文献から裏付けのマウス・ファンシーラット飼育の4つのポイント

ロジック

色々なサイトにマウスやファンシーラットの飼育の記事が書かれています。しかし、マウスの尿が臭うとか、ファンシーラットがどれだけ寂しがり屋なのか、小屋やトンネルは安心感をどれだけ与えるかなどはあまり知られていません。ファンシーラットは肺炎が多く、慢性化しやすいので、初期に対応することが大切です。このような気をつける点をクリアーにすることで、マウスやファンシーラットがどれだけ健康でいられるか、一緒に快適に暮らせるかが変わってきます。

  • マウスの尿臭い対策
  • ファンシーラットの寂しがり対策
  • 安心する小屋やトンネルの導入
  • ファンシーラットのくしゃみ

マウスの尿臭い対策

オスのマウスは尿の臭いがとてもきついです。人が最も嫌う臭いで、死臭?腐敗した魚の臭い?という例えがよくされています。マウスはマーキングのためにケージのあちこちで排泄し、トイレのしつけも難いです。床敷の掃除も頻繁に行う必要があり、交換の手間やコストも考えて選ばないといけません。

ケージにカバーをつける、床材を牧草にする、猫砂を床材に入れる、消臭剤を置くなどの対策を練っています。なお、紙や木製チップを床敷に使用すると、臭いが倍増しますので注意して下さい。

文献

  • 尿のアンモニア濃度を減少させる床敷の比較がされており、最もアンモニア濃度が少ないのがコーンコブ、次いで順番に紙、硬木チップ、再生木材パルプ、パインチップ、ポプラチップという結果でした〔Perkins et al.1995〕。

コーンコブとはトウモロコシの穂軸を切断して乾燥した粒状の床敷で、一つの粒に多くの小さな孔が開いた蜂の巣構造をしており、粉塵が少なく、食べても安全な材質です。ペット用床敷で、「コーンベット」、「コーンチップ」という名前で販売されています。ケージ内で尿のアンモニア濃度が減ることで、臭いも軽減されますが、発情したり、個体差により、この尿臭は完全になくなるわけではありません。

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ハムスター用の臭いをとるペレットを食べさせることも一方法ですが、あまり効果は期待できません。
結論は、床敷はコーンチップにして、頻繁な掃除を行い、ケージの近くに消臭剤を置いてみてください!

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ファンシーラットの寂しがり対策

野生のドブネズミは群れで飼育をしており、ペットのファンシーラットも雌雄問わず多頭飼育が可能です。しかし、オスとメスを一緒にすると繁殖してしまいます。

多頭飼育をする時は、同じ親から同時に産まれた、仲のよさそうなメス同士を迎えるのが無難でしょう。オス同士でもあまり喧嘩しませんが、メスよりは喧嘩をしやすいです。成熟前の若い個体ならば、同じ親から産まれてなくても大体仲よくできます。多頭飼育の利点は、ラット同士で遊んだり、毛繕いしたりと、コミュニケーションが取れ、仲間がいると安心感が得られります。多頭飼育の欠点は、個々の健康管理が見落としがちになります。また、やや飼い主に馴れなくなることもあります。単独で飼育する時は、ファンシーラットは社交性かあるため、積極的に人がコミュニケーションをとるようにしてください。人に馴れると信頼関係が築かれ、甘えてくるようになります。

仲間同士にせよ、人にせよ、ファンシーラットは社交性が大切で、ストレス対策になります。ストレスフリーで飼育することが長生きの秘訣です。あなたの生活パターンで、多頭飼育か単独飼育にするのか決めてください。

安心する小屋やトンネルの提供

実験動物のマウスやラットは今まで狭いケージで飼育されていました。しかし、現在はケージの大きささけでなく、回し車などで運動させることはもちろんのこと、巣箱や小屋、あるいはトンネルなどのシェルターを与えると、小屋の上に登ったり潜ったり、トンネルの中をくぐったりして運動量が増え、そしてストレスを減らす効果もあると分かってきました。]

マウスは小さくて非常に臆病ですが、学習能力が高く賢い動物です。気にいった玩具があれば、齧ったり、潜ったりします。ファンシーラットは、体が大きいので、体にあった小屋やトンネルなどを提供しましょう。実験動物では以下のような報告があります。

文献

  • シェルターを与えて飼育されると、ストレスが減り、人に馴れやすくなります〔Moon et al.2004〕。
  • ストレスがたまると、エサを食べる量が減るだけでなく、繁殖活動も低下します〔佐藤ら1992〕
  • ストレスを解消する方法の一つが運動である報告も、実証されています〔柳田2015〕。

これらの文献をみると、ストレスがどれだけ体に悪いか、ストレス対策の大切さがわかります。

文献

  • マウスやラットは、人の男性の脇の下の匂いをかぐと、ストレスを感じるという報告があります〔Sorage et al.2014〕。

個人的な意見ですが、男性の脇の下の匂いにストレスを感じることは、性的に男性の優越的な支配を恐れているのでしょう。マウスやラットだけでなく、哺乳類全般にいえることだと思います。

実験動物でも数多くのストレス対策グッツとして小屋やトンネルが使われているんです!

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ファンシーラットのくしゃみ

ファンシーラットは鼻炎気管支炎肺炎などの呼吸器感染症が特異的に多いです。肺炎で死亡することも少なくありません。温度管理をしっかりとし、初期治療がポイントになります。くしゃみや呼吸が早いなどの初期症状がみられたら、早急に動物病院で診察をうけるべきです。呼吸器感染症は空気感染するので、集団で飼育していると他のラットにも感染しますので、一頭のみがおかしい時点で早急に対応してください。

ファンシーラットの肺炎の詳しい解説はコチラ!

参考文献

  • Moon CP et al.To Enrich or Not to Enrich:Providing Shelter Does not Complicate Handling of Laboratory Mice. Contemp Top Lab Anim Sci43(4):18-21.2004
  • Perkins SE et al.Characterization and Quantification of Microenvironmental Contaminants in Isolator Cages with a Variety of Contact Beddings.Contemporary Topics in Laboratory Animal Science34(3).1995
  • Sorage R et al.Olfactory exposure to males,including men,causes stress and related analgesia in rodents. Nature Methods11:629‐632.2014
  • 佐藤嘉一ら.心理的ストレス負荷ラットの性行動の研究.第1報 ストレス負荷による性行動変化の検討.日本泌尿器科学会雑誌83(2):205‐211.1992
  • 柳田信也.ラットを用いた日常的な自発運動量の個体差と運動によるストレス解消効果の関係性の解明.ストレス科学研究. 30:178-179.2015

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。