亀の特徴(甲羅と首の曲げ方)

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爬虫類の1グループ

カメは現生の爬虫類の中で最も古い グループの一つで、2億年前に出現して以来、外貌はほとんど変わっていません。胴体が甲羅から構成され、この甲羅は保護とカモフラージュの役割りをしています〔Hickman et al.2006,Hickman et al.2014〕。現生のカメは世界の熱帯・温帯を中心に分布していますが、一部の種類は冬眠して越冬します。生息は種類毎に淡水域、海洋、砂漠、草原、森林などの様々な環境にも対応していますが、生息地によって、水生、半水水生、陸生に分けられます。陸生種のみで構成される陸ガメから、産卵を除いて上陸しない完全水生種の海ガメもいますが、多くの種類が河川、湖沼、池等の淡水域に生息していることから、そのため半水生種は沼ガメとも呼ばれ、リクガメに対しての陸ガメに対しての言葉で水ガメとも称されます。なお、これらのカメの英語の名称が混乱しており、明確な定義はありません。

英語名称解釈
Turtle(タートル)アメリカではカメの総称としてTurtleを使いますが、どちらかというと陸ガメよりも水棲のカメを指し、特に水ガメにも使用する名称となっています。しかし、イギリスではウミガメを指すこともあり、要するに海ガメのことで、淡水に住んでいる水ガメをFreshwater turtleと呼ぶこともあります。
Tortoise(トータス)リクガメ科を指し、主に陸上で生活する陸ガメのことです。アメリカでは、リクガメ科以外の陸生種をTerrestrial turtleと呼ぶこともあります。
Terrapin(テラピン)Terrapinはキスイガメ属の総称ですが、キスイガメ属はキスイガメただ1種のみから構成されるので、ほとんどこの亀のみを指すと言葉です。アルゴンキン語族の食用ガメを指す語句に由来しています。イギリスでは淡水棲の亀(水ガメ)を指すこともあり、属名でありながら比較的広く使用されています。
Slider(スライダー)水ガメのアカミミガメ属のカメの総称です。Sliderという名称は、滑り落ちるように水に入って行くことに由来しています。
Cooter(クーター)水ガメのクーター属のカメの総称です。Cooterという名称は、水にドボンと落ちるように入ることに由来しています。
Chelonian(ケロニアン)混乱を避けるためにカメ目すべてを表せる単語としてchelonianを用いることが、英語圏の獣医師や科学者、自然保護論者を中心に支持されています。
表:カメの英語の名称

ペットとして飼育されているのは水ガメと陸ガメです。それぞれの生態に合わせて身体が変化を遂げて、食性や窒素の排泄(尿)なども異なっています。水ガメは指の間に水かきが発達し、海ガメでは指の境目が不明瞭で、四肢はひれやオール状になっています。陸ガメは短い指で、鈎爪が発達しており、歩行に適しています。水棲種の食性は、魚類、両生類、爬虫類、哺乳類、昆虫、貝類、甲殻類、植物の葉などの動物食あるいは肉食ですが、陸生種は主に草食で植物を食べます〔深田 1986〕。主に水中での生活を送る水棲種のカメは、水中の酸素を粘膜から吸収する機能や身体内の老廃物もアンモニアや尿素で排泄します。一方で陸ガメは乾燥から守るために固形尿である尿酸排泄の機能を持ち、水分保持に役立っています〔疋田 2002〕。

水ガメ陸ガメ
生息主に水中、時に陸場主に陸地
英名TurtleTortoise
水かき有る無し
食性動物食~雑食草食
尿アンモニア~尿素尿酸
表:カメの特徴

いずれにせよ、甲羅を持ったカメは独特の外貌をしており、長寿な爬虫類です。甲羅に頭を引っ込めたり、ゆっくりと歩くマイペースな姿に人は癒され、小さな丸い目や短い四肢も可愛いらしく、爬虫類の中では最も一般的に受けいれられ易いのが何より特徴かもしれません。

甲羅

最大の特徴は、胴部が甲羅を構成する点です。甲羅は、脊椎、肩甲骨、肋骨、胸骨などが互いに密着して箱のような構造で、頭側の窓から頭部と前肢、尾側の窓から後肢と尾が出ています。

カメは防御姿勢として、頭と四肢を甲羅内に収容し、尾も折り曲げて防御します。

肩帯は、肋骨が存在している場合は胸郭の肋骨の外側に付くのが普通ですが、カメでは発生時に肋骨が外側に広がって肩帯を取り込むために、脊椎動物ではカメのみが肋骨(甲羅)の内側に肩帯が位置します。腰帯は他の四肢動物と同じく仙椎を介して体幹に繋がっていますが、仙椎直前の胴胸椎肋骨と癒合した肋骨板が仙椎と癒合しているため、結果として甲羅の内側に位置しています〔疋田 2002〕。

肘関節は他の爬虫類とは逆に外側に曲がるのもカメだけです〔疋田 2002〕。

カメは甲羅に頸部や尾を収納する種が多いため、全長を測ることが難しいです。そのため背面の甲羅(背甲)の直線距離をSCL(Straight carapace length)として表し、日本語では背甲長あるいは単に甲長と呼ばれています〔安川 2008〕。現生の最大種はオサガメで最大甲長183cm以上になります。

呼吸

カメは主に肺呼吸を行いますが、肺は甲羅の中の背側に位置し、胸筋や腹筋の動きに加えて、頭部や四肢の甲羅に入れる動作を使って肺を補助的に収縮・膨張させて呼吸します〔疋田 2002〕。海ガメや水ガメでは鼻腔や口腔、咽頭の粘膜、総排泄腔にある副膀胱を使い、副次的に粘膜呼吸によるガス交換を行う種類もいます〔疋田 2002〕。

頸の収納方法

カメは分類学上、頸部を甲羅に収納する方法によって2つのグループに分類されており、頸を垂直にS字形に曲げることによって頭部を甲羅に収納する潜頸亜目(潜頸類)と頸部を水平に折り曲げて収納する曲頸亜目(曲頸類)です。潜頸類は首をS字に沈みこませて潜るように収納します。カメの8割ほどが潜頸類で、ペットとして人気のあるギリシャリクガメアカミミガメ、そしてイシガメクサガメなど日本に生息するカメは全て潜頸類で、一般的にカメのイメージになります。

 イラスト:緑書房カラーアトラスエキゾチック爬虫類・両生類編より

曲頸類は原始的なカメで、水平に折り曲げて収納しますが、頭部と頸部の半分が露出しており、完全には収納はされていません。一方、遅れて出現した潜頸類のカメは、頸を湾曲させて完全に収納し、世界中の棲息地で潜頸類に取って代わられていきました。

 イラスト:緑書房カラーアトラスエキゾチック爬虫類両生類編より

原始的なカメは曲頸類ですが、現在、世界中の生息地では潜頸類に取って代わられています。種類によっては頭や手足を甲羅中には収納できないものもいます(オオアタマガメ、カミツキガメ、ワニガメが有名です)。海で進化した海ガメは頭を収納する必要がなくなり、退化的進化を遂げたものです。

甲羅

カメの甲羅は鱗と真皮骨、脊椎や肋骨などが癒合して形成されています。脊椎から肋骨が横に広がり、さらに背側で扇状に広がって、隣同士の肋骨がつながり、胸骨も扇状に広がって結合して箱状の甲羅が構成されました〔Nagashimva et al.2007〕。甲羅の形状は、カメの種類によって異なります。一般的な水ガメの背甲は比較的盛り上がりが低く、甲羅全体が扁平な形をしています。これは、水中で活動しやすいように進化をしてきたからだと考えられています。特に海ガメは流線型の甲羅を持っており、抵抗を軽減し、外洋での安定性を高めています。陸ガメの背甲は水ガメと比べると盛り上がりが高く、ドームのような形をしています。甲羅の盛り上がりが高いほうが捕食者に対する防御力は優れています。しかし例外も存在し、陸ガメでもパンケーキガメのように非常に扁平な甲羅を持ち、天敵に襲われると素早く岩の隙間等に潜り込むカメもいます。フロリダアカハラガメやマレーハコガメなどの水ガメでも背甲はドーム状に盛り上がり、ワニなどの捕食者に対する防衛手段となっています。一部のカメの種類では、捕食者からさらに身を守り、カモフラージュするために、尖った突起やスパイク状の甲羅を持っています。また、陸ガメなどの一部の種類のオスでは、腹甲の先端が厚く、仲間との闘いにおいて体当たりのために使用されます〔Orenstein 2012〕。

甲羅を構成している一区画の板を甲板と呼ばれます。甲板は2層から形成され、肋骨や胸骨が広がった深層の骨甲板(骨板)、その上に角質で出来た角質甲板(麟板)が覆われています。いわゆる亀甲模様は角質甲板の並びで作られていますが、骨甲板と角質甲板のそれぞれの継ぎ目は位置をずらして、甲羅の強度を上げています。

イラスト:緑書房カラーアトラスエキゾチック爬虫類・両生類編より

背側の角質甲板を背甲、腹側を腹甲と呼びます。背甲、腹甲、橋には複数の甲板があり、それぞれ身体にちなんで名称が付けられています。

イラスト:緑書房カラーアトラスエキゾチック爬虫類両生類編より

背甲
項甲板(背甲の頭部先端にある左右の縁甲板をつなぐ/無い種類もいます)
椎甲板(脊椎の上部にあります/基本は5枚ですが、6枚の種類もいます)
肋甲板(肋骨上部にあります/椎甲板の左右に4対)
縁甲板(背甲外縁を覆います/左右に11~12対)
臀甲板(背甲の最も尾側にあります/基本は2枚ですが、1枚に癒合している種類もいます)
表:背甲の甲板

※上縁甲板(図には示されていませんが、ワニガメには肋甲板と縁甲板の間に「上縁甲板」と呼ばれる甲板があります)

腹甲
喉甲板(一番頭部に近い位置にあります/基本は左右1対、1枚に癒合している種類もいます)
間喉甲板(曲頸類で、喉甲板の上部または間に見られることがあります)
肩甲板(前肢の付け根に近い位置にあります/左右に1対)
胸甲板(前肢の後ろの位置、つまり胸にあります/左右に1対)
腹甲板
股甲板
 肛甲板(一番尾に近い位置にあります/左右に1対)
表:腹甲の甲板

背甲と腹甲を両脇でつなぐ甲板を橋と呼ばれています。

イラスト:緑書房カラーアトラスエキゾチック爬虫類・両生類編より

腋下甲板(腋の下、前肢の付け根にあります)
下縁甲板(縁甲板と腹甲板の間、橋の後肢の基部前方にあります)
 鼠蹊甲板(後肢の付け根にあります)
表:橋の甲板

箱ガメの仲間などには、甲羅の一部が蝶番のような構造になっており、甲羅を可動させて隙間をふさぐ種類がいます。ハコガメ属やアメリカハコガメ属は、腹甲の前方(胸甲板と腹甲板の間)のみに蝶番がありますが、ドロガメ属は後方にもう一箇所(腹甲板と股甲板の間)の合計2か所に蝶番があります。また、セオレガメ属の甲羅は腹甲ではなく背甲に蝶番がある構造になっています。蝶番により腹甲が可動することで、背甲と腹甲の隙間を減らして外敵や乾燥からの防御し、逆に背甲と腹甲の隙間を増やすことで大型の卵を産むことができます。

スッポンモドキ科、スッポン科、オサガメ科の甲羅の角質甲板はなめし革状で柔らかく、これらは祖先の型をそのまま保存しているのではなく、水中生活に対する適応として二次的に鱗を喪失したもので、水への抵抗を減らし、水分の吸収と排出の機能もあるといわれています〔中村ら1988〕。

脱皮

甲羅の成長の仕方はカメの種類によって異なります。 古い甲板の下に新しい甲板ができて古い甲羅が脱皮として剥がれます。ただし、角質甲板の剥がれ方には種類による差があり、アカミミガメなどは角質甲板が一枚まるごときれいに剥がれますが、 陸ガメなどは、現在の甲羅のつなぎ目の部分が成長していき、角質甲板が少しづづ剥がれていきます。甲羅の脱皮は、年に1 回だけでなく、成長時などでは2~3回くらい起こります。甲板の脱皮以外にも、皮膚の鱗も同時期に脱皮が見られます。陸ガメでは皮膚が大型の鱗で覆われ、乾燥から身を守っています。水ガメや海ガメでは皮膚に大型の鱗が少ないです。これらの鱗はヘビのように全部を一度に脱皮することはせず、小さく部分ごとに行われます。

甲板は新たに形成されるために木の木目のように何層にも段になって見えます。これはカメの甲羅が成長して甲板が広がった証拠で、層をかたどる線を成長線と呼ばれています。1つの成長線(段)を1歳と考えて、年輪とも呼ばれていましたが、個々のカメによって、成長および脱皮の間隔は異なりますので、年輪ではありません。

カメは鳥と同じように歯を欠き、角質の嘴があります。

斧のような嘴で食物をかみ切りますが、一部の種類ではかみ砕くために鋸状にギザギザになっていたり、かみ砕くために厚くなっていることもあります。

カメの嘴の詳細な解説はコチラ!

長寿

カメの寿命の解説はコチラ!

参考文献

  • Orenstein R.Turtles,Tortoises and Terrapins:a Natural History.Firefly Books.2012
  • Hickman C,Roberts L,Keen S,Larson A,l’Anson H,Eisenhour D.Integrated Principles of Zoology.14th ed.McGrawill.Boston,MA:p910.2016
  • Hickman C,Roberts L,Keen S.Animal Diversity.6th ed.McGraw Hill.New York:p479.2012
  • Nagashima H et al.On the carapacial ridge in turtle embryos: its developmental origin, function and the chelonian body plan. Development134:2219-26.2007
  • 中村健児、松井正文.1.形態.a外皮系.動物系統分類学9(下B1).脊椎動物(Ⅱb1).爬虫類Ⅰ.内田亨、山田真弓.監修.中山書店.東京:p30-35.1988
  • 深田祝監修.T.R.ハリディ、K.アドラー編 .動物大百科12.両生・爬虫類.平凡社.東京:p85-99.1986
  • 疋田努.爬虫類の生理.爬虫類の進化.東京大学出版会:p34-36.2002
  • 安川雄一郎.ゾウガメと呼ばれるリクガメ類の分類と自然史(後編).クリーパー33.クリーパー社.東京:p16-29,p32.2006

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。