めちゃ楽しいブンチョウの飼育

飛ぶ鳥を狭いケージで飼う

鳥は飛ぶ動物です。環境エンリッチメントを考えると、飛ぶように体ができていますので、広い空間で飼育するのは当然です。飛ぶことで筋肉や骨がしっかりとしますし、ストレスも減るはずです。野生の小鳥は天敵に被捕されることが多い動物です。犬や猫がいる部屋はもちろん、騒音があるような落ち着かない環境ではストレスになります。狭いケージでもストレスがかかり、単独飼育では社交性がなくなり、毛引きなどの問題行動になることが多いです。。普段はケージで飼育し、部屋の中で放鳥する時間を設けることが理想的です。放鳥するとなかなかケージに戻らない鳥が多いです。そして、部屋の外に逃亡しな いように翼を切る (羽切り: クリッピング) こともあります。

ブンチョウ

飼育

複数飼育や繁殖目的の場合は、特に大きいケージを用意して下さい。

飼育頭数

ブンチョウは群れで生活するため、複数で飼育することも可能ですが、相性や繁殖計画を考えて下さい 。なお、ブンチョウは複数で飼育したほうが喜びます。

ブンチョウ

集団飼育する際に注意するのはオスのブンチョウです。性格がきついうえ、縄ばり意識が強く、幼鳥から群れで飼わないと同居は難しいです。1羽あるいは仲がよい番が理想です。

ブンチョウ

新たな鳥を同居させる際には、様々な細菌やウイルス、オウム病(クラミジア)などが蔓延する恐れがあります。検疫(鳥の健康診断)を行ってから、導入するのが理想です。

性格によって心構えが違う

ブンチョウを飼育する上で、性格を把握しておかなければなりません。特に1羽で飼育する場合は、飼い主である人間とブンチョウが一対一になりますので、性格を知った上で対応することが大切です。オスかメスによっての違いも大きくあります。オスは明るくて活発、メスは大人しい性格をしてますが、共通してい飼い主にべた馴れすることです。一方で、寂しがり屋で繊細である面を持っていますので、飼い主がかまってあげないとストレスがたまることもあります。さらに環境の変化に敏感であり、ケージの中のレイアウトを突然変える、別種の鳥と一緒にする、あるいは別の動物を迎え入れるなどすると、縄張り意識が働き、攻撃的になります。そして繊細な性格を考慮して声を荒げて怒る、ブンチョウは威嚇されたと勘違いし、飼い主とブンチョウの信頼関係の崩壊につながります。

ケージ

一般的には金属製の金網でつくられたケージが衛生的なため、多く使用されています。アクリルやプラスチック製の水槽タイプのケージもあります。保温性に優れていますが、湿気がこもりやすいという欠点があります。壁が透明であるため、鳥が衝突するような事故の話も聞きますので、注意して下さい。ケージ内には餌容器、水入れ、止まり木などを設置してください。ケージ中がマンネリ化しないように、容器の位置を定期的に変えたり、止まり木の素材や形を変えることもお勧めします。しかし、臆病な性格の鳥の場合、ケージ内を大きく変化させないほうがよいこともあります。ケージ内には餌容器、水入れ、止まり木などをレイアウトして下さい。ケージ中がマンネリ化しないように、容器の位置を定期的に変えたり、止まり木の素材や形を変えることもお勧めします。しかし、臆病な性格の鳥の場合、ケージ内を大きく変化させない方が良いこともあります。複数で飼育するなど、大きめのケージを選ぶならインコ用のケージを使って下さい。

ブンチョウ

鳥のケージの詳しい解説はコチラ!

セキセイインコ、ボタンインコ、コザクラインコのケージの選び方とお勧め商品はコチラ!

止まり木

止まり木は鳥が生活の多くの時間を過ごす重要な場所です。木製やプラスチック製の商品があります。止まり木の太さは、鳥が止まった状態で爪の先端が止まり木に触れる程度がよいです。止まり木は、つかむ以外にも嘴を擦りつけたり、かじることで長さを調節する役目もあり、木製のものがお勧めです。かじる行為は嘴の磨耗以外に、ストレスの解消にもつながります。太さが異なる止まり木は、鳥にとって止まりやすい場所を選んだり、爪や嘴を擦ったり、バリエーションが増える利点があります。基本的にケージの手前と奥に段差を設けて2本位の止まり木を設置します。尾羽がケージの床やなどに当たらないよう十分な間隔をとって下さい。ケージの入口に餌や水入れを設置している場合は、その前に止り木を1本設置すると食べやすくなります。一般的に鳥は高い方の止まり木で休みます。

ブンチョウ

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イタリア製鳥用組み立て式止まり木!6種類のパーツを使って、ケージ内で組立が可能、お好みに合わせて自由にレイアウトを作れる。

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餌容器・水入れ

餌や水入れは鳥がとまっている止まり木の近くに設置すると、飲みやすくなります。ケージの入り口近くに設置した場合は、わずかではありますが運動になります。ケージセットを購入したらその付属品として餌容器と水入れがついてくることがほとんどです。深い餌容器だと、鳥が容器の中に入ってしまい、排泄をして汚すことがあります。ジュウシマツは小さい鳥なので、深さがあまりない浅い餌容器を使わないと、体ごと容器に入ってしまいます。そして、浅い餌容器のメリットは、2~3日分しか入れられないですが、衛生的にもよく、餌の種子をまんべんなく食べること、食べた餌の量がはかることが簡単にできることです。

浅い餌容器がなら、これがかっこよい!

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水容器ならコレ!投薬用ってどういう意味???

すげ~よく考えられている~

葉野菜を入れる容器を菜挿し (なざし) といいます。

セキセイインコのなざし

なざしからベジタブルポット!

無いとダメよ!野菜与えるなら必要

容器には形状やカバーの有無など様々な商品があり、ケージの外から付けるものもあります。

外付け餌容器

シードの飛び散りが嫌ならばコレ!

綺麗に飼えるね!結構使っている方多いですよ

餌容器や水入れの位置を考えて、止まり木にとまっている時に排泄物が入らない位置に設置してあげましょう。

これがポイント!

  • ケージを大きくする
  • ケージ内のレイアウトは、鳥が動けて刺激があるように考える
  • 鳥を同居させる前に健診をする

温度・湿度・照明

健康なブンチョウならば、猛暑の夏や極寒の冬を除いて屋外で飼育したり、過度な温度管理が不要かもしれません。多少の暑さや寒さに慣れて元気に過ごせますし、体に負担をかけない範囲で季節の変化を感じてもらうことも大切です。一年中、同じ温度・湿度を保っていると、換羽が長く続いたり、発情が起きやすくなります。しかし、日本の冬は10℃以下になることが多く、季節による気温変化が激しい時は注意、真夏や真冬はきちんと温度管理したほうがよいでしょう。屋外にケージを置いて飼育すると、野鳥と接しての感染症の恐れがり、また犬や猫、カラスなどに襲われることもありますので注意して下さい。

温度

野生の鳥は一日の内でも温度差がある中で暮らしていますが、ペットの鳥は急激な温度差は体調を崩すくことが多いです。生後1才未満で初めて冬を越す鳥、病気の鳥や老鳥は、温度管理が必要になります。体の負担を軽くするためにもしっかりと温度管理をした飼育がよいです。理想的な温度は 25~30℃ (最低 20℃以上) です。病鳥では、体重や栄養状態にもよりますが、29.4~32.2℃の環境温度が必要となります 〔Harrison et al. 1986.〕。冬はエアコンにより部屋全体を暖 めたり、パネルヒーターなどをケージの横や下に設置してケージ全体を暖めて下さい。簡易的にはケージにビニール、布、ダンボールを被せることにより、 ある程度は適温に維持できます。真夏は熱中症などが起こるため、エアコンやクーラーを設置して下さい。健常体では、32.2℃以上の環境温度では、両翼を広げて熱の放散を行い、速い呼吸がみられます 〔Harrison et al.1986.〕。

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湿度

本邦では冬季は乾燥するため、適度な加湿も行わなければならなりません。冬に乾燥し過ぎる時は加湿機などを設置してください。

照明

ブンチョウは昼行性の鳥で、日の出とともに活動して餌を食べ、夜は睡眠をとります。このサイクルは性ホルモンや体調を維持する上で重要です。ま紫外線を浴びることで体内でビタミンDが作られて、カルシウムの吸収を促進し、くる病低カルシウム血症を予防します。時々太陽光による日光浴をさせてあげましょう。なお、ガラス越しの日光浴は紫外線の多くをカットしますので注意して下さい。日光欲ができない場合は、下記のようなライトを昼間つけてあげましょう。

鳥用の日光浴ライトはコレのみ!

ライトのソケットも買わないと使えないよ!

ルーチン!1日12時間ケージの脇にセットして照らしておくだけ!

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夜も明るくしていると結果的に日照時間が長くなり、発情が起きやすくなり、メスでは卵巣・卵管の病気が好発します。またストレスにつながる可能性もあります。特に屋内飼育では、光のリズムを考える必要があります。日没後は消灯して静かな環境にしましょう。遮光カバーなどをケージに被せることで、適切な暗さに調節できます。

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ついに出た!どんなケージでも使えるマルチカバー!ケージの大きさで2つのサイズから選んで下さい。

これがポイント!

  • 昼に活動させて夜は寝かせる
  • 温度は20~25℃
  • 時々日光浴させて
  • 夜は暗くしてしっかりと寝かす

ケア

ケージの中に鳥を入れて餌を与えるだけという単調な飼育は、成長や健康維持、繁殖のみならず、精神的的なストレスの原因になります。ブンチョウが持つ野生本来の行動を発現できるような環境作りのために、生息地に適応した体の特徴や生態を考えましょう。ブンチョウは飛ぶ動物ですが、飼育での最低の運動量や飛ばせる時間の一概に定まっていません。複数の止まり木や玩具などを使い、ケージ内が立体的に動けるような環境を考えて下さい。野生のブンチョウは1日中餌を探して食べることに費やしていますが、飼育下では容易に餌が手に入り、残りの時間を退屈に過ごすことになります。鳥が野生本来の採食行動を発現できるよう、餌の種類を増やしたり、与え方を工夫したり (フォージング)、回数を増やすなどの工夫をしましょう。群れで生活をしているブンチョウは、個体同士のコミュニケーションが必要ですが、1羽で飼育している場合は、飼い主とのコミュニケーション(鳥との会話)が必要となるかもしれません。しかし、臆病だと人を怖がることもあります。ヒナの時から人に馴れるように手乗りで育てると良いでしょう。

ブンチョウ

手乗りにするコツと方法はコチラ!

一般的に鳥は自ら羽づくろいをし、クチバシや爪を止まり木に擦りつけて摩耗します。しかし、嘴や爪が過長した時は、嘴や爪を切らないといけません。放鳥する場合は飼い主の目の届く範囲で行って下さい。放鳥は壁紙や柱、電気コードなどをかじることによる異物摂取や事故、ネコなどによる襲撃、重金属、観葉植物などをかじったことによる中毒を起こす可能性もあります。特に人に馴れたブンチョウは人の食べ物やお菓子を口にすることがありますので、鳥が食べないように必ず片して下さい。

遊び

ブンチョウは人と意思伝達ができるくらいに知能が高く、人とのコミュニケーションを好みます。手乗りにすると人に馴れて手のひらで休むようになり、撫でてほしいと要求してきます。

ブンチョウ

馴れたブンチョウは人にまとわりつくので、踏みつける事故が多いので注意して下さい。

ブンチョウ

玩具はインコのようにつついて遊ぶことはありませんが、ブランコや小屋などを気に入って遊びます。ストレスの予防になりますが、発情の誘因にもなるので、特にメスでは過剰な産卵や卵巣・卵管疾患に注意しなければなりません。

ブンチョウ

嘴切り

嘴のケラチンはアミノ酸から構成されており、栄養のアンバランス (栄養性嘴形成不全)、肝機能低下などにより変形や変性が起こります。嘴の成長が咬耗よりも早いと、過長することがあります。クチバシは固いものをかじって摩耗するのではなく、歯ぎしりのように上下を擦り合わせて咬耗して調節するため、基本的には切る必要はないはずです。

人と接触する上で、かみ癖があるブンチョウでは先端部分を切削することもあります。嘴には血管が走行しているため、切りすぎないように注意して下さい。基本的にはクチバシが変形したり、長くなったら動物病院できちんと診断してもらって処置をするべきでしょう。

翼の羽切り

部屋の中で放鳥する時に、ブンチョウが窓から逃げるのを防ぐために、翼の羽を切ることがあります (クリッピング: Cliping)。しかし、クリッピングについては賛否両論です。羽をクリッピングすることで飛べなくなります。しかし、飛ぶのは鳥の本能で、人の都合で羽を切るのはよくないと考える人も多いようです。運動不足になりがちといった弊害もあります。鳥の健康や安全のために、どうしても必要と判断される場合のみ、クリッピングをすることをお薦めします。クリッピングの方法は、風切り羽を雨覆 (あまおい) と同じ長さに切ります。切り方が中途半端だと、短い距離だけなら飛んでしまいます。 筆毛や血管が走行している幼若な羽を切ると出血します。しばらくすると羽は再び生え変わるので、クリッピングは繰り返す必要があります。

爪切り

爪が伸びすぎると、止まり木をつかみづらくなり、放鳥時には絨毯などに爪が引っかかり、折れて出血することもあります。また、飼い主が爪の伸びた鳥を手に乗せていると痛いと感じることがあります。

ブンチョウ

爪切りはとても難しいので、無理して飼い主が行わないで下さい。爪を切る時には、足首ではなく、1本ずつ指を持って切って下さい。しかし、爪の内部には血管が通っている部分があり、血管を切らないようにしましょう。

水浴び

ブンチョウは水浴びをする習性があるため、水浴び用の容器を用意しましょう。周囲が水浸しになるほと勢いよく水浴びをします。

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これがポイント!

  • 気が強い鳥
  • 馴れると人に意思表示をする
  • 爪は伸びていないか?
  • 水浴びが好き

掃除

鳥を触った後はよく手を洗い、そしてケージなどの掃除も衛生的にしっかりとして下さい。掃除の後にケージも殺菌するために日光浴や消毒をするように心がけましょう。

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参考文献

  • Cameron M.Cockatoos.CSIRO Publishing.Australia.2007
  • Gill FB.Ornithology 3rd Edition.WH.Freeman and Company.New York.2006
  • Harrison GJ,Harrison LR.Clinical Avian Medicine and Surgery: Including Aviculture.WB Saunders Company. Philadelphia.1986
  • 農業・食品産業技術総合研究機構編. 日本標準飼料成分表 2009年版.中央畜産会.東京.2010
  • Roudybush TE,Grau CR.Food and water interrelations and the protein requirement for growth of an altricial bird, the cockatiel (Nymphiccus hollandicus). J Nutr116(4):552-559.1986
  • Walsberg GE.Avian ecological energetics.In Avian Biology7.Farner DS,King JR,Parkes KC eds. Academic Press.New York:161-220.1983
  • 須藤浩.飼料学講義.養賢堂.東京.1981

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。