前中が理想ですが、少なくとも消灯の2~3時間前には与えるようにして下さい。イグアナ用のペレットも市販されていますが、タンパク質が多く、給餌に関しては賛否両論です。

飲水

水容器から水を飲むイグアナもいますし、飲まないイグアナもいます。水容器は成体では力が強いため、引っくり返さないよう重さのある物が望ましいです。

ジェックス ウォーターディッシュ

XLサイズ:27.5×23×6.5cm
Lサイズ:21×17.5×5cm

自然の岩をイメージしたテラリウムにぴったり!大きな爬虫類でもひっくり返しにくい安定した作りの餌容器・水容器です。内側は滑らかで汚れを落としやすい形状なので、清潔に保てます。

ポイントはコレ(餌)!

・イグアナは草食
・主食は野菜
・果物は少量
・餌にカルシウム剤をかける
・水入れを置く

ケア

人馴れ

イグアナは賢い爬虫類です。馴れるというより、認識をしますのので、幼体から飼育すると、エサをねだるようにもなります。

抱っこ

人に抱かれることもあまり嫌わない性格をしています。優しく抱きあげれば、かみつくこともありません(発情期のオスは例外です)。

イグアナ抱っこ

イグアナを抱っこすると、長い爪でひっかかれるため、腕が傷だらけになります。定期的に爪切りをしてあげてもよいです。

イグアナ爪切り

散歩

屋外への散歩も可能ですがが、胴輪とリードをつけて逃げないようにしてください。ケージで飼育されていたイグアナを突然屋外に散歩に出すと、パニックになることもあります。屋外で散歩させるには、ゲージの外の環境になれさせることから始めなければなりません。まずはケージから出して、家の中を散歩させ、次に庭に出してみることです。

イグアナ散歩

掃除

イグアナを触ったりした後はよく手を洗い、そしてケージなどの掃除も衛生的にして下さい。爬虫類はサルモネラ菌を保菌していることが多いです。爬虫類に常在しているサルモネラ菌は爬虫類には無症状のことが多く、人に感染すると嘔吐や下痢などの消化器症状が起こり(サルモネラ中毒)、人獣共通感染症(ズーノーシス)として有名です。掃除の後にケージも殺菌するために日光浴や消毒をするように心がけましょう。

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とりあえずの消毒にはコレ!

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イグアナの糞や尿の掃除や消毒はもちろんですが、臭う場合は以下の対策を読んで考えてみて下さい。大型のトカゲなので排泄物の量も半端じゃありません。

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ポイントはコレ(ケア)!

・人に馴れると抱っこもできる
・掃除は水洗いだけでなく消毒もする
・排泄物の量が多いので消臭対策もする

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参考文献

  • Barten SL.Lizards.In Reptile Medicine and Surgery.Mader DR ed.WB Saunders.Philadelphia:p47-61.1996
  • McKeown S.General husbandry and management.In Reptile medicine and surgery.Mader DR ed.WB Saunders Philadelphia:p9-19.1996

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。