ジャンガリアンハムスターってどんな動物(知らないといけない生態と特徴)

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小さいけどわがまま

ゴールデンハムスターよりも一回り小さく、機敏な動きをする小型のハムスター(ドワーフハムスター)です。性格もややわがままな面があります。

 ジャンガリアンハムスター

分類・身体

分類

げっ歯目キヌゲネズミ亜科ヒメキヌゲネズミ属
学名Phodopus sungorus
英名:Striped hairy-footed hamster, Dzungarian hamster,Djungarian hamster, Zungarian hamster,Russian hamster,Winter white hamster
別名:ヒメキヌゲネズミ、ロシアンハムスター、ウインターホワイトハムスター
現在、ジャンガリアンハムスターとキャンベルハムスターの分類学的な論争が行われています。別種としての分類が疑問視され、同種として Phodopus sungorus に統一されたり、亜種としての分類も唱えられています〔Cantrell et al.1987〕。

分布

カザフスタン東部、シベリア南西部

ジャンガリアンハムスター分布地図

身体

頭胴長:オス7.0~12.0cm、メス6.0~11.0cm
尾長:0.7~1.0cm
体重:オス35~45g、メス30~40g
野生個体の体重は、年間を通して大きく変動し、冬は最も低くなります〔Bartness et al.1985〕
寿命:2~2.5歳

表:ジャンガリアンハムスターの年齢換算表

歴史

ジャンガリアンハムスターは、1773 年に動物学者でもあるPeter Simon Pallas (ピーター・サイモン・パラス)によって認識されました〔Sungorus 1773〕。学名のPhodopus sungorussungorus(スンガルス)は、中国のジュンガル盆地に由来しています〔Steinlechner 1998〕。近縁種であるキャンベルハムスターの亜種として定義されいましたが、現在は分類学的に別種であることが分かっています。1968年に4個体が西シベリアで捕獲され、ドイツの研究所に持ち込まれた記録があります。

キャンベルハムスターとの相違はコチラ!

特徴

模様

背中に1本の線が入り、四肢裏の被毛が長いことが特徴で、 Striped hairy-footed hamster(セスジケアシハムスター)という名前の由来になっています。

換毛

夏毛から冬毛に換毛する際に、被毛が密になり、毛色が白色に変色するため〔Ross 1998,Sandra 2005〕、 ウインターホワイトハムスター(Winter white hamster)とも呼ばれています。野生で毛色冬に毛色が変わるこの適応は、雪に覆われた草原で捕食者を回避するのに役立ちます〔The Dwarf Hamster 2003〕。日本の気候では冬毛にならない個体も多く、ペットではあまり見られません。また、冬毛は密に生えてきます〔Honey,Sandra 2005〕。冬毛の換毛は10~11月に始まり、12月に完了します。

ジャンガリアンハムスター

換毛は背頭側から始まり、体幹側面、脚、および腹側の順番で行われます〔Zdenek Veselovský 1964〕。一方、夏毛の換毛は1月または2月に始まり、3月または4月上旬に完了します〔Figala et al.1973〕。一方で夏になると、冬の白色に変色した毛色は、灰色から暗褐色に変化し、時には淡褐色に色合いが変化します。夏毛は長くなり、約1cmの長さになります。

ジャンガリアンハムスター

被毛の変色はプロラクチンが関与し〔Marilyn 1984〕、冬毛の換毛が開始するのに1日の日照時間が14時間未満と言われています〔Niklowitz et al.1994〕.

ハムスターの特徴の詳細な解説(総論)はコチラ!

性格

性格はマイペースで、気性が現れやすいです。扱い方を間違わなければ馴れますが、怒るとすぐにかんできます。簡単に言うとわがままですね。

ジャンガリアンハムスター

品種

ジャンガリアンハムスターは毛色や模様によって品種が分けられています。主な品種を紹介します。ジャンガリアンハムスターの目の色は、アルビノ以外で黒色をしています。

ノーマル

背中は灰褐色で、額から臀部にかけて明瞭な黒色の1本の線模様(ストライプ)が入っています。腹側は白色を帯びて、黒目であるのが特徴です。
ジャンガリアンハムスターノーマル ジャンガリアンハムスター

サファイア

ノーマルの灰褐色の毛色とストライプが薄くなった毛色です。青灰色を帯びた毛色はサファイアブルーとも呼ばれ、人気が高い品種です。
ジャンガリアンハムスターサファイア

パール

白色系の毛色で、黒目をしています。毛の根本より白色に変色したものですが、元々の毛色が毛先に残っていることもあります。この中でも全身が白色で背中のストライプが残るものをパール・ホワイト、純白でストライプを欠いたものをスノー・ホワイトと呼びます。なお、パールやスノーホワイトは劣性(潜性)致死遺伝子を持っています。そして、パールは遺伝的に斜頸旋回などの前庭症状がみられることがあります。

パール・ホワイト

プディング(イエロー)

薄茶色の毛色で、背中の線も茶色を帯びています。肥満遺伝子と糖尿病遺伝子を持っていますので〔Meier et al.1959〕、多くが肥満になりますが、糖尿病の発生は多くはないです。なお、プディングは劣性(潜性)致死遺伝子を持っています。

 ジャンガリアンハムスター

パイド

パイドは白色の斑模様が入ったもので、様々な毛色に見られます。

ブラック

全身が黒色ですが、キャンベルハムスターのブラックが間違えてジャンガリアンとして流通している可能性もあり、ジャンガリアンとキャンベルの交雑種ともいわれていますが、詳細は不明です。

これがポイント!

・正式和名はヒメキヌゲネズミ
・キャンベルハムスターと近縁で、交雑種ができる
・背中に細い1本の線が縦に入り、手足の裏の毛が長い
・性格はわがまま
・毛色や模様により多くの品種がいる

ほっこり漫画ですが、とてもハムスターの特徴を表しています

ハムスターの研究レポート1.白泉社文庫

参考文献

  • Bartness TJ,Wade GN.Photoperiodic control of seasonal body weight cycles in hamsters (Abstract).Neurosci Biobehav Rev.Winter9(4):599-612.1985
  • Figala und Mitarbeiter.Die Angaben beziehen sich auf unter natürlichen Bedingungen gehaltene Hamster.1973
  • Honey Sandra.Dwarf hamsters.Biology.Attitude.Breeding.2nd.Nature-and animal-Verlag.p9.56–58.2005
  • Marilyn D.Hormonal regulation of the annual pelage color cycle in the Djungarian hamster,Phodopus sungorus.I.Role of the gonads and the pituitary.The Journal of Experimental Zoology.Anthology The Journal of Experimental Zoology230(1):89–95.1984
  • Niklowitz P,Lerchi A,Nieschlag E.Photoperiodic responses in Djungarian Hamsters (Phodopus sungorus):Importance of Light History for Pineal and Serum Melatonin Profiles.Biology of Reproduction51:714-724.1994
  • Ross PD.Phodopus sungorus.MAMMALIAN SPECIES 595.the American Society of Mammalogists:1-9.1998
  • Sandra H.Dwarf hamsters.Biology.Attitude.Breeding.2nd.Nature-and animal-Verlag.p9:56–58.2005
  • Sungorus Pallas.Quoted in:. Ross 1998 (p. 1, synonymy of the species):p703.1773
  • Steinlechner 1998,DJUNGARIAN HAMSTER AND/OR SIBERIAN HAMSTER: WHO IS WHO?,European Pineal Society NEWS:p8.1998
  • Zdenek Veselovský.Contribution to knowledge of Dzungars-Hamsters,Phodopus sungorus(Pallas, 1773).Journal of Mammalogy:p305–311.Quoted in Ross 1998(p1-2).1964

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。