ゴールデンハムスター  心優しいハムスター!

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ゴールデンハムスターは金色

俗に言うハムスターはゴールデンハムスターを指し、実験動物ではシリアンハムスターと呼ばれています。両手に乗るくらいの中型のハムスターです。

ゴールデンハムスター

分類・身体

分類

げっ歯(ネズミ)目キヌゲネズミ亜科ゴールデンハムスター属
学名Mesocricetus auratus
英名:Golden hamster,Syrian hamster
別名:シリアンハムスター

分布

シリア、レバノン、イスラエル

ゴールデンハムスター分布地図

身体

頭胴長:16.0~18.5cm
尾長:2.10~2.85cm
体重:130~210g(一般的にオスよりもメスの方が大きくなります/日本でペットで飼育されている個体は150g前後が多いです)
寿命:2~3年

表:ゴールデンハムスターの年齢換算表

歴史

ゴールデンハムスターは比較的近年になってからしられました。初めて記載されたのは1797年で、シリアに住む 2 人のスコットランド人医師であるPatrick Russell(パトリック・ラッセル)とAlexander Russell (アレクサンダー・ラッセル/パトリック・ラッセルとは異母兄弟)によって執筆および編集された書物である The Natural History of Aleppo(アレポの自然史)の第2版で、動物種としては1839 年にGeorge Robert Waterhouse(ジョージ・ロバート・ウォーターハウス)が、ロンドン動物学会の会議でよって認識されました〔Murphy 1985〕。兄弟がその本のハムスターの説明を記載した理由は不明ですが、おそらくパトリックはアレクサンダーの未発表のメモから抜粋したか、あるいは第 2 版でパトリック自身が本に追加したと言われています。そして、1930年に医学研究のために動物学者であるIsrael Aharoni(イスラエル・アハロニ)によって捕獲された歴史が残っており、科学者たちはこれらのハムスターを自家繁殖させました。捕獲時は母親と 11頭の開眼していない赤子でありましたが、当初は飼育方法も知られておらず、木箱をかじって逃走されたり、共食いしたりして、最終的には3頭しか残らなかった残ったそうです。しかし、1 年以内に、これら 3頭匹のハムスターの兄弟が 150頭のに繁殖し、1930年代にその子孫を世界中のさまざまな研究所に送りました〔Murphy 1985〕。アメリカでは、1940年代後半までに、商業繁殖業者が実験室向けにハムスターを提供し始め、同時にペットとしてハムスターを普及させ始めました〔Murphy 1985〕。その後も、棲息地であるシリアでは、繁殖業者たちによって他のハムスターも捕獲されていたそうです。当時の野生のゴールデンハムスターは、人間に捕獲されて数日で人に馴れ、実験室の環境でも順応して成長したそうです〔Murphy 1985〕。イスラエル・アハロニ氏

性格

性格は温和で、人に馴れやすくて扱いやすい種類です。興奮させなければ、かむことはありません。

品種

ゴールデンハムスターは毛色と毛の長さ・毛質によって品種が分けられています。流通している多くが毛が短い短毛種ですが、長い毛を持った長毛種も人気があります。光沢のある毛や縮れた毛質を持った品種もおり、それぞれの毛色に毛の長さや毛質の組み合わせで、沢山の品種が作られています。

ゴールデンハムスター

ノーマル(ゴールデン)

野生色で、背中は茶色、お腹は白色を帯びています。両頬に走る黒色の線(チークフラッシュ:Cheek flash)が入り、その上下にある白色の三日月模様(クレセント:Crescent)が特徴です。黒目で、耳は灰色~黒色を帯びています。

ゴールデンハムスター
https://youtube.com/watch?v=cb29yMjXd_Y%3Frel%3D0%26start%3D3

アニメや漫画のキャラクタに使用されるのはこの品種です。

クリーム

クリームは1950年に作成され、全身がクリーム色~やや茶色を帯びたオレンジ色の一色で、チークフラッシュクレセントなどの模様はありません。黒目で、耳は灰色~黒色を帯びています。一般的に幼体期は体色が淡く、成長につれて濃くなっていく傾向があり、毛色の幅は多様です〔Logsdail et al.2003〕。毛色が金色で、顔立ちが熊に似ているために、キンクマハムスターと呼ばれています。ゴールデンハムスターの中でも特に大人しく、人気のある品種です。

ゴールデンハムスター
ゴールデンハムスター

 

シナモン

ノーマルを明るくした感じで、背中は明るいオレンジ色~赤茶色、お腹は白色を帯びています。チークフラッシュは灰色~アイボリー色です。赤目やブドウ目をしており、耳の色も薄くなっています。成長につれて、体色が濃くなる傾向にあります。シナモンは1958年に発生した突然変異で発見され〔Logsdail et al.2003〕、アメリカでは琥珀と呼ばれていました〔Whitneyet al.1964〕。

ゴールデンハムスター

アンブロウス

アンブロウスは遺伝子的に本来の毛色を暗くする働きがあり、全てのカラーで発現します。ノーマルのアンブロウスでは、写真のように焦げ茶色や黒褐色が多く入った毛色になります。

ゴールデンハムスター

ブラック

ブラックは1985年に作成され、全身が青色や茶色を帯びた黒色をしています。多くh手足や喉元に白色が入り、黒目をしています〔Logsdail et al.2003〕。

ゴールデンハムスター
ゴールデンハムスター

 

グレー

グレーには、シルバーグレー、ライトグレー、ダークグレーの3種類が存在し、シルバーと呼ばれることもあります。シルバーグレーとライトグレー、ダークグレーは目の周りに黒いリングがあり、チークフラッシュも黒褐色をしています。ライトグレーでは、背中は明灰色~薄茶色を帯びた灰色(クリーム色)で、お腹は白色を帯びています。黒目で、耳は暗灰色をしています。なお、ダークグレーは劣性(潜性)致死遺伝子を持っています。

ゴールデンハムスター
ゴールデンハムスター

 

ダークグレーは1964年に作成され、下の写真で濃い灰色の個体です。

Picture

Dark Grey – HAMSTER GENETICS (weebly.com)

ダークグレーは、キンクドテイル(kinked tail :ねじれた尻尾)の遺伝的素因も持っていますので、一部の個体に先天的の尾の変形(尾が曲がっている)が見られます。 テールキンク同士の交配を繰り返すと、脊椎の変形を引き起こす可能性があります〔Logsdail et al.2003〕。

ホワイト

全身白色で、1952年に突然変異で発現しました〔Logsdail et al.2003。時に所々薄茶色の色が入っていおり、黒目をしています。

ゴールデンハムスター
ゴールデンハムスター

 

アルビノ

アルビノは黒色色素が抜けているため、全身の毛色が白色になり、赤目をしています。しかし、ゴールデンハムスターでは完全なアルビノは存在せず、一部に色がついたり、薄い色が残っています。耳が灰色のダークイアード・ホワイト(Dark eared white)、耳がピンク色のフレッシュイアード・ホワイト(Flesh eard white)などが流通しています。

ゴールデンハムスター

ダークイアード・ホワイト

ドミナント・スポット

背中全体に色が入り、スポット的に白色の斑が入り、お腹は白色です。頭から目の上にかけて、色が入っているタイプ(鉢割れ)も多いです。ドミナントスポットは1964年に突然変異から出現しました〔Logsdail et al.2002〕。

ハムスター

ドミノ

白色で体や顔に他の色がまだら模様として入り、お腹は白色です。まだら模様は茶褐色系やベージュ系などの色で、大きさも様々です。白色に黒色の斑があるものをダルメシアンと呼んで区別することもあります。頭から目の上にかけて、色が入っているタイプも多く見られ、鉢割れと呼ばれています。なおドミノは劣性(潜性)致死遺伝子を持っています。

ゴールデンハムスター
ゴールデンハムスター

 

ダルメシアン

犬のダルメシアンのような模様をしており、体色は白色で、規則的に黒色の細かい斑模様が入りますが、お腹は白色です。なお、ダルメシアンは劣性致死遺伝子を持っています。

ゴールデンハムスターダルメシアン
ゴールデンハムスター

 

ローン

ローンとは葦毛(あしげ)という意味で、体色は元の毛色に白色の葦毛が入ります。葦毛の入る程度には個体差があり、白色に近いものから、元の毛色がかなり残っているものなど様々です。

バンデット

一般的に流通している模様で、背中に白色の帯状の模様が入り、腹巻をしているように見えます。1957年に最初に報告され〔Logsdail et al.2002〕、腹巻模様の形状や大きさは様々です。特に茶褐色に白色の腹巻模様が入ったタイプが大量に流通しているため、これをノーマルと呼ぶこともあります。

ゴールデンハムスター
ゴールデンハムスター
ゴールデンハムスター
ゴールデンハムスター

    

ト-ティシェル

ト-ティシェルは1962年イギリスで初めて発見され〔Logsdail et al.2002〕、他の色に黄色がまじった毛色のパターンです。イエロー遺伝子が性染色体に乗っているため、メスでか発現しません。ノーマルで起こると茶色の被毛の中に黄色の部分があり、この2色はまだらになる。バンデットやドミナント・スポットなどの白斑を持つものでみ合わさると、3色の三毛ハムになり、トリコロールとも呼ばれます。

ゴールデンハムスター

トリコロール

ロングヘア―(長毛種)

長毛の品種で、1972年に作成されました〔Logsdail et al.2003〕。被毛の長さには個体差と性差があり、全体的に長くなるだけでなく、部分的に伸びることもあります。一般的にオスの方がメスよりも長くなり、10 cmにもなり、メスはその中途半端な長さゆえに、日本では呼称として中毛と呼ばれることがあります。長毛種は、その外貌からテディ―ベアーハムスター(Teddy bear hamster)と呼ばれます。また、長毛種は毛繕いした毛を飲みこんで消化管閉塞を起こす確率が、短毛種よりも高くなります。

ゴールデンハムスター
ゴールデンハムスター

 

サテン

光沢のある毛で、1968年に作成されました〔Logsdail et al.2003〕。毛色がより鮮やかに見え、各品種にサテンがいます。なお、サテンは劣性(潜性)致死遺伝子を持っています。ブルサテン(サテン遺伝子のホモ)は、まれに毛が薄い、斑点のような無毛域が見られます〔Robinzon et al.1972〕。

ゴールデンハムスターサテン

 

レックス

毛が縮れていたり、巻いたりしてウェーブがかかっている品種です。1970年に作成され〔Logsdail et al.2003〕、各品種および短毛と長毛にレックスがいます〔Whitney et al.1973〕。ヒゲもカールしていることもあります。なお、サテンは劣性(潜性)致死遺伝子を持っています。

ゴールデンハムスター
ゴールデンハムスター

 

ヘアレス

無毛のハムスターで、1997年以前に突然経変異で出現したと言われていすが、詳細は不明です。皮膚が他のハムスターと比べて肥厚しており、ぷにょぷにょした感覚です。へアレス同士の交配ではヘアレスは出生しませんので、ヘアレスの遺伝子を持ったメスを使用します。また、ヘアレスのメスは母乳を分泌できない欠点があり、繁殖することは難しいと言われています。へアイレスは腫瘍の発生が多いこと、皮膚の乾燥化が起こりやすいことなどの欠点も備えています。ヘアレスはヒゲも欠くあるいは貧弱なために、生活する上での感覚が鈍いという欠点もあります〔Nixon et al.2003〕。

これがポイント!

・実験動物ではシリアンハムスターと呼ばれている
・性格は温和で優しい ・短毛種と長毛種がいる
・毛色や模様により多くの品種がいる

ほっこり漫画ですが、とてもハムスターの特徴を表しています

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参考文献
■Nixon C.Hereditary hairlessness in the Syrian golden hamster.Journal of Heredity63(4).p215-217.1972
■Logsdail C,Logsdail P.Hovers K.Hamsterlopaedia.Surrey:Ringpress.2003
■Robinzon R.Satin—A new coat mutant in the Syrian hamster.Journal of Heredity,3(1).p52-52. 1972
■Murphy MR.History of the Capture and Domestication of the Syrian Golden Hamster (Mesocricetus auratus Waterhouse). In The Hamster: reproduction and behavior.Siegel HI.ed.Plenum Press.New York.1985
■Whitney R,Nixon C.Rex coat:A new mutation in the Syrian hamster.Journal of Heredity64(4).p239-239.1973
■Whitney R,Burns G,Nixon CW.Rust,a new mutation in Syrin Hamsters: The American Naturalist98(889).1964

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。