目次 [非表示]
耳が赤くないアカミミ
アカミミガメはヌマガメ科アカミミガメ属に属します。4亜種に分かれていますが、外観が類似している近縁種、それらとの交雑種も含めて広義的にアカミミガメと呼ばれています。非常に鑑別は難しいです。
アカミミガメはアメリカでペット用として大量に繁殖されていました。そのため安価になり、世界中にペットとして広まりましたが、現在世界各地に帰化・定着して問題となっています。本邦でも1960 年代より輸入され始め、遺棄されたと思われる個体が帰化し、全国で見られるようになりました〔安川 2007c〕。
適応能力が高く、クサガメや日本固有種である二ホンイシガメよりも数が増えて、生態系を脅かす存在になっており、2006年6月1日より条件付特定外来生物に指定されています。飼育に関して法的な条件が定めらられていますので、注意して下さい。
アカミミガメの条件付特定外来生物
アカミミガメは1950年代後半から幼体を、ミドリガメの通称でペットとして輸入され、1990年代半ばには、日本に年間100万頭輸入されていました。祭りの縁日で『カメすくい』の遊びとして定番になるくらいポピュラーなカメとなる一方で、入手が容易、簡単に飼育できることから、成長すると大きなって長生きもするので、野外への放出されることが多くなりました。アカミミガメはクサガメや在来種であるニホンイシガメと同様の環境で生育し、繁殖力が他のカメよりも強く、生育環境を奪っています。また、水草を大量に食べ、食性が多岐にわたるため、レンコンの食害やハスの群生の消滅との関連も指摘されています〔有馬ら2008〕。在来の水生植物、魚類、両生類、甲殻類の生育環境までも奪う結果にもなっています。アカミミガメについては、生態系等に被害を及ぼすことが懸念されることから、2005年の外来生物法の施行に合わせて法律に基づく特定外来生物への指定が検討されましたが、野外での繁殖が確認された事例が少ないこと、大量に飼育されており指定により野外への大量遺棄が発生するおそれがあること等の理由から指定が見送られました。しかしその後、野外での繁殖確認事例の増加や、在来水生植物の食害、在来種ニホンイシガメへの影響、農業・水産業等への被害の知見が集積され、2015年3月に環境省及び農林水産省が作成した「生態系被害防止外来種リスト」において、緊急対策外来種に位置づけられました。アカミミガメは現在、飼育者がとても多い生きものであり、単に特定外来生物に指定して飼育等を禁止すると、手続きが面倒などの理由で野外へ放す飼育者が増えると予想され、かえって生態系等への被害を生じるおそれがあります。そのため、2023年6月1日より、一部の規制を適用除外とする条件付特定外来生物に指定することとなりました。アメリカからの輸入、ペットショップでの販売や購入は禁止されていますが、規制開始後も一般家庭でペットとして飼育している個体はこれまで通り飼い続けることができ、申請や許可、届出等の手続きも不要です。しかし、池や川などの野外に放したり、逃がしたりすることは法律で禁止されています。飼い続けることができなくなった場合は、友人・知人・個体の新しい飼い主探しをしている団体等に無償で譲渡する手段をとらないといけません。
アカミミガメ属のカメはスライダー(Slider)とも呼ばれ、「滑る者」という意味です。日光浴などをしている最中に、外敵である猛禽類や捕食動物が近づくと驚いて、水中に滑るように逃げることが由来とされています。
分類・生態
分類
カメ目潜頸亜目ヌマガメ科アカミミガメ属
学名:Trachemys scripta
英名:Common slider
別名:スライダーガメ、スライダータートル
分布
アメリカ南東部からメキシコ北東部の国境地帯まで
生態
環境:河川、池、湖沼など
行動
・底質が柔らかく水草が繁茂し、日光浴に適した陸場の多い水深のある流れの緩やかな流水域や止水域を好みます。海水への抵抗力も高く、時に汽水域にも進出することがあります。
昼行性で日光浴で甲羅干しをすることを好み、夜は泥の中や池や浅瀬のふちで休んでいます。冬になると冬眠して越冬します。しかし、温暖な地域の個体群は冬眠しません。
食性
雑食性で、子魚、イモリやカエルなどの両生類、甲虫などの昆虫、巻貝、エビやカニなどの甲殻類、ミミズなどの軟体動物、植物の葉や花、藻などを食べています。他のカメの卵を食べる習性もあり、日本産のカメは競合だけでなく、卵が捕食されることも減少に繋がっています。幼体は肉食性が強いですが、成長に伴い植物を食べる量が増えてきます。
寿命:30~40年
身体
甲長:最大28 cm
亜種
昔アカミミガメは14 種前後の亜種に分類されていましたが、現在は、キバラガメ、ミシシッピアカミミガメ、カンバーランドキミミガメ、そして新種のリオグランデアカミミガメの4亜種です〔安川 2007c〕。中でもミシシッピアカミミガメはCB(繁殖)個体が繁殖で増え、他の亜種との交雑種が多く流通しています。
ミシシッピアカミミガメ(T. s. elegans)
ミシシッピアカミミガメの学名であるelegansは優雅なという意味で、名前の通り身体にきれいな模様が入っています。頭の横に橙色~赤色の太い1本の帯が入るのが特徴で、和名のアカミミガメ、英名のRed-eared slider の由来になっています〔安川 2007c〕。
幼体は全身が鮮やかな緑色であるため、ミドリガメと呼ばれています。
背甲は緑褐色で、各甲板に細い黄色の筋模様が入り、この模様は複雑で変異が大きいです。
腹甲は不規則な暗色の腹甲斑が入ります。
甲羅の色は年とともに茶褐色になり、筋模様がくすんだり、また黒化したりすることもあります。顔の模様まで黒化で消失すると全体が黒くなり、種類の鑑別が難しくなります。
キバラガメ(T.s.scripta)
アカミミガメの基亜種で、本種は亜種間交雑個体と思われる個体が多く流通しているため、外見の特徴もバラエティーに富んでいます。背甲は濃い緑褐色で、黄色い線が模様になって入っていますが、模様には個体差があり、様々な濃さや柄が存在します。
腹甲は黄色で、和名のキバラガメ、英名のYellow-bellied sliderの由来になっています。しかし、左右の喉甲板にのみ1つずつ輪状の暗色の腹甲斑が入ることもあります。
頭の横には太い黄色の筋が、SあるいはZ字の模様を描いて見られますが、個体差あるいは交雑種では、模様が少なかったり、赤色を帯びることがあります〔安川 2007c〕。
カンバーランドキミミガメ(T.s.troostii)
カンバーランドキミミガメは、アカミミガメの中で最も小型の亜種です。ミシシッピアカミミガメとキバラガメの交雑種とみなす説もありますが、詳細は不明です〔安川 2007c〕。背甲は濃い緑褐色で、黄色の筋模様が入ります。
頭の横には細い黄色~黄橙色の太い1本の帯模様が入り、下顎にも1本の太く黄色い帯が見られます。
腹甲の各甲板には小型の暗色の腹甲斑が入ることで、キバラガメとは区別されます〔安川 2007c〕。
リオグランデアカミミガメ(T.s.subsp)
アカミミガメの分布域であるリオグランデ川の下流周囲に分布し、分類学的に正式な亜種ではありません。基本的にミシシッピアカミミガメと似ていますが、頭の横の赤色の帯がより太く、帯が目から離れた所から始まり、首の細い縞模様につながらないのが特徴です〔安川 2007c〕。赤色の帯とは別に、目の後方に同色の小点がある個体もいます。
品種
アカミミガメは色や模様のバリエーションの変異が多く、さらに亜種間での交雑種も多いです。カラーバリエーションとして、黒色色素欠乏のアルビノ、黒色色素減退のハイポメラニスティックであるパステル、赤色色素欠乏のアネリスリスティックとハイポメラニスティックの交雑種であるゴースト、その他にもアルビノと異なり、白化しているリューシスティック、赤色色素過多のエリスリティックなどの繁殖(CB)個体が作られています。
パステル
アルビノパルテル
性質
アカミミガメは基本的に気性は荒く、獰猛です。目の前に指を近づけるとかまれるので注意して下さい。
特徴
甲羅模様
各亜種の純血種もいれば交雑種も多いので、亜種の鑑別はもちろん、種類までは分からないカメが多いです。多くは背甲は濃い緑色~黒褐色で、大小の黄色の筋模様が入りますが、年をとると背甲はくすんだ色になり、黒化したり、模様も見えにくくなってきます。
四肢の縞模様
頭部や四肢、尾は緑~濃緑色で、細い薄黄色の縞模様が見られます。
爪と水掻き
趾には鋭い爪と小さな水かきを備え、水場も陸場にも対応できます。
アカミミのポイントはコレ!
・北米に生息する昼行性の水ガメ
・現在4亜種
・イシガメやクサガメの生態を荒らす帰化種
・ミドリガメは本名ではなく俗称
・腹甲が黄色いキバラガメ
・カンバーランドキミミガメは黄色い耳
・一般的に見かけるのがミシヒッピアカミミガメ
・赤耳が大きいリオグランデアカミミガメ
・交雑種や黒化により、亜種の鑑別が難しい
・性格は獰猛
参考文献
- 有馬進,鈴木章弘,鄭紹輝,奥薗稔,西村巌.ミシシッピーアカミミガメのハス食害調査.Coastal bioenvironment第11巻.佐賀大学海浜台地生物環境研究センター:p47-53.2008
- 安川雄一郎.アカミミガメ属(スライダーガメ属)の分類と自然史1.クリーパー36.クリーパー社.東京:p18-57.2007c