ウサギを長生きさせる4つの方法(目指せ10歳)

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長生きの秘訣

  • 三大欲求を満たす
  • ストレスをなくす
  • よい餌を与える
  • ウサドッグを受ける(健康診断)

色々なサイトにウサギの飼育の記事が多く書かれていますが、本稿では、長生きさせるための4つのポイントを簡単に解説をします。

①三大習性を満たす

ウサギの三大習性って知っていますか?群れるかじる隠れる(逃げる、掘る)の3つです。野生のウサギは集団で生活をすることで、早期に天敵を見つけ、襲われないように逃げながらエサを探し求めて行動しています。ペットのウサギの原種であるアナウサギの生態の本を一度じっくりと読んでみて下さい。読むとウサギを見る目が変わり、ウサギを飼う心構えが変わりますよ。

本当のウサギを知るにはこの本ぜひ読んで!

ウサギ学:隠れることと逃げることの生物学

生態が詳しく書かれている一般書で、ウサギの見方が変わります。マジに!

群れる

群れて多数の仲間に囲まれていることでウサギは安堵関を得ます。群れの中で社会生活序列も営み、お互いコミニケーションをとっています。ウサギ同士で接触して、刺激を与え合うことで、ストレスが貯まらないようになっています。

ペットの飼育では、多頭飼育が難しいのが現状です。相性の合わないウサギでは喧嘩をし、反対にストレスにもなり、雄雌の番で飼育すると容易に繁殖して、増えてしまいます。番で飼育する場合は必ず繁殖計画を考えないといけません。メスは避妊手術、オスは去勢手術が必要となる場合があります(避妊手術・去勢手術)。特にオス同士は喧嘩が起こりやすく、あえて複数で飼育するならばメス同志がお勧めです。

ケージを別にして複数のウサギを飼うことは可能です。部屋に放して、人の目の届く範囲でウサギを接触させれば問題ありませんが、喧嘩はもちろんのこと、ウサギは部屋の中で放す順番や臭いなどに敏感です。すねるウサギもいますので、よく観察してあげましょう。

ウサギ群れ

複数飼育できない場合は、あなた(人間)が群れの中の一員になれば良いのです。ウサギは人間との間に社会的序列を作ります。あなたは、群れの中でウサギと同等ですか?それとも下の立場?ひょっとしたら上の立場?それはウサギに聞いてみましょう。ウサギをペットでなはなく、群れの仲間と思うような気持ちで接触してみて下さい。きっとウサギと精神的な絆が結べるはずです。そうなると、ウサギの方から何らかのコミニケーションやリアクションがあります。

「うちのウサギは馴れない」「抱っこをさせてくれない」という声を聞きます。ウサギは基本的に人に抱かれることは好まない動物です。人に恐怖心を持った馴れないウサギにしないように、ウサギの信頼を勝ち取って下さい。あなたも嫌いな人や信頼のない人に、抱きしめられたら嫌ですよね。

馴らすには幼体の時に行うのがポイントです。人への恐怖心も少なく、好奇心が大盛なこの時期に接触を試みて下さい。生後26~42日齢の離乳したての頃に人と接触すると、最も馴れるという報告があります〔DerWeduwen et al.1999〕。

かじる

ウサギはかじることが習性なので目の前の物をすぐにかじるので、「ウサギが物をかじって困る?」という声も聞きますが、これは仕方がないです。世間ではかじり癖と呼ばれていますが、物をかじって口をもごごもご動かすことはウサギの本能なのです〔Huls et al.1991〕。かじることで不正咬合の予防にもなります。

かじることを叱らないで下さい。かじってもよい物を与える考えに変えましょうウサギは面白いことに金属やプラスチックよりも、植物性の木や牧草で作られている物を好んでかじる習性があります。

木を齧るウサギ

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隠れる(逃げる・掘る)

野生では天敵に襲われて食べられる弱い動物で、逃げることは本能です。ペットのウサギでは逃げる習性はなくなり、運動したり、物や穴に潜って隠れること、巣穴を掘るという習性が強くみられます。ウサギを広い敷地で運動させることで、地面を掘ったり、木の巣穴に喜んで隠れています。

屋外飼育のウサギ

ウサギは必ず部屋に放して遊ばせる(部屋んぽ)時間を作ります。部屋にサークルやマットを敷いてあげるとよいでしょう。

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部屋の中を探索することは運動にもなり、小屋やトンネルを提供すると、気に入れば喜んで中に潜り込みます。おもちゃを与えると遊びます。

わらっこ

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金属やプラスチック製のおもちゃはすぐに飽きてしまいますが、木や牧草で出来た製品なら、崩壊するまで飽きません〔Harris et al.2001〕。

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意外に知られていませんが、地面を掘るのも大好きです。布を掘る動作をしたり、地面を前肢足で掘る行動が見られます。大きなタライにシュレッターにかけた紙や木製チップを敷き詰めるとウサギは狂ったように潜ることがあります。残念ながら気に入らないと全く興味を示しませんが・・・

「ウサギはどれくらいの広さのケージが良いですか?」「部屋の中で遊ぶ時間はどれくらいですか?」という質問をよく受けますが、どれくらい夢中になって遊ぶかが問題なので、広さや時間だけではありません。気に入った小屋やトンネルがあれば、その上に乗ったり、何度も潜り込んだりします。まさにアナウサギですね。

ポイントは三大欲求を満たす!

・群れる習性があるが、1頭ならば飼い主が寄り添ってあげる
・かじるのも習性、かじり木を与える
・運動量を増やすために部屋んぽをして、トンネルやおもちゃを与える

②ストレスをなくす(ストレスフリー)

ストレスホルモンとは?

ウサギの性格には個体差があり、温和なウサギ~神経質や臆病なウサギまで様々です。飼育環境によってもストレスを受ける程度も異なります。ウサギはストレスに弱い動物です。ストレスを受けると、カテコールアミンコルチゾルという2つのホルモンが分泌します。その結果、ウサギは突然死やショック死を起こしたり、病気になりやすくなります。「ウサギは寂しいと死ぬ」という迷信がありますが、前兆もなく死亡することがあるので、そのように言われたのでしょう。

カテコールアミン

心拍数が増加(心臓がバクバクします)、血圧が上がり、消化管の運きが低下し(胃腸のうっ滞)、呼吸も早くなります。この状態は緊張しているのと同じで、心臓に負担をかけ、食欲不振、軟便や下痢がみられます(急性ストレス反応)。「火事場の馬鹿力」という言葉がありますが、緊急事態になると、本来の力以上の力を発揮する時に使いますが、それと同じです。火事場の馬鹿力では心拍数が増加して血圧が上がり、筋肉の収縮も強まりますが、ウサギでは負の症状が多く見られます。恐怖や緊張により迷走神経反射ということが体内に起こり、血圧が下がってしまいます。朝礼で倒れるような人いますよね?それと同じ現象です。

ウサギでは急性ストレス反応で心臓に負担がかかり、迷走神経反射で血圧が下がったりするので、突然死やショック死が起こります。

コルチゾル

愛称の悪いウサギとの同居、騒音、温度変化、そして嫌いな動物病院への通院などでコルチゾルが分泌します。コルチゾルは免疫力を低下させ、パスツレラ症などを発症させます(易感染症)。

対策

ストレスにより過剰なカテコールアミンとコルチゾルを分泌させないようにすることが大切です(これらのホルモンは悪者ではなく、過剰に分泌することがいけないのです)。そのために環境エンリッチメント(動物を心理的に幸福にさせることを目的とする飼育〔松沢 1999〕)とハッピーホルモンを分泌させることを考えて下さい。環境エンリットメントとは、飼育面積を広くし、部屋に放す時間をつくることはもちろんですが、かじり木、小屋やトンネル、おもちゃなどを与え、十分な運動をしてもらうことです。かじる、潜って隠れることや掘る行動を再現させましょう。

幼体から環境リッチメントを与えて飼育することで、ストレスに強いウサギになるだけでなく、人に馴れるウサギになります〔Mis 2003〕。ウサギのハッピーホルモンを増やしてあげましょう。ウサギだけでなく飼い主もハッピーホルモンを出すことでお互いの良い関係は、さらにストレスを減らします。ハッピーホルモンとは、セロトニンオキシトシンの2つのホルモンです。

セロトニン

精神を安定させるのセロトニンは、気持ちがポジティブになり、苛立ちをおさえて気持ちが冷静になります。セロトニンは精神的な作用だけではなく、アンチエイジング効果もあります。老化予防になりますね。セロトニンは、規則正しい生活をし、適度な運動とバランスのとれた栄養をとることで分泌されます。

ウサギ

オキシトシン

癒しのオキシトシンは、幸せを感じ、ストレスの緩和の役目をします。オキシトシンは群れることで相手との触れ合いによって分泌されます。

ウサギ群れ

簡潔にいうと、「ウサギにとってハッピーな環境をつくればストレスにならない」と言うことです。しかし、気をつけて下さい。あなたもウサギの一員になるということは、ウサギを甘やかしたり、やりたことをすべてさせるようにすると、わがままになってしまいます。部屋で遊ばせるにせよ、規則正しい生活をさせるにせよ、主導権は必ずあなたがとることを忘れないようにしましょう。つまり完全にウサギの下になってしまうのも考えものなのです。

ウサギ

ポイントはストレスフリー!

・規則正しい生活リズムを作る
・適度な運動、栄養のバランス、部屋んぽでの遊びが重要
・飼い主さんとウサギのコミュニケーションも重要

③よいエサを与える

ウサギは牧草を主食にし、ペレット野菜などを副食に与えて下さい。牧草を主食にすることで、胃腸の動きがよくなり、胃のうっ滞・毛球症腸炎などを予防します。さらに歯をよく使って食べる食材なので不正咬合の予防にもなります。病気になる可能性を少しでも少なくしましょう。

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牧草は餌容器に入れておくだけでなく、牧草入れから引っ張って食べてもらいましょう。ウサギにかじる行為を促し、ストレス防止にもなります。

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ペレットは牧草よりも好んで食べる上に、カロリーが高いという欠点があります。そのため、ペレットを食べ過ぎると、肥満になる恐れがあります。ペレットは与える量を調節しましょう。

ウサギ採食

ペレットを選ぶポイントは、粗繊維質が20%、グルテンフリー、糖類不使用になります。栄養のバランスが整えたペレットはセロトニンの分泌に必要です。これを満たしたペレットはコチラになります。しかし、最終的にはウサギの嗜好性によるので、色々と試してみて下さい。

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ポイントは良い餌を与える!

・牧草を主食にし、ペレットや野菜は副食にする
・牧草はひっぱって食べれるタイプにするとストレス発散になる
・ペレットは粗繊維質が多く、グルテンフリー、糖類不使用になりますが、気に入るかはウサギの嗜好性による

④ウサドックを受ける(健康診断)

5歳以上の年寄りウサギは、腎不全、肝不全、心不全などの病気がとても増えてきます。人と同様に老衰が原因でなく、何らかの病気が死因で死ぬことが多いです。その病気の進行を防げば長生きできるはずです。

ストレスウサギ

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若いウサギ、中年ウサギ、年よりウサギによって、検査内容が異なります。ウサギは病気を隠します、早期発見・早期治療が大切です。もしも病気が見つかったら、色々な対応が練れます。サプリメントを与えるのも一方法です。

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これがポイント!(ウサドック)

・ウサギは病気を隠すので、健康診断受けるべき
・健康診断をすることで病気の初期発見をして対応する
・5歳以上の年よりウサギは病気が潜んでいる可能性が高い

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参考文献

  • Akita M,Ishii K,Kuwahara M,Tsubone H.The Daily pattern of cardiovascular parameters in Kurosawa and Kusanagi-H ypercholesterolemic(KHC)rabbits,Experimental Animals51:353-360.2002
  • Der Weduwen S,McBride A.Behaviour and the effects of early handling.In Refining rabbit housing, husbandry and procedures: report of the 1998 UFAW/RSPCA Rabbit Behaviour and Welfare Group meeting.Anim.Technol50:164.1999
  • Huls WL et al.Response of adult New Zealand White rabbits to enrichment objects and paired housing. Laboratory Animal Science41:609-612.1991
  • Harris Ld et al.Evaluation of objects and food for environmental enrichment of NZW rabbits.Contemp Top Lab Anim Sci40(1):27-30.2001
  • Mis J.A Novel and Cost-Effective Approach to New Zealand White Rabbit Enrichment.TECH talkl.8(6).2003
  • Pariaut R.Cardiovascular physiology and diseases of the rabbit. Veterinary Clinics of North America:Exotic Animal Practice12(1):35-144.2009
  • 松沢哲郎.動物福祉と環境エンリッチメント.どうぶつと動物園51(3):4-7.1999

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。