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カメの飼状情報が氾濫
「鶴は千年、亀は万年」といわれていますが、カメは万年は生きません。しかし、ゾウガメなどの大きい種類のカメの寿命は長く、100年以上生きます。しかし、小さいカメほど寿命は短く10年ということもあります。実際に記録されている寿命は、アルダブラゾウガメの152年、ギリシャリクガメの149年、カロリナハコガメの138年、ヨーロッパヌマガメの120年という報告があります〔安川2006〕。
飼育頭数が多い、イシガメ、クサガメ、アカミミガメ、ギリシャリクガメ、ヘルマンリクガメ、ヨツユビリクガメなどは40年を目標にしたいです。カメは万年生きるという逸話もありますが、実際に長生きする動物なために、寿命が長い理由について研究が続けられ、主に以下の点がその理由と考えられています。
長生きする理由
- 新陳代謝が遅いので細胞老化も遅い
- 冬眠だけでなく夏眠もする
- ゆっくりと生活している
新陳代謝が遅いので細胞老化も遅い
消化も遅く、呼吸数も少なく、生活にか変わる行動や生理活動も緩慢で、それに比例して寿命も長くなっていると思われます。外気温動物といって外部の環境温度で代謝が異なる特徴があります。代謝を早くしたい時は、暖かい環境に移動し、代謝を遅くしたい時は寒冷な環境に移動して、自ら調節できるのです。つまり、餌を食べて消化を早めたい時などは、カメは甲羅干しをして胃腸の動きを促進させます。したがって、夜に寝る前に餌を与えると、消化管うっ滞を起こしやすくなるのです。
特に長寿のゾウカメは、外敵が少ない環境で育っている場合が多く、慌てて行動する必要がないのです。インド洋や太平洋などの島々において、独自に進化して大型化をたどりました。
冬眠だけでなく夏眠もする
冬眠中はエネルギーの消費を抑えていますので、その分だけ細胞の老化が抑えられています。ヨツユビリクガメのように夏眠も行う種類もいます。
ゆっくりと生活している
カメは他の爬虫類と比べて、行動がゆっくりしています。エサを食べるのも、動くのもゆっくりですし、慌ただしく動くようなことはまれです。その結果、エネルギーの消費量を低くしています。
長生きさせる飼育
- 温度勾配を設けた環境
- 紫外線の供給
- 冬眠させる?
- 急激に成長させない
- 季節感のある飼育
温度勾配を設けた環境
カメの飼育で温度管理をすることはいうまでもありません。バスキングライトによりホットスポットを設けて自ら移動するスペースを作ってください。カメ自身が自分の体調をよく知っているはずです。自ら暖かい場所に移動しますので、飼い主は温度勾配のある環境を提供してあげましょう。
紫外線の供給
昼行性のカメならば、紫外線は不可欠になります。太陽光による日光浴、あるいは屋外飼育では紫外線ライトの照射が必要なります。
冬眠させる
冬眠することで細胞の代謝を遅らせて長生きさせることができます。しかし、熱帯に生息する種類は冬眠させる必要がありませんが、やはり日本の冬は寒くて温度が下がり、食欲が低下して活動量も落ちてきます。無理に冬眠させて失敗してカメが死んでしまうケースもよくあることが問題になっています。たとえ冬眠にチャレンジするならば、冬眠をする種類、最低でも2~3歳以上のカメ、病気でないカメ、そして飼い主にも冬眠させるための知識があることが必要です。冬眠させる前に健診を受けておくとよいでしょう。冬眠は単に温度を下げるだけでなく、冬眠させるま前から餌を少なくして消化管を空にし、膀胱内の尿もからにしなければならないのです。
急激な成長をさせない
カメの給餌は基本的に1日1回で問題ありません。半水生のイシガメ、クサガメ、アカミミガメなどの雑食性の種類カならば、成体になったら週に1〜2回位は餌を抜く方がいいかもしれません。急な発育をさせることは本来のカメには適していません。具体的には甲羅や骨が成長に追いつかずに曲がってしまうようなことはよくみられ、胃腸の蠕動も甲羅の大きさにがついていけずに、消化管のうっ滞や便秘が多発します。
カメの給餌量は、以下のように書かれています。「1回に与えるエサの量は、雑食性のカメでは頭の大きさ程度が理想、草食性のカメでは野菜を食べるだけ与える」。これは経験に基づいた話しでか、カメの寿命とは無関係な話しです。ギリシャリクガメ、ヘルマンリクガメ、ケヅメリクガメなどのリクガメは草食性です。カロリーが高くない野菜を食べており、毎日餌を与えるのが基本です。しかし、野生では採食しても十分な運動をして、胃腸が活発に動くなど、ペットとは異なる環境です。庭などでの屋外飼育をしている草食性のカメをみていると、自ら動いて温度管理を行い、採食量を調整しています。野生のカメの環境に近いといえるでしょう。ケージで飼育して運動量が少ないリクガメであれば、好きなだけ餌を与えると、全てを消化しきれない可能性が高いです。例え全てを消化しても成長が早くなり、成長が早いことで、メスのカメの多くが早くに性成熟を迎えて、卵塞、卵巣・卵管疾患で死んでいます。季節感のない飼育でホルモン失調を起こしているのも理由の一つかもしれません。
季節感飼育
季節感を味わってもらい、それにあわせて採取量やタイミングを変える方法もあります。冬眠をさせずに長生きさせることも、以下の方法であれば理論的に可能です。
温度管理だけでなく、季節に合わせてエサを与える方法を変えるのです。温度管理をしていていも、外気温も高くなると、カメも体温が自然に上がってきます。暖かくなるにつれて活発に動くようになり、餌を探すような仕草や行動が見られ、採食量が増していきます。最も気温が上がる昼過ぎに、給餌をしましょう。冬の寒さから解放されたこともあり、とても食欲旺盛なはずです。しっかりと運動させれば、少し多いくらいの餌を与えても大丈夫です。暑くなると湿度も高くなってきます。
暑いと必然的にカメの活動量も低下してきます。給餌量は春と同じでよいのですが、与えるタイミングとしては、真昼よりも温度が高くない午前中にしましょう。
秋になると、涼しくなってきますが、温度が下がるためにカメの活動量が低下してきます。したがって、給餌量は、春や夏より少し少なめにします。餌を与えるタイミングは、昼前後の気温が高い時間帯がベストになります。温度管理をしっかりと行い、ゲージ内や水温を一定の温度にしているなら、カメは活発に動くかもしれません。それでも冬になると活動量と餌を食べる量が減りませんか?カメも体内時計で季節感を感じているのかもしれませんね。
冬のカメの活動量と食欲の低下の時は、代謝が低下していますので、給餌量を減らしてよいです。少し怖いかもしれません、見守って下さい。心配であれば動物病院で受診をしましょう。病気で弱っていることもあります。
参考文献
- 安川雄一郎.イシガメ属、イシガメ属とその近縁属の分類と自然史(前編).クリーパー39.クリーパー社.東京:p18-44.2007(1)
- 安川雄一郎.ゾウガメと呼ばれるリクガメ類の分類と自然史(後編).クリーパー33:p16-29.32.クリー パー社.東京.2006