イシガメってどんなカメ(知らないといけない生態と特徴)

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石亀は2種類

日本に生息するイシガメはニホンイシガメとヤエヤマイシガメの2種類がいます。本州、四国、九州に分布する日本固有種のニホンイシガメが有名で、学名のjaponica は日本のという意味です。石垣島や西表島には、マイナーなミナミイシガメの亜種であるヤエヤマイシガメがいます。ペットとして流通しているのはニホンイシガメが圧倒的に多く、ニホンイシガメを通称、イシガメと呼びます。

知っておいて!カメという生物について!

ニホンイシガメ

ニホンイシガメは生息地の破壊や水質悪化、アカミミガメなどの外来種の移入などにより個体数が減少し、2013年にはワシントン条約(サイテス)に指付属書Ⅱ掲載種に指定されています。


分類・生態

分類

カメ目潜頸亜目イシガメ科イシガメ属
学名Mauremys japonica
英名:Japanese pond turtle
別名:イシガメ、銭亀

分布

日本(本州、四国、九州)

ニホンイシガメ分布図

生態

環境:山のふもとにある池、湖沼、河川、湿原などきれいな水場(ニホンイシガメは水の流れのある山地側の河川を、クサガメは流れの緩やかな平野部や湖沼を好む)

イシガメ

活動
・昼行性で、夜は泥の中や池や浅瀬のふちで休んでいます。

ニホンイシガメ

・冬になると冬眠して越冬します。
食性:雑食性で、子魚、イモリやカエルなどの両生類、甲虫などの昆虫、巻貝、エビやカニなどの甲殻類、ミミズなどの軟体動物、植物の葉や花、藻などを食べています〔安川2007(1)〕。
寿命:30~40 年

身体

甲長:15~20cm

性格

基本的な性格は大人しいですが、やや神経質な面もあります。

特徴

カメの特徴と甲羅の詳細な解説はコチラ!

オレンジの背甲

背甲はオレンジ色を帯びた褐色系の色をしていますが、色の幅が多様です。頭や四肢、尾は暗い色をしています。

ニホンイシガメ

ギザギザの甲板

背甲の後方の甲羅(後方の縁甲板~臀甲板)の縁は鋸歯状でギザギザしていますが、加齢とともに擦り減って目立たなくなります。

ニホンイシガメ

1本のキール

背甲に縦中央に走る1本の隆起(キール)が見られます。

ニホンイシガメ

銭亀

幼体は背甲の黄色みが強いことから、その色と丸い甲羅を昔の硬貨に見立てて、銭亀(ぜにがめ)とも呼ばれています。他の幼体のカメより尾が長いのも特徴です。

ニホンイシガメ

黒い腹甲

腹甲は黒~暗褐色をしています。

ニホンイシガメ

シャープな顔

頭と顔は尖って細く、頭の脇~首の側面に不明瞭な黒色の模様が入ります。

イシガメ

黒化

オスは頸の脇の模様が薄くなり、黒くなることが多いです。また、加齢とともに甲羅が摩耗したり、甲羅の色も暗色になってきます〔安川 2007a、安川 2007b〕。


爪と水かき

四肢の趾には鋭い爪と小さな水かきを備え、水場も陸場にも対応できます。

ニホンイシガメのポイント!

・日本固有種
・綺麗な水質で水の流れのある山地側の河川を好む
・昼行性
・雑食性
・冬眠する
・背甲はオレンジ色/キールが1本
・尻の背甲がギザギザ
・顔がシャープ

ヤエヤマイシガメ(ミナミイシガメ)

ヤエヤマイシガメは沖縄地方に生息するカメで、中国などに分布するミナミイシガメの亜種です。京都、大阪、滋賀にもいますが、外来種として移入したと考えられています〔安川 2007(1)〕。ミナミイシガメは個体数が激減し、2003 年にはワシントン条約の附属書Ⅱ掲載種になっており、ペットショップでの流通も少なくなってきています。ペットとして販売されているのは滋賀県産の野生(WC)個体が出回っているようです。また、京都市の天然記念物にも指定されています。ヤエヤマイシガメの学名のkami は、八重山諸島の方言で、カメという意味です〔安川2007(2)〕。

分類・生態

分類

分類:カメ目潜頸亜目イシガメ科イシガメ属
学名Mauremys mutica kami
英名:Yellow pond turtle
別名:ヤエヤマミナミイシガメ

ミナミイシガメ

分布

日本(石垣島、西表島、波照間島、与那国島)、中国

生態

環境:池沼、川低、湿地,小さな水路など浅く底が砂泥質の穏やかな流れや止水、農業用ため池や水田
行動:半水生もしくはやや半陸生の夜行性です。昼間は泥の中で眠って過ごし、夜にエサを求めて、水中や陸地を歩き回ります。

食性:雑食性でニホンイシガメとほぼ同じです。基本的に冬眠はしません。
寿命:30~40年

身体

甲長:15~19cm

性格

ニホンイシガメと比べると、やや気性が荒いです。

特徴

丸みのある背甲

ミナミイシガメの学名のmuticaは「滑らかな」という意味で、ニホンイシガメと比べると背甲が滑らかで丸みを帯び、背甲のキールが不明瞭です。背甲は褐色系で濃淡の幅があります〔安川 2007a、安川 2007b〕。ミナミイシガメとヤエヤマイシガメの違いも甲羅の丸みで鑑別します。ヤエヤマイシガメよりもミナミイシガメの方が丸いドーム状の背甲をしています。どちらかと言えばヤエヤマイシガメの方が甲羅は平らで灰褐色の地味な色をしています。外貌での鑑別は正直難しいです。

ヤエヤマイシガメ

腹甲

腹甲の各甲羅にあるまだら模様は、ミナミイシガメと比べて不明瞭で、つながらないことが多いです。

頭の模様

頭は灰褐色や黄褐色、淡褐色で、目の後方に黄色の筋模様が入ります。

爪と水かき

四肢の趾には鋭い爪と小さな水かきを備え、水場も陸場にも対応できます。

ヤエヤマイシガメのポイント!

・中国にいるミナミイシガメの亜種
・石垣島などの南の島に分布
・京都などにも移入している
・夜行性
・雑食性
・冬眠しない
・甲羅が丸い

参考文献

  • 安川雄一郎.イシガメ属、イシガメ属とその近縁属の分類と自然史(前編).クリーパー39.クリーパー社.東京:p18-44.2007a
  • 安川雄一郎.イシガメ属、イシガメ属その近縁種の分類と自然史(後編).クリーパー40.クリーパー社.東京:p30-67.2007b

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。