ハムスターってどんな動物〔総論〕

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ハムスターは地下で暮らすネズミの仲間

ハムスターには数種類が存在し、その一部がペットとして飼育されています。大人から子供までにも人気のかわいい動物です。


ハムスター ハムスター

分類・種類

分類

ネズミ目(げっ歯目)キヌゲネズミ亜科

種類

ハムスターとはキヌゲネズミ亜科に属するネズミで24種類が知られています。現在、本邦においてペットで飼育されてる種類は、中型のゴールデンハムスター、小型のジャンガリアンハムスターキャンベルハムスターロボロフスキーハムスターが主で、まれにチャイニーズハムスターが見られます。過去にはクロハラハムスターも流通していました。なお、ドワーフハムスターと言う名称は、ジャンガリアンハムスター、キャンベルハムスター、ロボロフスキーハムスターなどの小型の種類の総称です。

ネズミ目(げっ歯目)キヌゲネズミ亜科ゴールデンハムスター属ゴールデンハムスター
ヒメキヌゲネズミ属ジャンガリアンハムスター
キャンベルハムスター
ロボロフスキーハムスター
バラブキヌゲネズミ属チャイニーズハムスター(バラブキネゲネズミ)※
クロハラハムスター属クロハラハムスター
表:ハムスターの分類

※最近の分類では、チャイニーズハムスターはバラブキネゲネズミ(Cricetulus barabensis)と同一されていますが、ペットではチャイニーズハムスター(Cricetulus griseus)として流通しています

分布

ヨーロッパからアジアの乾燥地帯や半乾燥地帯

生態

環境:半乾燥地帯~草原の寒暖差が厳しい地域

行動
・過酷な環境のために、温度が一定に保たれる地下に巣を作って生活をしています。寒冷期は巣に籠り、冬眠する種類もいます。
・夜行性で、昼は巣の中で休み、夕方頃から活動を始めます。エサを集めて地下巣に貯蔵し、一定の食物源を確保します(食料を蓄える貯蔵行動)〔Carleton et al.1984)。
食性:草食に近い雑食性で、植物の葉、茎、根、実や種子を食べます〔遠藤 2000〕。時に昆虫などを食べますが、これは乾燥地帯で生活していたために何でも食べるようになったと言われています。
寿命:1.5~3.5年

分類・生態のポイント!

・げっ歯の仲間で絹のような毛をしているキヌゲネズミ
・ペットではゴールデンハムスター、ジャンガリアンハムスター、キャンベルハムスター、ロボロフスキーハムスター、チャイニーズハムスターが飼育され、過去にはクロハラハムスターも流通していた
・乾燥した地域の巣穴を掘って生活
・夜行性
・草食に近い雑食

性格と習性

威嚇反応

一般的にハムスターの性格は穏やかで、通常は鳴くことはありません。興奮や闘争の際には、「キーキー」、「チッチッ」 と声を出します。さらに反抗すると仰向けの姿勢になって、口をあけて「ギーギー」」と甲高い声をあげます(威嚇反応) 〔Bauck et al.1997〕。メスはオスよりも気が強く、身体も大きくなり、 攻撃的な性格をしています。

ハムスター喧嘩

夜行性

夜行性で、捕食者を避けて明け方と夕方に餌を探すために巣穴から出てきて活動を開始します。昼間は14時間位寝ていて、時々トイレに起きてくる程度です。触っても起きないくらい熟睡するハムスターもいます。

運動量

運動量は豊富で、1日に7〜13時間も歩行し、移動距離は11.5〜21.1㎞にも及びます〔奥木1972〕。飼育下のゴールデンハムスターでも回し車を約10Kmも回した記録があります〔Harkness et al.1995〕。

ゴールデンハムスター

営巣行動

床敷に潜ったり、床敷を使って巧みに巣を作る習性があります(営巣行動)。巣穴の代わりになる小屋の中にも好んで潜りこみます。

ハムスター

頬袋/貯蔵行動

餌は頬袋に入れて巣に持ち帰り、貯える習性があります(貯蔵行動)。ハムスターは餌を巣穴に貯えることで安心するようです。しかし、巣に貯わえられた餌は全てを食べることはないので、肥満になることはありません。巣や小屋の中の餌が腐っていないか、定期的に確認してあげましょう。

大きな頬袋を持つため、物を蓄えるという意味のドイツ語のhamstern(ハムステルン)から、ハムスターと命名されたと言われています。古高ドイツ語(地方のドイツ語)で、hamustraという単語があり(元々コクゾウムシという虫の意味)、それがいつのまにかハムスター(クロハラハムスター)という意味で使われたという節もあります。ドイツ語の「買いだめする、溜めこむ」という動詞ハムスターンは、ハムスター(hamster)の餌をため込む習性からきています。

毛づくろい

綺麗好きな性格で、自ら積極的に毛づくろいをします。前肢や口を使って、体全体の毛を綺麗にします。

冬眠

冬は活動を休止し、ゴールデンハムスターでは約5(±2)℃の低温環境になると、巣の中で冬眠します〔米田 1991〕。低温以外に照明不足、ストレスも冬眠の引き金になります〔Hoffman et al.1965〕。ジャンガリアンハムスターでは疑似冬眠という1日以内の休眠(Daily torpor:デイリートーパー)を起こします〔Ouarour et al. 1991〕。

ハムスターの冬眠の詳細な解説はコチラ!

超音波

ほとんど鳴き声をあげません。個体同士の意思疎通のコミュニケーションは超音波と言われています。視力はあまりよくありませんが、聴覚と嗅覚が優れており、臭腺によるマーキングと仲間と超音波でコミュニケーションをとっています。

ハムスター

小型げっ歯類の超音波の詳細な解説はコチラ!

食糞

ハムスターもウサギほどではありませんが、食糞をします。

食糞の詳しい解説はコチラ!

特徴

寸胴

太い首、寸胴な体、短い尾をしています。なお、ドワーフハムスターの尾はゴールデンハムスターと比較してやや長く、特にチャイニーズハムスターはハムスターの中で最も長く、バランス感覚がよく、物をつかむようなこともできます。

ハムスター

常生歯

歯は切歯と臼歯があり、全部で16本です。特に切歯は大きくて鋭く、硬いものもかじります。切歯のみが常生歯で、生涯にわたり伸び続けますが、臼歯は伸びません。切歯の表面は黄褐色をしていますが、これは虫歯ではなく、体内のミネラルが沈着しているからです。

ハムスターの歯

げっ歯類の常生歯の詳細な解説はコチラ!

頬袋

口腔内に左右に頬袋を持っています。エサをみつけると、頬袋に貯め込んでおく習性があり、顔が大きくなったように見えます。

頬袋の中で餌が腐敗したり、炎症などが起こると、頬袋脱になります。

ハムスター頬袋脱

臭腺

縄張りを示すマーキングやオスがメスに対する求愛の際に、匂いを発する臭腺があります。臭腺は男性ホルモンが支配しているために、オスのほうが発達しています。ゴールデンハムスターの臭腺は、両側の腰に直径3mm位の暗褐色~黒色の班のとして確認できます(脇腹腺)。

分泌物により臭腺の周りの毛が濡れていることがあります〔Stoddart 1976〕。

ハムスター臭腺

ジャンガリアンハムスターやキャンベルハムスター、ロボロフスキーハムスターでは、腹の真ん中にくぼんだ楕円あるいは丸い形状の臭腺があり、茶褐色の分泌物が蓄積しています(中腹腺)〔Vorontsov et al.1959〕。さらにジャンガリアンハムスターとキャンベルハムスターでは左右の口角に小さい白色の臭腺も見られ〔Sokolov et al.1994〕、この臭腺は威嚇反応の際に、人が不快と感じる臭いを放ちます。

前肢の第1指は退化しているため、4本ですが、人のように餌を持つことかできます。

ハムスター前足

後肢の趾は5本あり、前肢の趾よりやや大きいです。

ハムスター後足

胃が2つ

ハムスターの胃はラット、マウス、モルモットなどと異なり、草食のハタネズミのように、筋性の括約筋のひだによって前胃と腺胃(後胃)の2つからなります〔Reznik et al.1978〕。前胃の構造と機能は草食動物の発酵槽であるルーメンに似ており〔Borer 1985〕、常在している微生物が多く〔Kunstyr 1974〕、前胃が食事の尿素を使って発行に役立てます〔Sakaguchi et al.1981〕。これらの特徴から前胃はウサギの盲腸と同じような機能を持つ発酵槽の役割を持つとされています。またハムスターの盲腸もJ字型の構造で、横方向に多数の嚢があり、胃よりも容積が大きいので〔Magalhaes 1968〕、ここでも発酵をしています。前胃と盲腸の2か所で発酵槽を持つことから、マウスやラットなどのげっ歯類と比べて、食性はやや草食に傾いた雑食動物と言えるでしょう。胃の形態から、基本的に吐くことはできません〔Longley 2008〕。

特徴のポイント!

・巣穴で生活/潜るのが好き
・頬袋に餌を入れて運搬して巣穴に貯める(貯蔵行動)
・冬眠する
・メスの方が性格が強い
・四肢と尾が短く、寸胴な体形
・臭腺の位置
・ハムスターは胃が2つあり、吐けない
・超音波でコミュニケーションをとる

ほっこり漫画ですが、とてもハムスターの特徴を表しています

ハムスターの研究レポート1.白泉社文庫

参考文献

  • Balk MW,Slater GM.Care and management,In Laboratory Hamsters,Van Hoosier,Jr.GL McPherson,CW eds.Academic Press.Orlando.Florida:p63-64.1987
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  • 遠藤秀紀.ゴールデンハムスター.動物世界遺産.レッド・データ・アニマルズ1 .ユーラシア、北アメリカ.小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社:p172.2000
  • 奥木実.ハムスター.実験動物各論.田嶋嘉雄編.朝倉書店.東京.1972
  • 米田嘉重郎.シリアンハムスター.げっ歯目.各論.実験動物学.田嶋嘉雄監.朝倉書店.東京.1991

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。