カナリアの雌雄鑑別と繁殖

雌雄鑑別

カナリアはオスとメスは同じ色をしているので、雌雄鑑別は難しいです。生後半年位経つと性成熟を迎え、羽の色、鳴き方、体に特徴が見られますが、非常に曖昧です。最終的には遺伝子 (PCR) 検査で鑑別するのが確実です。

オス

オスはメスと比べて羽色が濃く、体がやや大きいですが、個体差がありますので明確ではありません。体色は赤カナリアでは明確に違いがありますが、その他の色では分かりません。赤カナリアはショウジョウヒワのオスの赤色が濃いという特徴を引き継いでいるからです。オスはメスよりもよく鳴きます。発情したオスは「ピロロロ」と綺麗なはっきりとした鳴き声です。オスは総排泄孔が突き出て、先端が窪んでいます (総排泄腔突起)。

メス

メスは羽色が薄く、体もオスと比べてやや小さいですが、やはり個体差があります。メスはあまり鳴きませんが、鳴いても小さな鳴き声です。メスの総排泄孔は平坦になっています。

遺伝子 (PCR) 検査

カナリアの性別は、獣医でも間違えることがあります。遺伝子検査は、採血をして血液を調べてもらう方法です。専門の検査機関に依頼するので、結果が分かるまでに1〜2週間ほどかかります。

繁殖 (巣引き)

鳥を繁殖させることは巣引きと呼ばれています。カナリアの繁殖は容易ではありませんが、計画的に行って下さい。カナリアは2~6月が繁殖期ですが、日本では日照時間が長くなる春先なってからの繁殖が適切だと思われます。無覆輪、クレステッド、優性の白カナリアは潜性致死遺伝子を持つので、ペアにすると100%、片親がその品種でも25%が孵化しないか、ヒナが死んでしまいますので、難しいです。純潔のローラーカナリアやスタイルカナリアは数が少ないので、同腹のカナリア同士などの近親交配を避けるために、足環の番号で血統を確認します。多くの場合はそれぞれの愛好クラブで個体管理がなされているので、血統を調べて下さい。

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性成熟

性成熟は約6ヵ月齢です。オスは性的な成熟を迎えると精子が作れるようになります。メスは卵が産めるようになります。

発情

上述したようなオスとメスで発情兆候が見られます。発情させるために、栄養価の高い繁殖期用のペレットやシードに切り替えます。産卵に備えてビタミンやカルシウムなども十分に補給して下さい。なおカナリアは昔から繁殖が積極的に行われ、特に繁殖期に卵黄からできた餌 (卵餌) が高栄養であるため、使われてきた歴史があります。

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交配

交配はまずはお見合いからです。基本的にオスとメス1羽ずつ同じケージに入れますが、相性が悪ければすぐに喧嘩が始まります。メスとオスのケージを隣同士に置いて、相性を確認してから一緒にするとよいでしょう。発情したオスはメスに対して盛んに求愛行動を示し、交尾をせまります。メスはオスを気に入ると、尾を上げて交尾を許容します (シャチホコポーズ)。交尾はオスがメスの背中の上に乗って、お尻をこすり合わせて精子を注入します。相性が悪い場合はペアの組み合わせに変えて下さい。

鳥の交尾の詳細な解説はコチラ!

産卵

交尾後にメスのケージに巣箱を用意をします。巣材にするために、ワラ、牧草、シュロ、紙などを与えて下さい。自ら営巣を始めます。カナリア用の巣箱あるいは皿巣や壺巣を用意するとよいでしょう。

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巣の中に入っている時間が長くなると、産卵の兆候の始まりです。産卵は毎日1個ずつ産み、カナリアの卵は薄い青色を帯びています。産卵数は4~6個で、3個目を産んだ頃から抱卵を始めます。抱卵は14日位で、メスは1日中巣にこもります (巣ごもり)。糞と餌を食べる時にしか出てきませんので、1日数回しか顔を見せてくれません。オスは基本的に巣箱の中にこもらず、本来の仕事は餌を抱卵中のメスに届けたり、巣箱の前で見張りをします。母鳥は神経質になっています。巣箱の中を覗いたり、ケージを移動させるのは最低限にして下さい。刺激すると抱卵をやめてしまいます。なお、産卵した卵を人工孵化で孵卵させる方法もあります。

人工孵化の詳細な解説はコチラ!

雛・子育て

孵化が始まると、雛の鳴き声が聞こえるようになります。雛は未熟な状態の赤子で、目も耳も開いておらず、体温調節もできません。母鳥が上手に雛に餌を与えます。雛は孵化後に数日で開眼し、羽も生えてきます。

全身の羽が生えそろったら、雛でなく幼鳥と呼ばれます。7~9日齢の雛に足環が装着されます。巣から雛が出てくるようになり、この状態を巣立ちといいます。自ら餌を食べるようになることを一人餌 (ひとりえ) といいます。一人餌になったら、別のケージに移してあげましょう。幼鳥は3~5ヵ月後に親の羽に変わります。

性成熟約6ヵ月齢
発情季節繁殖 (2-7月)
繁殖回数3-4回/年
産卵数4-6個 (連日に産卵)
抱卵14日
巣立ち20-21日齢
表: 繁殖知識

これがポイント!

  • オスは色が濃くて、きれいな声で良く鳴く
  • 総排泄孔が突出しているとオス
  • カナリアの繁殖期は2~7月、日本で繁殖させる時は春先から

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。